2010年に結成され、これまでに数枚のシングルやミニ・アルバムを発表するも、いまだその正体がヴェールに包まれている関西発の女性ユニット、印象派。もともと別々に活動していたmiumicaが共通のディレクターを通じて知り合い、「micaちゃんの声で、生楽器で、サイケやトランスの要素があることをやりたい」(miu)と思ったのが始まりとのことだが、基本となる音楽性を形成するにあたって大きかったのは、K-Popからの影響だという。

 「KARA少女時代がTVを賑やかしはじめた頃、ボーッと観ていて彼女たちの音楽にある法則に気付きました。メインとなるどキャッチーなサビのメロディー以外に、掛け声のような全編を統率するテーマがあって、最後にはメイン・ヴォーカルが歌い上げるというものなんですが、当初からいままでの印象派のコンセプトとして、似てないようだけど、実は構造はすべて同じというのがあります」(miu)。

印象派 AQ SPACE SHOWER(2015)

 3枚目のミニ・アルバムは、〈永久〉と〈A級〉のダブル・ミーニングを持つ『AQ』。〈(運動が勃興した19世紀後半)当時の絵画の基準から逸脱した姿勢がロック的であり、自分たちの立ち位置を表すのにもっとも適したネーミング〉だったという〈印象派〉を名乗る2人らしい、野心に溢れた作品だ。

 「いまってどの部分を聴いても同じ、というような音楽が流行ってるじゃないですか。ゆえに、今回はどの曲を聴いても〈同じグループの音楽?〉と言われるような違和感を意識しました。〈トータリティー〉と〈テイストの近い楽曲が並んでいること〉を一緒くたに考えてるような最近のミュージック・シーンに、いろんなヴァリエーションでもトータリティーのあるものを届けたいという……一石を投じるというんでしょうか。そういったことを強く意識して制作しました」(miu)。

 これまでの作品にあったクラブ・ミュージックのテイストも残しつつ、本作ではよりバンド感が上昇。“Miss Flashback”から、そのままインストに雪崩込む“MFB A-gain”をはじめ、“綺麗”や“QとA”にも長尺のアウトロが添えられている。

 「バンド・メンバーは、私たちと関わる前からずっと、いろんな形でバンドのように活動していました。その人たちの演奏が円熟してきた、と言えるかもしれないのと、私がレッド・ツェッペリンの77年あたりの演奏を好んでいるのが彼らに伝わったからかもしれません。あとは大先輩のBuffalo DaughterROVOなんかの影響も強いと思います」(miu)。

 「打ち込みの音楽も格好良いけど、特にライヴでは一人一人がその瞬間の一音一音に感情を練り込んで、それが曲になって吐き出される感覚がたまらないし、自分が聴く側の時でも、生音に勝る感動はないです」(mica)。

 美しさを追い求める女性の願望を刹那的に綴った“綺麗”や、〈カプサイシンと核廃止の違いは曖昧で〉〈豆腐店と峠越えのようにただ明快で〉といったラインがユニークな“AとQ”など、ナンセンスながらも時々ハッとさせられるmiuの歌詞も彼女たちの大きな魅力だ。

 「普段使う言葉とあまり使わないだろう言葉が上手くミルフィーユになるように考えています。難しくなりすぎず、親しみやすくもなりすぎず、というあたりを狙うように心掛けていますね。普段日常で気になったワードをメモしたり、あと日経新聞を毎日読んでいて、興味を持った言葉を調べたりしています」(miu)。

 印象派というユニットの正体がいまだヴェールに包まれていることの理由として、普段彼女たちがOLをしているということも大きい。「(OLとの両立は)正直難しさのほうが多い」と口を揃えるが、「印象派の画家たちは後世になって認められましたが、私たちは生きているうちの、できればなるべく早く認められたいというちゃっかり精神が強いです」(miu)とも話しているように、2人が世間を驚かせる日が来るのもそう遠くはないのかもしれない。

 

印象派
それぞれがOLとしての顔も持つ、mica(ヴォーカル/キーボード)とmiu(ギター/ヴォーカル)から成る大阪は北区発のデュオ。 2010年に結成。2011年にタワーレコードの関西5店舗限定シングル『HIGH VISION/ENDLESS SWIMMER』をリリースし、翌2012年には初の全国流通盤となる“SWAP”を発表。2013年にはファースト・ミニ・アルバム 『Nietzsche』とシングル“MABATAKIしないDOLLのような私”を立て続けると、2014年は2枚目のミニ・アルバム 『(not)NUCLEAR LOVE(or affection)』を上梓。これまでは本数が絞られていたライヴ活動も徐々に本格化するなか、ニュー・ミニ・アルバム『AQ』をリリース。