(左から)星野瞳々、小嶋りん、浅水るり、一色萌、真城奈央子

XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ エクストリーム)が2作目のアルバム『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』を2021年5月12日にリリースした。

様々なカラーを持ったグループがひしめき合う昨今のアイドル界にあって、〈プログレ・アイドル〉という一際ユニークなコンセプトを掲げ、独自の道を邁進しているXOXO EXTREME。デビュー・アルバム『The Both Sides Of The Bloom』(2019年)のリリース以降、リーダーを務めていた楠芽瑠の卒業や新メンバーの加入など紆余曲折を経て、5人体制で完成させたニュー・アルバム『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』は、プログレ・マナーの先鋭的なサウンドとシアトリカルな表現が見事に溶け合った力作である。

アイドルという枠組のなかで、その可能性を大きく拡張するような作品を完成させた今、彼女たちは何を思うのか。XOXO EXTREMEのメンバー5人とプロデューサーの大嶋尚之に、ライターの南波一海が話を訊いた。 *Mikiki編集部

XOXO EXTREME 『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』 Twelve-Notes(2021)

 

プログレの濃さを保ってやったほうがぶっ刺さると思うんです

――いきなり確認からで恐縮なのですが、僕、XOXO EXTREME(以下キスエク)の研修生制度をあまり把握できていなくて。やっていることは正規のメンバーとほぼ同じですよね。

真城奈央子「私もよくわかってないかも」

一色萌「私がシュガハグ(キスエクの前身グループ・Sugary Hug)の活動中にオーディションに合格したときは、研修生制度はまだなかったんです」

大嶋尚之(プロデューサー)「研修生制度はキスエクが始まってからできたので」

――お試し期間みたいなことなんですよね? 結果的にはその期間に辞めた人はいなくて、全員昇格していて。

大嶋「ただ、それ以前に辞める人はいるんですよ。研修生の前にレッスンだけする候補生というのがいて」

――それは知らなかったです。

一色「オーディションの面接を通って、じゃあレッスンに合流して色々見ていきましょうという段階があるんです。それを候補生と呼んでいて。ダンスと歌を覚えてもらって、これ以上はステージに出てみないとわからないなという段階まで来たら、研修生としてステージ・デビューしてもらう。そこから先はステージ上での様子を見て、正規でも遜色ないねとなったときに昇格するという感じなんです」

――研修生としてステージに立っている時点で絞られているわけですね。そして現在の研修生の星野さんもそう遠くない日に。

星野瞳々「いつかは(正規メンバーに)なりたいです」

大嶋「色んな信頼度が上がって、もう大丈夫な感じになったら」

――色んな信頼度(笑)。

一色「育成ゲームみたい(笑)。奈央子ちゃんは1か月で昇格なので信頼度が高かったということなんですね。研修生の制度ができたのは、大嶋さんと芽瑠さん(前リーダーの楠芽瑠)の慎重さの結果みたいなところがあるんだと思います」

――なるほど。星野さんはアルバムのレコーディングに参加してますよね。

一色「してる曲としてない曲があって」

大嶋「半分以上参加してます」

――となるとほぼ正規メンバーですよね(笑)。現在の5人体制になってからは半年ほど経っていますが、ざっくり、調子はどうですか?

小嶋りん「今まで5人体制というのがあまりなくて」

一色「るりちゃん(浅水るり)が研修生だったときに数曲だけ5人でやることがあったんですけど、その期間はかなり短くて、1か月くらいかな? だから、今回がほぼ初めてという感じなんです。なので探り探りにはなったんですけど、フォーメーションの幅も増えて、新しい表現の仕方が増えている感じがします」

大嶋「もともと、ずっと5人にしたかったんです」

――メンバーとしては、いつか増員の可能性があると考えていました?

一色「4人に当てはめて振り付けを作ってもらっちゃってたり、歌詞も当て書きで、4人が前提の曲もあったので、増えそうな気配を感じつつも4人で安定していくのかなと思いながらやってました」

――そんななか、遂に5人目のメンバーとして星野さんが加入してきたということなんですね。星野さんはどうしてグループに入りたいと思ったのでしょうか。

星野「小さい頃からアイドルとかキラキラしたものに憧れていたんです。中学3年生の頃、私は得意なことがなにもないので見つけたいなと思っていて、アイドルをやりたいなと考えたんです。それでオーディションをめっちゃ探してたらキスエクを見つけて。“鬱。”とか書いてあるし、なんだこのグループって気になって、受けることにしました」

前身グループ・xoxo(Kiss&Hug)の2015年のデビュー・シングル“鬱。”のライブ映像
 

――小さい頃に憧れたアイドルはきっとテレビで見たりするグループですよね。そういうアイドルは選択肢になかった?

星野「たしかに王道のかわいいアイドルもいいなって思うんですけど、キスエクは今まで聴いたことない曲ばかりやっていたので、音楽に惹かれたんです。私はこういう個性的でかっこいいジャンルのなかでかわいいポジションを取りたいなと思いました」

――みなさんは星野さんの加入をどう見ていますか。

一色「なんというか、ありがたいです(笑)。キスエクは身長が低いとよく言われていたので高身長の子が入るとバランスもいいし、高校生でフレッシュな感じも久しぶりだったので、予想がつかなくて面白いなと思いました」

真城「瞳々ちゃんは華があるじゃないですか。パッと目を引く存在で。私も入る前は、キスエクはゴリゴリに音楽をやっているというイメージがあって、取っ付きづらいと感じるアイドル・ファンのかたもいらっしゃると思ってたんですけど、瞳々ちゃんみたいな王道アイドルでもいけそうな華やかな存在がいることによって、それまで敬遠していたかたにも興味を持ってもらえるきっかけになるんじゃないかなと思ってます」

――キスエクを取っ付きにくいと思っている人って実際のところいるんでしょうかね。

真城「ちょっと感じません?」

小嶋「いると思いますよ(笑)。Twitterとかでも書かれるよね。〈プログレって言ってるから敬遠してた〉みたいに」

一色「キスエクのスタート当初、〈プログレ・アイドルです〉って言いながらビラ配りをしていたときに、〈プログレ? どうしてそんなところに手を出した? 大丈夫?〉って心配されたんですよ。私はプログレのことを知らない状態で入ったので、〈大丈夫?〉って心配されるジャンルってなんなんだと思って(笑)。だから最初は不安でした」

――長く続いているからもう不自然にも思わなくなったけど、たしかに冷静に考えたらぎょっとする人もいるのかもしれないですね。

一色「プログレをアイドルのフォーマットでやってるじゃないですか。プログレを薄めてアイドル寄りにするのか、プログレの濃さを保ったままアイドルをやるのかと考えたときに、パンチを効かせたままやったほうが刺さる人にはぶっ刺さると思うんです」

――そうだと思います。

一色「その方向で行く場合、MIXを打つとか、アイドル現場らしい楽しみかたをしたい人には〈ここは違う〉となってしまうことが多いのかな、とも感じていて。キスエクの最初のオリジナル曲は“悪魔の子守歌”なんですけど、長いし、サビはどこだろうという感じで掴みどころがなくて、謎のまま終わってしまうじゃないですか。最初の頃は当の私たちもどう表現したらわからないので、やってるほうも見てるほうも半信半疑みたいな状態だったんです(笑)。そうなると、曲の途中で人がだんだん減っていくんですね。

そういう悲しい経験もしてきたんですけど、相手に合わせるんじゃなくて、とにかく見てもらって慣れてもらうという方法を採っていきました。芽瑠さんみたいなかわいい存在がかわいく表現すると、どんなプログレ曲でもアイドル・ソングになるんだなというのを間近で見て感じていたのも大きかったのかもしれないです」

“悪魔の子守歌”のライブ映像

 

芽瑠さんのパートをモノマネで歌ってもしょうがない

――たしかに芽瑠さんが中和していた部分もありましたよね。芽瑠さん卒業以降のグループはどうでしたか? それこそアイドル然とした存在が抜けたことでカラーは間違いなく変わりますよね。

一色「もう悩みだらけで」

小嶋「それまではめるたん(楠芽瑠)がまとめてくださっていたし、MCとかも任せきりだった部分が多かったので。曲が終わってMCで喋り出す人がいなくなったので、萌氏が一番大変だったと思います」

――MCも担っていたし、声色も1人違いましたし。

一色「そのへんのことも残った3人で話し合って。芽瑠さんのパートをモノマネで歌ってもしょうがないじゃないですか。3人はたまたまロック寄りのかっこいい表現が好きだったので、そこを意識してやってみる?みたいな話をしました」

浅水るり「3人になったとき、私は先輩2人に頼る形になってしまっていたとは思うんですけど、かっこいい方向で行こうという話になって、そうなってからは〈るりちゃんらしさが出てきたね〉と言われることも増えていきました。それまでよりもやりがいを感じたり、楽しいなと思うことが増えましたね」

――浅水さんのあとに真城さんと星野さんが入ってきたので、もうすっかり先輩の立場ですよね。

小嶋「先輩感出てきたと思います」

浅水「本当に? でも、初めてできた後輩が奈央子ちゃんだったから、後輩感のなさというか……(笑)」

――できる人だったから。

浅水「はい。だから先輩になったという実感が何もなくて。でも、瞳々ちゃんが入ってきて、年齢的にも差があるし、ようやく後輩らしい後輩ができた気がしてます(笑)。もしかしたらようやく自分が先輩だという自覚が出てきたのかもしれないですけど、まだまだだなと思ってます」