(左から)星野瞳々、小嶋りん、浅水るり、一色萌、真城奈央子

XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ エクストリーム)が2作目のアルバム『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』を2021年5月12日にリリースした。

様々なカラーを持ったグループがひしめき合う昨今のアイドル界にあって、〈プログレ・アイドル〉という一際ユニークなコンセプトを掲げ、独自の道を邁進しているXOXO EXTREME。デビュー・アルバム『The Both Sides Of The Bloom』(2019年)のリリース以降、リーダーを務めていた楠芽瑠の卒業や新メンバーの加入など紆余曲折を経て、5人体制で完成させたニュー・アルバム『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』は、プログレ・マナーの先鋭的なサウンドとシアトリカルな表現が見事に溶け合った力作である。

アイドルという枠組のなかで、その可能性を大きく拡張するような作品を完成させた今、彼女たちは何を思うのか。XOXO EXTREMEのメンバー5人とプロデューサーの大嶋尚之に、ライターの南波一海が話を訊いた。 *Mikiki編集部

XOXO EXTREME 『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』 Twelve-Notes(2021)

 

プログレの濃さを保ってやったほうがぶっ刺さると思うんです

――いきなり確認からで恐縮なのですが、僕、XOXO EXTREME(以下キスエク)の研修生制度をあまり把握できていなくて。やっていることは正規のメンバーとほぼ同じですよね。

真城奈央子「私もよくわかってないかも」

一色萌「私がシュガハグ(キスエクの前身グループ・Sugary Hug)の活動中にオーディションに合格したときは、研修生制度はまだなかったんです」

大嶋尚之(プロデューサー)「研修生制度はキスエクが始まってからできたので」

――お試し期間みたいなことなんですよね? 結果的にはその期間に辞めた人はいなくて、全員昇格していて。

大嶋「ただ、それ以前に辞める人はいるんですよ。研修生の前にレッスンだけする候補生というのがいて」

――それは知らなかったです。

一色「オーディションの面接を通って、じゃあレッスンに合流して色々見ていきましょうという段階があるんです。それを候補生と呼んでいて。ダンスと歌を覚えてもらって、これ以上はステージに出てみないとわからないなという段階まで来たら、研修生としてステージ・デビューしてもらう。そこから先はステージ上での様子を見て、正規でも遜色ないねとなったときに昇格するという感じなんです」

――研修生としてステージに立っている時点で絞られているわけですね。そして現在の研修生の星野さんもそう遠くない日に。

星野瞳々「いつかは(正規メンバーに)なりたいです」

大嶋「色んな信頼度が上がって、もう大丈夫な感じになったら」

――色んな信頼度(笑)。

一色「育成ゲームみたい(笑)。奈央子ちゃんは1か月で昇格なので信頼度が高かったということなんですね。研修生の制度ができたのは、大嶋さんと芽瑠さん(前リーダーの楠芽瑠)の慎重さの結果みたいなところがあるんだと思います」

――なるほど。星野さんはアルバムのレコーディングに参加してますよね。

一色「してる曲としてない曲があって」

大嶋「半分以上参加してます」

――となるとほぼ正規メンバーですよね(笑)。現在の5人体制になってからは半年ほど経っていますが、ざっくり、調子はどうですか?

小嶋りん「今まで5人体制というのがあまりなくて」

一色「るりちゃん(浅水るり)が研修生だったときに数曲だけ5人でやることがあったんですけど、その期間はかなり短くて、1か月くらいかな? だから、今回がほぼ初めてという感じなんです。なので探り探りにはなったんですけど、フォーメーションの幅も増えて、新しい表現の仕方が増えている感じがします」

大嶋「もともと、ずっと5人にしたかったんです」

――メンバーとしては、いつか増員の可能性があると考えていました?

一色「4人に当てはめて振り付けを作ってもらっちゃってたり、歌詞も当て書きで、4人が前提の曲もあったので、増えそうな気配を感じつつも4人で安定していくのかなと思いながらやってました」

――そんななか、遂に5人目のメンバーとして星野さんが加入してきたということなんですね。星野さんはどうしてグループに入りたいと思ったのでしょうか。

星野「小さい頃からアイドルとかキラキラしたものに憧れていたんです。中学3年生の頃、私は得意なことがなにもないので見つけたいなと思っていて、アイドルをやりたいなと考えたんです。それでオーディションをめっちゃ探してたらキスエクを見つけて。“鬱。”とか書いてあるし※、なんだこのグループって気になって、受けることにしました」

前身グループ・xoxo(Kiss&Hug)の2015年のデビュー・シングル“鬱。”のライブ映像
 

――小さい頃に憧れたアイドルはきっとテレビで見たりするグループですよね。そういうアイドルは選択肢になかった?

星野「たしかに王道のかわいいアイドルもいいなって思うんですけど、キスエクは今まで聴いたことない曲ばかりやっていたので、音楽に惹かれたんです。私はこういう個性的でかっこいいジャンルのなかでかわいいポジションを取りたいなと思いました」

――みなさんは星野さんの加入をどう見ていますか。

一色「なんというか、ありがたいです(笑)。キスエクは身長が低いとよく言われていたので高身長の子が入るとバランスもいいし、高校生でフレッシュな感じも久しぶりだったので、予想がつかなくて面白いなと思いました」

真城「瞳々ちゃんは華があるじゃないですか。パッと目を引く存在で。私も入る前は、キスエクはゴリゴリに音楽をやっているというイメージがあって、取っ付きづらいと感じるアイドル・ファンのかたもいらっしゃると思ってたんですけど、瞳々ちゃんみたいな王道アイドルでもいけそうな華やかな存在がいることによって、それまで敬遠していたかたにも興味を持ってもらえるきっかけになるんじゃないかなと思ってます」

――キスエクを取っ付きにくいと思っている人って実際のところいるんでしょうかね。

真城「ちょっと感じません?」

小嶋「いると思いますよ(笑)。Twitterとかでも書かれるよね。〈プログレって言ってるから敬遠してた〉みたいに」

一色「キスエクのスタート当初、〈プログレ・アイドルです〉って言いながらビラ配りをしていたときに、〈プログレ? どうしてそんなところに手を出した? 大丈夫?〉って心配されたんですよ。私はプログレのことを知らない状態で入ったので、〈大丈夫?〉って心配されるジャンルってなんなんだと思って(笑)。だから最初は不安でした」

――長く続いているからもう不自然にも思わなくなったけど、たしかに冷静に考えたらぎょっとする人もいるのかもしれないですね。

一色「プログレをアイドルのフォーマットでやってるじゃないですか。プログレを薄めてアイドル寄りにするのか、プログレの濃さを保ったままアイドルをやるのかと考えたときに、パンチを効かせたままやったほうが刺さる人にはぶっ刺さると思うんです」

――そうだと思います。

一色「その方向で行く場合、MIXを打つとか、アイドル現場らしい楽しみかたをしたい人には〈ここは違う〉となってしまうことが多いのかな、とも感じていて。キスエクの最初のオリジナル曲は“悪魔の子守歌”なんですけど、長いし、サビはどこだろうという感じで掴みどころがなくて、謎のまま終わってしまうじゃないですか。最初の頃は当の私たちもどう表現したらわからないので、やってるほうも見てるほうも半信半疑みたいな状態だったんです(笑)。そうなると、曲の途中で人がだんだん減っていくんですね。

そういう悲しい経験もしてきたんですけど、相手に合わせるんじゃなくて、とにかく見てもらって慣れてもらうという方法を採っていきました。芽瑠さんみたいなかわいい存在がかわいく表現すると、どんなプログレ曲でもアイドル・ソングになるんだなというのを間近で見て感じていたのも大きかったのかもしれないです」

“悪魔の子守歌”のライブ映像

 

芽瑠さんのパートをモノマネで歌ってもしょうがない

――たしかに芽瑠さんが中和していた部分もありましたよね。芽瑠さん卒業以降のグループはどうでしたか? それこそアイドル然とした存在が抜けたことでカラーは間違いなく変わりますよね。

一色「もう悩みだらけで」

小嶋「それまではめるたん(楠芽瑠)がまとめてくださっていたし、MCとかも任せきりだった部分が多かったので。曲が終わってMCで喋り出す人がいなくなったので、萌氏が一番大変だったと思います」

――MCも担っていたし、声色も1人違いましたし。

一色「そのへんのことも残った3人で話し合って。芽瑠さんのパートをモノマネで歌ってもしょうがないじゃないですか。3人はたまたまロック寄りのかっこいい表現が好きだったので、そこを意識してやってみる?みたいな話をしました」

浅水るり「3人になったとき、私は先輩2人に頼る形になってしまっていたとは思うんですけど、かっこいい方向で行こうという話になって、そうなってからは〈るりちゃんらしさが出てきたね〉と言われることも増えていきました。それまでよりもやりがいを感じたり、楽しいなと思うことが増えましたね」

――浅水さんのあとに真城さんと星野さんが入ってきたので、もうすっかり先輩の立場ですよね。

小嶋「先輩感出てきたと思います」

浅水「本当に? でも、初めてできた後輩が奈央子ちゃんだったから、後輩感のなさというか……(笑)」

――できる人だったから。

浅水「はい。だから先輩になったという実感が何もなくて。でも、瞳々ちゃんが入ってきて、年齢的にも差があるし、ようやく後輩らしい後輩ができた気がしてます(笑)。もしかしたらようやく自分が先輩だという自覚が出てきたのかもしれないですけど、まだまだだなと思ってます」

 

動物をテーマにしたコンセプチュアルな新作

――このタイミングでのアルバムのリリースになったのは、現体制が安定したということでもあるのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

大嶋「それが、延びに延びて今という感じなんです。曲自体は2020年11月のワンマンの時点で全部あったので。コロナの影響もあって、年内は難しいな、じゃあ翌年の2月かな、それも難しいから4月かな……となっていって、流通と相談して、最終的に連休明けのこのタイミングになりました」

――そうだったんですね。そうなった結果、5人で歌う曲も増えたという。

大嶋「それもありますし、延びたから入った曲もあります」

小嶋「結果オーライですね(笑)」

――昨年7月リリースのシングル“フェニキスの涙”は3人体制でしたよね。ということは、真城さんの歌が音源に収録されるのも初になりますよね。

真城「初参加です。とっても嬉しいです! これまでは3人の声が入った音源や芽瑠さんがいらっしゃったときの音源で練習してきて。私はライブでは歌ってるけど、音源には入ってないしな、という寂しい思いをしていたんです。もちろん新メンバーなのでしょうがないことなんですけど。今回、ようやく音源に入れていただけるので、私がメンバーだよというのが形として残るのがすごく嬉しいです」

――浅水さんもそういう時期ありましたもんね。自分が歌ってない音源にサインしたり。

浅水「入ってすぐの頃に“Nucleus”のリリース・イベントがあったので、声も入ってないのにサインしていいのかなという気持ちはたしかにありました(笑)。曖昧な立ち位置だなという気持ちはあって、初めて自分の声が音源に入ったときは嬉しかったのを覚えているので、奈央子ちゃんの気持ちはすごく共感できます」

――といったあたりでアルバム『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』の話に入っていきたいのですが、今回もコンプチュアルで、すごいことになっていて。

一色「前回のアルバム『The Both Sides Of The Bloom』が〈アイドルの一生〉というテーマだったんですけど、今回は〈動物〉がテーマで。私は今まで色んなアイドルのアルバムを収集してきましたけど、テーマを決めてアルバムを作るというのは……プログレの世界ではよくあるみたいですけど、アイドルではそんなにないので面白いなと思います」

真城「全体でひとつの作品になっている感じが素敵だなと思います」

 

全編英語詞の挑戦的な“Altair(孤高の荒鷲)”

――すべてが動物にちなんだ曲になっているんですよね。まず1曲目の“Altair(孤高の荒鷲)”ですが、いきなり全編英語詞のチャレンジングな曲です。

一色「私たちも大パニックでした。歌詞が届いたのがレコーディングの数日前で、〈全部英語だな?〉って(笑)。でも、奈央子ちゃんが帰国子女なんですよ。心強いなと思いました」

真城「一応、得意分野です」

小嶋「奈央子ちゃんはイギリスにいたので、イギリス英語とアメリカ英語の違いもあったんだよね」

真城「たしかに発音をどうすればいいかなというのはありました」

――とはいえ真城さんの存在はかなり心強いですよね。

一色「どうにもならないときに〈これ1回言ってみて〉ってお願いしてました」

真城「レコーディングの順番は私が最後だったので、そこまで指摘したりはできなかったんですけどね。でも、こういう発音だとかっこよくは響かないから、その場で変えたりということもありました」

一色「この曲は元Fear, and Loathing in Las VegasのSxunさんに作ってもらっているというのもポイントです」

 

キャッチーなサビに感情が乗った“Hungry like the Wolf (ver.3.5)”

Silent Of Nose Mischiefとコラボした、“Hungry like the Wolf”のライブ映像
 

――という感じで1曲ずつ触れていければと思います。続いて“Hungry like the Wolf (ver.3.5)”。ヴァージョンが3.5もあるんですね。

一色「“フェニキスの涙”のカップリング曲なんですけど、あれが最初で。そのときの店舗特典音源が〈ver.2〉?」

大嶋「そう。オルガンの音色を変えて、浅水が歌っているところを小嶋が歌ってるヴァージョンがあって」

小嶋「え? そうなんだ。ちゃんと聴いたことないや(笑)」

大嶋「〈ver.3〉はこの5人が歌ったもので、なりすレコードの『NARISU RECORDS SPECIAL SAMPLER 2021』に入ってます。今回の〈ver.3.5〉はそこから細かいアレンジを変えたものです」

一色「……メンバーも把握できてなかった(笑)」

真城「この曲は私が加入するときに3人でよくやられていて。それを見て、涙が出そうなくらいめちゃめちゃかっこいいなと思ってました。キスエクは曲が長かったり難しかったりする印象があったんですけど、“Hungry like the Wolf”は取っ付きやすい部類に入るのかなと思ってます。拡声器を持ってラップっぽい口調で歌うのも印象に残りやすいし、サビもキャッチーで感情も乗せやすい感じなので、私もずっと参加したいと思っていた曲です。最初にレコーディングしたのもこの曲です」

――“フェニキスの涙”のシングルを作っている時点で動物をコンセプトにする構想はあったのでしょうか?

大嶋「はい。ファースト・アルバムを作ったあとに次は(ピンク・フロイドの)『Animals』(77年)のようにしようと思っていたんです」

一色「フェニキスは動物なのか?という説がありますけど(笑)、結構前から〈次は動物〉と聞いてました」

小嶋「〈次は牛かな〉とかよく話してたよね(笑)」

 

10分超えの大作“Do rats desert a sinking ship? 組曲「ねずみは沈む船を見捨てるか?」”

――3曲目は問題作“Do rats desert a sinking ship? 組曲「ねずみは沈む船を見捨てるか?」”。10分超えの大作です。

一色「アルバムは何曲入りですかと言われたら返事に困るんですよね。この曲が何トラックにも分かれているので」

――キスエクは長い曲がいくつかありますけど、この曲はこれまでのどの大曲とも違うアプローチですよね。壮大な雰囲気ともまた違って、かわいらしいところもあって。

小嶋「やってても楽しいです」

真城「歌詞に物語性があって。長い曲だけど曲調も変わるし物語もあるしで、聴いてて飽きないと思います。某テーマ・パークっぽい」

小嶋「ねずみの曲だから、きっとそういうことなんだろうね」

――こういう曲をもらうときに、なにかしらの説明はあるんですか?

一色「特に説明はなく、送られてきたファイルを開いたら〈おお、長い〉という感じです(笑)」

小嶋「何段階かあるんですよ。新曲のデモです、新曲の仮歌ですって」

一色「ちょっとずつ心の準備をしていく感じだよね。ただ、覚えるのは大変(笑)」

真城「難しすぎますよ」

一色「キスエクの曲は一見普通っぽくても、よくよく聴くと拍子とかが普通じゃない可能性が高いので、全部疑ってかからないといけないんです」

――新曲への取り組みかたが〈疑ってかかる〉となるのもすごい(笑)。

一色「今盛り上がってるけど2~3秒後にはめっちゃ静かになるかもしれない、とか思いながらデモを聴いてます(笑)。“ねずみ”はお芝居っぽい要素がかなり入っていて、お客さんもメンバーもそれぞれお気に入りのパートがバラバラだと思います。あと、ライブのときには前奏のあと一回ステージから捌けるんですよね」

真城「一旦、舞台上から誰もいなくなるんです(笑)。キスエクって本当にすごいなと思いました」

浅水「私は長い曲に慣れてしまっていて。“ねずみ”を初めて聴いたときに衝撃はあったんですけど、10分越えの曲は前にもあったので、またきたな、くらいの感じでした(笑)」

一色「最近は6分だと短いなと思っちゃうよね。7分前後がスタンダードみたいになってきてる。“ねずみ”を手に入れたことで、“悪魔の子守唄”と合わせて2曲で25分を埋められることになりました」

 

キング・クリムゾンの楽しいオマージュ“えれFUNと"女子"TALK ~笑う夜には象来る~(2021 Ver.)”

“えれFUNと"女子"TALK ~笑う夜には象来る~”のライブ映像
 

――ライブ・イベントで2曲だけやって帰る可能性も出てきた(笑)。続いてが“えれFUNと"女子"TALK ~笑う夜には象来る~(2021 Ver.)”。これはかなり前からあった曲ですが、動物の曲だから今回収録したという背景でしょうか。

大嶋「そうですね。入れられるじゃんと。曲調的には変わっているので入れづらいかなと思ったんですけど、このコンセプトなら大丈夫かなという」

小嶋「プログレが好きな人もわかりやすいし、サビもキャッチーなのでアイドルオタクの人にもウケが良い曲で」

――キング・クリムゾンのオマージュですもんね。星野さんはアルバムの初レコーディングはいかがでしたか。

星野「楽しかったです。でも、私はこんな声なんだと知って。自分が思ってたのと違うと思ってショックを受けました(笑)」

一色「めちゃめちゃ新鮮な感想!」

星野「あと、この曲はほかの曲に比べて明るいですよね。歌詞でも〈笑おう〉って言ってるし」

一色「たしかに明るいというのは大きいかも。りんりんとるりちゃんと私の3人編成の時期は、過去のどの曲をやるか見返してたときに、“えれFUNと”は明るすぎるから却下してたんですよ。奈央子ちゃんと瞳々ちゃんが入ってきてくれたことによって復活した感はあります。じつはそういう曲は結構あります」

キング・クリムゾンの81年作『Discipline』収録曲“Elephant Talk”。“えれFUNと"女子"TALK ~笑う夜には象来る~(2021 Ver.)”でオマージュされている

 

演奏をしっかりと聴かせる“十影”

――新メンバーはグループにとってギフトだったわけですね。続く“十影”もまたすごい曲で。7分のうち、歌っている時間は何%なんだというくらい演奏をがっつりと聴かせる構成で。

一色「バンド編成のワンマンで一度披露したきりなんですけど、そのときは椅子に座ってたんです。もう演奏を聴いてもらおうって(笑)」

真城「バンド・セットだから映えた演出だし、すごくよかったと思うんですけど、普段のライブでやるとなるとどういう見せかたをしていいのか。めちゃめちゃ長い間奏はどうすれば……。この曲、私は間奏明けに歌うんですけど、緊張感がすごいんです。メロディーラインも難しいですし」

一色「曲が静かなぶん、歌がよく聴こえるよね。すごく慎重に歌わないといけない曲ですね」

 

何もできないところから決起していく庶民を描く“羊たちの進撃 ~The assault of the Lambs~(2021 Ver.)”

“羊たちの進撃 ~The assault of the Lambs~”のライブ映像
 

――“羊たちの進撃 ~The assault of the Lambs~(2021 Ver.)”は、もともとはコンピ『STAY OPEN ~潰れないで 不滅の試聴室に捧ぐ名曲集~』(2020年)に収録されたもので、それをこの5人で歌い直したものですよね。

大嶋「『Animals』の“Sheep”とモチーフが似ていて。これを作ったのがちょうどコロナ禍だったので、庶民が何もできないところから決起していくというのを表現しました」

ピンク・フロイドの77年作『Animals』収録曲“Sheep”
 

真城「私が入って初めて振り入れをしていただいたのがこの曲です。それまでは芽瑠さんのいらっしゃった場所に入る感じだったんですけど、初めて私ありきで作っていただいたので、思い出深い曲です。5人になってフォーメーションがより複雑になってよりライブ映えするようになったし、瞳々ちゃんの声がよく響くので、この5人版もかっこよくなったんじゃないかなと思います」

――オリジナルのほうは、柿崎李咲さん、今泉怜さん、みしぇるさんの3人をフィーチャーしていますが、どんな経緯だったのでしょうか?

大嶋「神保町試聴室のドネーションのコンピの話が来たときに、彼女たちが前ユニットを辞めたばかりで動きたくても動けないという状況もあったので、このタイミングでコラボしたらみんな幸せになれるんじゃないかなと思ったんです。もちろん元運営さんにも筋を通して、お話しして。色んなものがマッチしたという感じです」

――ああ、それは良い話ですね。

一色「私も柿さん(柿崎李咲)、(今泉)怜ちゃん、みしぇるちゃんが大好きだったので、こういう形でコラボができるというのはすごくびっくりしたし、嬉しかったです※」

※編集部注 柿崎李咲、今泉怜、みしぇるが参加した“羊たちの進撃 ~The assault of the Lambs~”のオリジナル・ヴァージョンは本作のボーナス・トラックとして収録

大嶋「後になって、柿崎さんたちに〈あれが励みになった〉と言っていただけて。奇しくも、(柿崎、今泉の現在所属する)MANACLEのアルバム『Liberation』もたまたま発売日が一緒なんです」

一色「それも本当に嬉しいです」

 

歌に比重を置いた歌謡曲的な“Hibernation(冬の眠り)”

――次の曲にいきましょう。“Hibernation(冬の眠り)”は、歌メロが美しくて。

一色「金属恵比須の高木(大地)さんに作っていただきました。高木さんはちょっと歌謡曲を意識したと仰っていたと思います」

真城「こういう、がっつり歌を聴かせる曲ができるのもキスエクの強みかなと思っていて。私はアイドルオタクをやっていた歴が結構長いんですけど、こういう曲はあまり聴いたことがないので、キスエクはこういう表現できるのがいいなと思っています。この曲の萌さんがかっこいいんです」

一色「ここまでは初めてかもというくらい歌割りを多くもらっていて。やっぱりそのぶん責任もあるので、緊張する曲ですね」

 

cali≠gariの村井研次郎が提供のライブ定番曲“Ride a Tiger(虎とアリス)”

“Ride a Tiger(虎とアリス)”のライブ映像
 

――“Ride a Tiger(虎とアリス)”。ほかの曲もそうですが、邦題がついているのがいいですよね。

一色「“Ride a Tiger”のどこにアリスが?っていう(笑)。一番ライブでやっているし、人気の高い曲ですね」

小嶋「ほぼ必ずやってます。定番曲」

真城「提供してくださったのがcali≠gariの村井研次郎さんで、ライブ映えもするし、プログレ感もありつつも乗りやすいので、プログレ × アイドルのすごくいいところが出ているんじゃないかなと。毎回盛り上がれてとても楽しいです」

一色「ちゃんと1番と2番があって落ちサビがあるという、キスエクとしては珍しい構成の曲です(笑)」

小嶋「たしかに落ちサビは初めてかも」

 

本編を締めくくる“フェニキスの涙(2021 Ver.)”

――そして本編最後が“フェニキスの涙(2021 Ver.)”。かつて3人で歌っていたものを現在の5人で歌ったこの曲で〆ですね。

浅水「曲ができたのがちょうど去年の今頃の時期で。私の勝手な解釈かもしれないですけど、〈まだいけるでしょ〉みたいなことを言っている歌詞なので、気持ちを込めながら歌ってます。この曲を3人で歌って大変な時期を乗り越えてきて、このアルバムで新しい形になって次に繋げていくというのがいいなと。アルバムの最後にもふさわしい、いい曲だと思います」

小嶋「レコーディングした去年の5月は、これからどうしようっていう時期で。強い意志を持って上に向かっていこうという曲なので、この曲に支えられていた感じはあります。あの時期はライブもなくなって、ほとんど家にいたので……」

――去年の春はアイドル界も先が見えない状態でした。

一色「そうでしたね。この曲は宮野弦士さんに作っていただいたのも嬉しかったし、まいさんの作詞はこれが初めてだったんですけど、感情を込めやすい歌詞にしていただけました。その後“ねずみ”と“Ride a Tiger(虎とアリス)”も書いていただけたのも、この曲があったからだと思ってます」

――宮野さんのプログレの側面を引き出してくれるアイドルは今のところキスエクだけですからね(笑)。

一色「ファンの人にも言われます。〈宮野さんのプログレをもっと聴かせてくれ〉って(笑)」

 

3人、4人、5人の思い出が全部詰まっている集大成

――総じて、どんなアルバムになりましたか。

一色「今回のアルバムは、“フェニキスの涙”みたいな3人の時期の思いが込められてる曲も入っているし、“羊たちの進撃”みたいな苦しかった時期や、奈央子ちゃんが初めて振り入れしたという思い出のある曲も入っています。それに、このアルバムの曲たちを披露したワンマン・ライブは、瞳々ちゃんがサプライズでお披露目された日でもあるので、そのことも思い出すんです。3人、4人、5人の思い出が全部詰まっている集大成ですし、その上で動物というテーマにも重なっているので、本当に……カロリーの高いアルバムです(笑)」

小嶋「キスエクはもうそろそろ4年半になるのに、これがまだ2枚目のアルバムなんですよ。あんなに曲あるのに」

一色「なので、アルバムとしてすごく練られた作品になっていると思います」

――最後に言っておきたかったことはありますか?

一色「特撮さんのニュー・アルバム『エレクトリック ジェリーフィッシュ』も同日発売なんですよ。りんりんと奈央子ちゃんと私で3曲コーラスで参加させていただきまして」

大嶋「“Ride a Tiger(虎とアリス)”のミックスをNARASAKIさんにやっていただいたので、そのご縁もあってお声掛けいただきました」

一色「レコーディング・スタジオにオーケンさん(大槻ケンヂ)がいたのでびっくりしました(笑)。特撮さんとMANACLEさんと同じ発売日なのでそちらも聴いていただけると嬉しいです」

 


RELEASE INFORMATION

XOXO EXTREME 『Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-』 Twelve-Notes(2021)

リリース日:2021年5月12日
品番:TNR0023
価格:3,300円(税込)

TRACKLIST
1. Altair (孤高の荒鷲)
2. Hungry like the Wolf (ver.3.5)
3. Do rats desert a sinking ship? 組曲「ねずみは沈む船を見捨てるか?」
Prelude
M1. prologue / プロローグ
M2. smell a rat / 嫌な予感
M3. drowned rat / 溺れるネズミ
Interlude
M4. trapped rat / 袋のネズミ
M5. rat race / 競争社会
M6. epilogue / エピローグ
11. えれFUNと"女子"TALK ~笑う夜には象来る~ (2021 Ver.)
12. 十影
13. 羊たちの進撃 ~The assault of the Lambs~ (2021 Ver.)
14. Hibernation (冬の眠り)
15. Ride a Tiger (虎とアリス)
16. フェニキスの涙 (2021 Ver.)
BONUS TRACK
羊たちの進撃 ~The assault of the Lambs~ (ORIGINAL Ver.)
collaboration with 柿崎李咲(MANACLE)、今泉怜(MANACLE)、みしぇる