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誰かの思い出のなかで流れてほしい『Private Memory』

――では、今回のミックスについて教えてください。まず、どういう経緯で作られたものなんですか?

「Manhattan Recordsのスタッフの方が僕のDJミックスをSoundCloudで聴いて、オファーしてくれました。これが、もし2年前だったら、断っていたかもしれない。そのときの自分のモードはクラブ・ミュージックに向かっていたし、固めの音でBPMの速いテクノを中心にかけていたときだったから。ポップスをかけることも含めてDJが雑多になっていったタイミングだったので、ちょうどいい時期にオファーをいただいたと思います。あと、個人的にかけていた曲やアーティストがレーベルのカタログに多くあったので、選曲もしやすくて」

――まずレーベルのカタログにある曲を中心に組み立てていくというのがあったとは思うんですけど、全体の温度感という面でコンセプトはありましたか?

「7月のリリースということで、夏っぽい感じにしようとは思いました。昔好きだった曲を聴いたとき、その曲をよく聴いていた時期のことがフラッシュバックしたりするじゃないですか。そういうミックスCDになってほしいとは思っていましたね。『Private Memory』というタイトルにもそういう意味を込めたんですけど、〈誰かの思い出のなかで今回のミックスCDがかかってたらいいな〉って。そこから選曲・構成を考えました」

――ミックスを通じて、ジャンルやBPMが一辺倒ではなく、テンションやグルーヴを変えていく感じが心地よかったです。

「構成は〈ある一日〉をイメージしました。始まりは、昼間の12時ぐらいかな。途中に僕の未発表楽曲“Tinkerbell”を入れているんですけど、そのあとに一気にBPMを落として空気を変えています。そのあたりが、夕暮れぐらい。さらに終盤は夜が深まっていき、最後はONJUICYの曲“ハクナマタタ”で朝を迎える、という」

『Private Memory』に収録されたONJUICYの“ハクナマタタ”
 

――BUDDHAHOUSEさんの新曲“Tinkerbell”は、デヴィッド・モラレスの楽曲などを思わせるピアノ・ハウスでめちゃくちゃいいですね。

「自分で言うのもなんですけど、かなりエモい曲ですよね(笑)。この曲は、Itoshinという、僕のレーベルFRUIT PARLORからリリースしているキーボーディストに参加してもらいました。Itoshin自身の楽曲“BABY”も、ミックスCDの中盤で使っています」

『Private Memory』に収録されたBUDDHAHOUSEの“Tinkerbell”
 

――グッズのブギーな“Shots”からItoshinさんのアップリフティングなハウス“BABY”への流れもいいです。BPMもグッと上げていて。

「このミックスCDは、いろんなスタイルのミキシングができたのがよかったです。カットインもあれば、BPMを変えながらのミックスもあるし、エフェクターを使ってエコーで飛ばしたりもして」

――特にご自身で気に入っている繋ぎや選曲を挙げるとすれば?

「どこだろう……10曲目のDJデックストリーム“Around We Go”から11曲目のフル・クレイト&カイル・ディオン“Brandy”への繋ぎで使ったテクニックは、現場でもたまにやっていますね。曲をバスッて変えるんだけど、前の曲にエコーをかけて一瞬残すという。自分でも、〈ここ気持ちいいな〉って思います。今回はManhattanのカタログと、僕からお願いして使わせてもらった国内のアーティストによる楽曲を使ったんですけど、限られた選曲でも自分のDJっぽさを出せたかなと思うので、すごく満足していますね」

『Private Memory』に収録されたDJデックストリームの“Around We Go”

『Private Memory』に収録されたフル・クレイト&カイル・ディオンの“Brandy”

 

誰かがクラブ・シーンの入り口とならなければ

――最後に今後のBUDDHAHOUSEとしての展望を教えてください。

「いまは全体的にはカッコいい、クールな音楽が主流になっているように感じていて。クラブでもトラップとか硬派なテクノとかが人気だし、もうちょっとポップス寄りのものでも、わりとジャジーでおしゃれな感じの音楽が、みんなから聴かれている気がする。まぁ、このミックスCDもそういう感じなんですけど(笑)。ただ、それ一辺倒になるのもどうかなと思っていて、ちょっと笑えるというか、少しおちゃらけた感じでやっていきたいなと思っています。でも、難しいんですよね。ストイックじゃないと思われたり、音楽をやっている人からはよく思われなかったりして」

――〈おもしろいことをやるべき〉と思ったのには、何か背景があるんですか?

「いまのクラブ・シーンに対して、シーンのなかだけでお客さんを回している印象を受けていて、〈外のお客さんを入れないといけないな〉と思ったんです。どのイベントも同じお客さんがいて、だんだんとそれも減ってきて……という昔、僕が見てきたクラブの良くない流れがあるように感じています。パーゴルとPodcastをやっているのも、クラブ以外の人を巻き込みたいのからというのもあるし、そういう入り口になるようなポップな感じの活動を心掛けたい。いまクラブ・シーンでは、ポップなものは疎外されている雰囲気があるけど、それに反発して、今後DJやパーティーをやっていきたいと思っていますね」

 


RELEASE INFORMATION

TRACKLIST
1. Anomalie – Ouverture
2. DJ Deckstream – Life Is Good Feat. Mos Def
3. Anomalie – Métropole
4. Pretty Sister & MarcLo – Poolside Vibe
5. Kool Customer – Those I Like
6. Midas Hutch – I Feel For U
7. Midas Hutch – In Touch Feat. Daul & Charli Taft
8. Jazmin Sisters – Heartbreaker
9. DJ Komori – Really Into You
10. DJ Deckstream – Around We Go Feat. Novel
11. Full Crate & Kyle Dion – Brandy
12. Midas Hutch – Ready Or Not Feat. Bluey Robinson & UNO Stereo (Radical One Remix)
13. Full Crate – Rollercoaster Feat. Gangs Of Kin & Elique Curiel
14. Hermitude – OneFourThree Feat. Buddy, BJ The Chicago, Daichi Yamamoto
15. Midas Hutch – Air Power Feat. The Kount
16. The Goods – Shots feat. Touch Sensitive & Disco J
17. ItoShin – BABY
18. Midas Hutch – Drive Around Feat. Jinbo & Jason Lee
19. Zak Waters – Galactic Appeal With Dragonette
20. BUDDHAHOUSE – Tinkerbell Feat. ItoShin
21. Kool Customer – Rain On My Window
22. the oto factory – A_T_A_M_I
23. Zak Waters – Brad Pitt
24. SKLR & Raq – GNGM Feat. YUNGYU (Produced by Pateko, Minho Seo)
25. ONJUICY – ハクナマタタ Feat. RICK NOVA