(左から)PARKGOLF、黒川隆介
取材協力:SEAWORTHY DRY GOODS
 

気鋭の若手詩人・黒川隆介が洋邦/新旧を問わず、気になるアーティストの楽曲を1曲ピックアップし、その歌詞を咀嚼して、アンサーソングならぬ〈アンサーポエム〉を書き下ろすこの連載。3度目の特別編となる今回は、前回のおかもとえみさんからの紹介で、ビートメイカー・トラックメイカーのPARKGOLFさんと対談します。PARKGOLFさんの日常生活に切り込んでいくと、トラックメイクと詩という一見離れた表現方法にも通ずる部分があることが明らかに……。さらに表現をする上で譲れないディティールについてや、知られざる〈石への愛〉、よく見る夢についてなど、ざっくばらんに語っていただきました。


 

二人の出会い

黒川「おかもとえみさんからPARKGOLFさんと仲が良いよと聞いていて、それで焼肉屋に飲みに来ていただいて。あの時はどういう風に聞いて来られたんですか?」

PARKGOLF「〈大学の同級生だった人でめっちゃおもしろい人がいる〉って聞いて、〈飲もう〉ってめっちゃラフに誘われて焼肉屋にたどり着いたみたいな感じで」

黒川「そうだったんですね。普段よく飲む人はどういう人がいますか?」

PARKGOLF「よく遊ぶのは、高校の同級生のBUDDHAHOUSEがいて。あとはDJのokadadaさんとか。イベント一緒になることも最近多かったし」

黒川「居酒屋に行こうってよりかは、そのメンバーともクラブのイベントで飲むことが多い?」

PARKGOLF「そう、一緒のイベントになったり、何人か知り合いが出ていたりして遊びに行くってなると絶対いるから、そこで飲む。逆に、居酒屋とかにはそのメンバーで行くことがなくて。クラブ以外で遊ぶってなったら、誰かの家でYouTube見るとか結構多いですね」

黒川「いまお話に出てきた人たちも音楽関連の方々じゃないですか。普段会う人っていうのは音楽関連の方が多い?」

PARKGOLF「多いし、ほとんどかもしれないですね」

黒川「そもそも、音楽を始めるきっかけというのは?」

PARKGOLF「音楽は小さい頃から好きで、親も結構ずっと音楽聴いてるみたいな人で。小学生の時は、ただ単純に聴いたりCDを借りたりしていて、中学くらいで、KICK(THE CAN CREW)とかRIP(SLYME)とかが出てきた時に、友達でヒップホップをずっと聴いている人がいて。それこそあの、GAGLEのmitsu the beatsさんとかHIFANAとかKREVAとか。MPCを使って曲作っている人たちがいて、〈ヒップホップやりたい〉ってなって。そこから友達がMPCを買って、俺がターンテーブルを買ってサンプリングとかして曲作ってラップする、みたいなのが音楽始めたきっかけかな」

黒川「なるほど」

PARKGOLF「3年ぐらい、その友達と曲作ってラップ録って、特に発表するわけでもなく各々聴くみたいな。で、友達がサンプリングのネタにこだわりたいって話になって。けど俺はあまりサンプリングソースとかどうでもよくて、シンセでも新しい曲を作りたかったから、完全に意見が分かれた。で、高1ぐらいのときにやめたんだよね」

黒川「中学から作り始めているとなると、高1の時には既に各々の方向性が出ていた?」

PARKGOLF「新しい曲を作りたいっていうのと、サンプリングにこだわりたいっていう方向にそれぞれね。でも曲はめっちゃ作りたかったから、向こうがMPCを持ってて自分では作れないからお金を貯めて買って、高2の冬くらいからMPCで自分の曲作り始めて、そこからは自分1人。ラップももういいかなって思い始めてね」

黒川「最初は(ラップを)やっていたんですか?」

PARKGOLF「最初はその友達と一緒にやっていただけで、自分1人で曲作り始めてからは、なんかもう〈インストでも全然楽しいしいいや〉みたいな感じになっていって。それで高2から曲は作ってた。でも高校生だし遊びたいっていうのもあったから、たまにインストだけ作ってた」

 

美容師を辞め、音楽の仕事へ

PARKGOLF「高校を卒業して美容専門学校に入って、ほぼ遊びという感じで作っていたんだけど、卒業後就職して曲をほぼ作らなくなって。音楽やりたいけど、シャンプーの試験に受かるまではお客さんに付けなくて、半年くらい受からなかったから、その時に〈(美容師を)辞めよう〉って決意した。そのまま辞めたら気持ちが収まらないから〈受かって辞めよう〉と思って、受かった何日後かに美容師辞めました」

黒川「そもそも、美容師を選んだ理由って何ですか?」

PARKGOLF「美容師は、結構消去法で選んでいって。音楽をやりたかったけど音楽の学校に行くことを親に反対されたからやめて。お金出してもらわなきゃいけないから、手に職っていうことで選んで。ただ、勉強がめっちゃ嫌いだったから、2年だし専門学校にしようってなって、美容学校は楽しそうって理由で美容学校に通うことにして」

黒川「北海道で生まれて、北海道で育って、北海道で過ごしていくつもりだった?」

PARKGOLF「そう。当時は東京に行くことになるとは全く思わなかった。就職先も、とりあえず札幌でいいかな、東京に行く理由もないかなって。地元も10分15分で札幌都心部って感じのところだったし。美容師を辞めた後に、バイトをしながら音楽続けようって思ったけど、その時も、東京に行くつもりは全くなくて」

黒川「ほう。いままで他にしてきたバイトや仕事はどんなのがあります?」

PARKGOLF「まず美容師を辞めて、最初2~3か月何もしていなくて、お金がなくなったので飲食店でバイトし始めたんだけど、全然合わなくてすぐ辞めて。そこは個人店だったから、常連の人ばかり来る店で、毎回話した内容覚えてないといけないし、そういうのが苦手で。美容師も実際そういうところが嫌で、そういう個人と話すタイプの仕事、合わないなって思ってたので。そこから2年半くらい服屋で働きました。音楽は空いた時間にずっとやっていて、徐々にイベントや制作が増えていったと言う感じかな」

黒川「音楽は、どのタイミングで仕事として成り立っていくんですか?」

PARKGOLF「最初はSoundCloudで見つけてくれた人がリリースの話をくれて、次にMaltine Recordsのtomadがリリースの話をくれて、東京でやるイベントにライブセットで呼んでくれて、そこから爆発的な何かはないけど徐々に仕事につながっていったと言う感じです」


曲作りのためには、曲作りの時間より生活の方が大事

黒川「曲ってどう作るんですか? 例えば僕でいうと、詩を書く際に、パッと浮かんだ〈これ書きたい〉ってことを書くパターンや、日常のなかでメモを取っておいてそれらを繋ぐパターンがあるんだけど、どういうアプローチで作るのかなって」

PARKGOLF「あー、毎日(曲を)作ってるからな……。シンセの音色を作ってコードとかフレーズを録音して、良くなりそうなもの組み立てて作っていく方法が多いです」

黒川「作業場に着くまでは、結構フラットな状態でいる?」

PARKGOLF「結構それが多いかもしれないですね。この感じとこの感じを足して自分の感じにしようっていうアイデアがあれば結構早いけど……。でも、何も思いついてない時でも、とりあえず座ってシンセを立ち上げて弄って、いい感じになりそうなやつを拾っていくっていうことが結構多いかも」

黒川「その作り方は、SoundCloudに曲を上げてた当時から同じ?」

PARKGOLF「そう、ずっとその感じでやっていた」

黒川「そういう曲作りの方法論って、何か参考にしたんですか?」

PARKGOLF「最初MPCで作っていた時は、参考書みたいなものもそんなにないし、機材の使い方をとりあえず勉強して、サンプリングをして、それをどうしていくかを叩きながら考えて。結構直感的に音楽を作る機材だから、参考書っていうよりは試していって、〈出来たものが曲です〉みたいな感じだったかな」

黒川「なるほど。曲作りに直感が影響しているとなると、曲作り以外の時間も曲作りに影響しているんじゃないかって思うんですけど、そこはどうですか?」

PARKGOLF「それがめちゃくちゃ影響してて。どっちかっていうと、曲作りより生活の方が大事なくらい。生活しているうちに、聴いてる曲とかいじった曲とか思った事が、どんどん曲になっていくから。割とそういうことが大事なんだろうな」

黒川「PARKGOLFさんの生活ってどんな時間割なんですか?」

PARKGOLF「最近健全になってきて、朝の9時10時くらいに起きて、1時間くらいご飯を食べたりコーヒー飲んだりして」

黒川「ご飯は外食ですか?」

PARKGOLF「いや、買って食べたりとか、最近ちょっと作るようにしてるけどそんなに多くはなくて。そのあと1時間ぐらいダラダラとして。昼前くらいから曲作り始めて、だいたい2~3時間で集中力が1回切れるから、それで昼ご飯を食べて、また休んで曲作りを始める。夜の7~8時ごろに晩ご飯を食べて、そこからはバラバラかな。YouTube見たりとか」

黒川「なるほど。音楽を作ってると人に会うことが少ないのかもしれないですね。人と会う頻度は週にどのくらい?」

PARKGOLF「ですね。週に2~3回くらいしか会わないかな。一人の時間が多くて、ずっと家で曲を作ってる」

黒川「その時間割の中に、〈曲作りより生活が大事〉の生活の部分が詰まっているんですかね」

PARKGOLF「でも、うちの周りは公園がやたら多くて結構散歩に行くんですよ」

黒川「あ、もしかして名前の由来ってそれですか(笑)?」

PARKGOLF「いやいや(笑)。この名前はBUDDHAHOUSEが勝手につけたんですよ(笑)。〈名前変えよう〉って話をした時に、最終的に〈PARKGOLFにしたら?〉って落ち着いて、そのまま名前になった感じで」

黒川「どういう意味だったんですかね?」

PARKGOLF「いや、本当に意味はなくて(笑)。話していくうちにゴルフ縛りになっちゃって、PARKGOLFに落ち着いたっていう。呼びやすいし良いんじゃんって」

黒川「ちなみに公園とゴルフどっちが好きですか?」

PARKGOLF「それはもう確実に公園が好き(笑)」

黒川「ゴルフは全くやらないんですか?」

PARKGOLF「やらない(笑)」

黒川「(笑)。で、家の周りを結構ぷらぷらしてるんですね」

PARKGOLF「そうですね。うちの近所は犬が多いから遠目で見てInstagramにあげたり」

黒川「じゃあ、ゴルフさんの曲の中には犬のエッセンスも入ってるんじゃないですか?」

PARKGOLF「(笑)。もしかしたら入ってる可能性あるなあ、どこが犬のエッセンスか全くわかんないけど(笑)」

 

栄養不足で味覚障害に

黒川「あと生活の話で言うと、食べ物だとどんなものが好きですか?」

PARKGOLF「結構味覚音痴で、食材の良さがよくわかんないっぽくて……。例えば〈北海道は海の幸〉とか言うけど、たしかに美味しい味なのはわかるんだけど、深みとかは全然わかんなくて。それであまりに食に興味がないからってお菓子ばっかり食べてる時期があって、20歳ぐらいで味覚障害になったことがあるんです。朝ごはん食べても口の中に物があるだけみたいで、病院へ行ったら〈栄養不足で味覚障害になってる〉って言われて」

黒川「お菓子しか食べないって……。じゃあその時期に作っていた曲はお菓子のエッセンスがかなり入っているかも(笑)?」

PARKGOLF「だと思いますよ、きっと(笑)」

(ここで取材場所のSEAWORTHY DRY GOODSより大量のお菓子が運ばれてくる)


PARKGOLF「青臭い野菜とかも本当食べれなくて。ただ基本根菜は食べれるんですよ、ごぼうは食べ物界でも上位にいる気がする」

黒川「じゃあ〈今日ごぼう食べに行きます?〉って誘ってみるとか」

PARKGOLF「めっちゃいい。ごぼう専門店なんてあんまりないけど(笑)」

黒川「寿司も好きですけど、もしこの世界に寿司と野菜がなかったら…?」

PARKGOLF「お菓子が1位で3、4、5位くらいにごぼうが入ってくるかな……。それくらい好きですね。マテ茶とか、土臭い味が大好きで」

黒川「食べ物をあまり地質で考えたことなかったな……」


PARKGOLFが愛する〈石〉の魅力

黒川「土臭いとか地質とかって話で言うと、好きだという〈石〉についても聞いておきたくて」

PARKGOLF「多分一番最初に石にちゃんと触れたのは、小学校低学年の時におじいちゃんとやったガチャガチャで2月の誕生石の〈アメジスト〉が出たことなんですよね。それをめっちゃ大事にしていたのが石を集めるようになった1番最初のきっかけです。23歳くらいの時、ライブで新潟に呼んでもらったことがあって、会場の近くに石屋さんがあって。入ってみたらアメジストがあって綺麗だなと思って。そこから集め始めて」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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黒川「石の魅力って、なかなか語られませんよね。ゴルフさんにとって石とは……?」

PARKGOLF「いくつかあって、まず単純に見た目がいい、かわいい。ヴィジュアルがめっちゃ良いということ。もうひとつは、〈花とか草〉と〈石〉って正反対なところにあるなと思って。花とか草は手をかけて育てられたり、放っておいたら枯れちゃったり。でも石は何もなくてもずっとあるだけ。そういうところが好きで」

黒川「いまどのくらい持っているんですか?」

PARKGOLF「まだ30個くらい(笑)」

黒川「石を見てかわいいって思ったことなんてなかったかもなあ。じっくり見る機会なんて川で水切りするときくらい(笑)。石屋さんって店員さんがエネルギッシュな女性って勝手なイメージがあって、少し抵抗感があるんですよね」

PARKGOLF「あー、パワーストーンを売っているお店に行くとその傾向はあるかも……。でも、光っている石を見るとめっちゃテンション上がっちゃって(笑)」