今までは無駄じゃなかったな、みたいな
――“Back to InDo”はそのカレーの話とは関係あるんですか?
「それは関係なく(笑)、カレーの曲を作ろうということになったんです。90年代は“だんご3兄弟”的なコミカルなカテゴリーがあったじゃないですか。この曲はそういうイメージだと捉えてるんですけど。実際に旅行に行ったくらいインドとインドカレーが大好きなんです。以前は京都の龍岸寺というところで定期的にライブをさせてもらっていて、そこでトークをしたいと思ってインドの仏教と日本の仏教の違いを調べたり。日本に渡ってくるにつれて変わっていくのはカレーも同じだなと思いながら歌詞を書きました」
――混ざるという意味では“RIDE ON A WAVE”は小田和正に山下達郎が乗っかったようなシティー感のある曲ですが、ここでは時代が巡るということを歌ってますよね。
「歴史とかブームって繰り返すと思っているので、また来たなというのをイメージしました。これからも繰り返していくぞ、みたいなつもりで歌詞を書きました」
――冒頭にも話したTKオマージュの“Life Goes On”はド直球の90年代で。
「本当にglobeっぽいですよね。もともとはがっつりバラード曲がなかったので、ほしいよねって話していて。歌うのも難しい曲なんですけど、何年間もボイトレを頑張ってきたし、今ならこういう曲もできるんじゃないかということで挑戦してみました。これは……ライブで歌えるかわからないですね(笑)」
――歌詞としては東京に出てきて以降の気持ちが描かれていますよね。それがわりと重めで、歌い出しから〈どこまで歩き続ければいいだろう〉となっていて。
「もっと明るくすればよかったですよね(笑)。デモができてから歌詞ができるまで1年はかかったんですけど、その間の自分の悩んでる状況とかが含まれすぎていて。ただ、力強くこれからも頑張っていくというのを伝えられたらなという感じで書きました。基本的に暗い歌詞が多いので、これだけがものすごい暗い感じになっちゃったなというわけでもないんですよね」
――活動についてあれこれ考えている心情を描いているのかなという歌詞があちこちにあって。
「自分で書いておきながら、自分でそうだなと思うことがいっぱいあるんです。今までは無駄じゃなかったな、みたいな。書いたときは自分にそう言い聞かせるところがあったと思うんです。きっと無駄じゃないから頑張ろうっていう」
――自分を鼓舞するように書いた歌詞だけど、後々になって現実に繋がってくるわけですね。挫けずに頑張ろうみたいなことはどの曲でも言ってますよね。
「ほんとにそうですね(笑)。私、小さい頃からB'zが大好きで、思春期にわーきゃーするでもなく、B'zの歌詞を読み続けて、それをずっとノートに書いてたんです。暗いファンですよね(笑)。稲葉(浩志)さんの歌詞はパッと見で読んだ感じは暗いけど、そこから頑張るぞというのが多くて。自分の歌詞を読み返すと、そういうところで影響されてるのかなと思います。あまり意図的ではないんですけど、そういうのを書きがちですね。逆にラヴソングとかは小っ恥ずかしくてまったく書けなくて。だから、3曲目の“よくあるラブソング”も、タイトルで言うほどそんなにラヴソングではないんです(笑)」
――本編ラストの“New-Normal Wind”はまさにコロナ以降の曲です。
「去年の夏に出したネムレスさんとのスプリットCD(『POWWER』)のために作った曲で。家に籠ってる間に書いたんですけど、当時はぴったりと思った言葉が、今ではそうでもないなと思ったりすることもあります。そのときの記録という感じですね。この曲はリズムの練習をむちゃくちゃしました。もともとリズム感がないので、歌っててよく見失います(笑)」
――かなり複雑に打ち込まれたトラックですもんね。
「X JAPANを意識したって聞きました」
――そういうことなんですね! それがこんな破天荒なドラムンベースになったという(笑)。
「曲は打ち込みですけど、歌はロック的に歌うことを意識しました」
今できることは全部できたかな
――そして本編のあとにはリミックスが6曲も収録されています。
「どれが面白かったですか?」
――ディスク百合おんさんとか高野政所さんとは相性が良さそうだなというのは分かるけど、想像がつかない組み合わせという意味では矢舟テツローさん(“マシュマロ -Tetsuro Yafune remix-”)が面白かったです。生演奏のジャズのアプローチで。
「いいですよね! リミックスのなかではむしろ一番90年代っぽくて、アルバムにマッチするように仕上げていただきました」
――ほかにも加納エミリさんが参加していたりと人選がユニークですが、どうやって決まっていったんですか?
「純粋に〈この人のリミックス聴いてみたくない?〉というところからお願いしてます。自分たちには絶対にできない変化をもたらしてくれる人で、実際にそうなっていると思います」
――といったあたりで時間がきてしまいました。アルバムが完成してみていかがですか?
「まだデザインが最後まで完成してないので(※取材時)、ちょっとすっきりしてないんです(笑)。歌の表情を曲ごとに変えることを意識したんですけど、それはできたと思ってます。ジャケットも色んな90年代があるよねということを表したかったので、音楽とジャケットがうまくまとまったかなと。今できることは全部できたかな。そうだ、90年代のCDと言えばスリーブケースだと思ってるんですけど、今回、スリーブケース仕様にしました」
――このご時世にそれはすごい。
「やっぱり所有してる感があるのがいいじゃないですか。写真もいっぱい使ってます。デザインする面が増えてしまったので、今がまさに大変なんですけどね(笑)」