長い夜を越えて、あの絶対的エースが新しい朝に再臨……待望のソロ・デビュー作『DAYBREAK』はソロ・アーティストとしての鮮やかな幕開けを眩しく照らす!
いまの自分がやる意味
「歌うことや踊ることの大好きな私が、活動休止中にどんな考え方になって、どこに辿り着くかっていうのは自分でも未知数なところがあって、だからこそ仕事から離れていろいろ勉強して自分の時間を作ったんですけど……それでも私はパフォーマンスすることがいちばん自分が生きてると感じる瞬間なんだなって知ることになったんですよね」。
2011年、弱冠12歳でモーニング娘。に加入して脚光を浴び、2015年末にグループを卒業した鞘師里保。その後の活動休止期間にはダンス留学も経験し、2020年に入ると芸能活動を再開、まずは俳優として舞台やドラマ出演を続け……そして令和3年8月4日(さやしの日)に5曲入りのソロ・デビューEP『DAYBREAK』をリリースして約5年半ぶりに音楽の表舞台に戻ってきた。
「最初から4、5年って休止期間を決めていたわけではなくて、時の流れに身を任せていて、気付けばこんな経っちゃった、やばい!みたいな感じだったんですけど(笑)、私には必要な時間でした。辞めた直後とかは寝ててもステージに立ってる夢を見てたんですよ。夢の中では楽しいんですけど、いまは次のことを考えたいのに……って、フラットに物事を考えられるようになるまで1、2年ぐらい待たなきゃいけなかった。それだけモーニング娘。で人生の濃い時間を過ごさせてもらったんですけど、濃い時間だったぶん、すぐには普通の状態に戻れなくて」。
留学も含めてオフステージ中心の生活を知った数年間。それだけに復帰を選ぶまでに逡巡もあったのは想像に難くない。
「いちばん自分の魂が燃えるのは踊ってる時や歌ってる時だなっていうのは感じてたんですけど、それを復帰という形にしていいのか趣味に変えたほうがいいのか悩んだ時期はあって、現実的に別の仕事を探すという選択肢も普通にありました。去年Instagramを個人で始めた時点で、ありがたいことに〈歌って踊ってる姿がまた見たい〉ってたくさんの方に言っていただけたんですけど、〈いまの私に何ができる?〉って考えた時に、安易に〈前はこうだったよね〉っていう感じのことをやるなら過去の作品を見てもらえばいいし、年齢も重ねて、時代も超えて、それでもなお自分がやる意味のあるパフォーマンスが大事だなと思って。いろんな人のお力添えがあって、いまの私が自分の言葉で歌う音楽が形になりました」。
活動再開にあたってグループやバンドではなく、ソロ・シンガーという形態を選んだ理由についてはこう説明する。
「実際にユニットでやろうかと考えたこともあったんですけど、自分にすべて反響が返ってくるのが怖いからグループにしようとしてるんじゃないか?と思ったし、私にとってそれは保身だなと思ったんです。人によって正解は違うのでグループがダメという意味ではないんですけど、私にとってその選択は自分に向き合おうと決めた5、6年前の自分に嘘をつくことになると思ったんですよね。あと、心がめちゃめちゃ強いわけではないわりには、自分にプレッシャーかけるのめっちゃ好きなんです(笑)。楽しみな気持ちでプレッシャーを浴びる覚悟を決めたっていう感じですね。昔は歌に対する怖さとかコンプレックスみたいなのが強かったけれど、過去に自分が保留してた課題にひとつずつ向き合った結果、それを突破できる手段をたくさん見つけられたって感じていて、現時点で100%のシンガーにはなれてないからこそ、まだもっと良くしていけると思っています」。
そんな彼女の〈ソロ・アーティスト〉としての理想像についても訊いてみた。
「ロールモデルみたいな人はあまりいないんですけど……デスティニーズ・チャイルド〜ビヨンセや、ジャスティン・ティンバーレイクみたいな人たちを聴いて育ってきて、最初に聴いた時からめちゃくちゃかっこいいし、最新のアルバムとかもかっこいいし、自分がありながらも年代ごとに楽曲のスタイルがどんどん変わっていくじゃないですか。そういうのが素敵だなって思ってて、楽曲のスタイルは変わっても〈この人が歌う曲いいよね〉って言ってもらえるようなアーティストになりたいなっていう憧れは漠然とあります」。