オランダに活動の拠点をおくピアニスト小橋敦子の最新作はこれまでも共演してきたベーシストとコルトレーンの楽曲を中心に演奏。古い教会を改築したホール、コンサートを行う予定だった場所だが、共演者との音の対話と同時に、その林の中に佇む建物、そしてファツィオリのピアノの音、環境と音響、そして自身の音との対話に、静謐なアレンジは大胆に見えてそのエッセンスに触れることで精神的なつながりを求めコルトレーンとも対話する。人と触れ合うことが難しくなった苦境の中で必然的に表現された丁寧で真摯な演奏は、一つ一つに聴き入らせる魅力があり、そこに我々リスナーとの対話も生み出している。