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怖いものなし、欲しいものなし

 a flood of circleとUNISON SQUARE GARDENのファンにとっては、THE KEBABSとの住み分けが気になるところだが、“夢がいっぱい”をはじめ、佐々木は変わらぬ人生肯定超ポジティヴ主義の言葉を貫き、田淵は“やさしくされたい”“てんとう虫の夏”など、ユニゾンとは異なるストレートかつ平易な言葉使いを披露しつつ、隠していたヴォーカリストとしての魅力もばっちり見せてくれる(本当にいい声!)。THE KEBABSの楽しみ方は多面的だ。

 「(自作の詞はa flood of circle/THE KEBABS共に)〈基本同じ〉だと思います。生きることにネガティヴな日も当然あるけど、死んだ後が最高にイイ感じなのか今よりもっと最悪なのかただの無なのか、そのへんのことはまあ死んでからでいっかと思うし、生きてるうちに楽しみたいとは思ってますけどね。ただ“夢がいっぱい”はフラッドでは書かない/書けないタイプの歌詞だとは感じていて、THE KEBABSヴァージョンの自分がいるとも思う」(佐々木)。

 「(言葉選びの変化は)自然に考えるとそういうことになるんですよね。偏差値低い言葉回しで、なんかリズムや深読みが良い感じに聴こえるというのは、THE KEBABSの作詞をやってて楽しいところです。ヴォーカルに関しては、ダブル・ヴォーカルにすることでフラッドとの差別化が一気にできるよなというメリットは強くあるんですよね。歌うこと自体は全然好きなので、そこまで苦じゃないという温度感かなあ。押し出したいわけじゃ本当にないんだけど、誰かに褒められるのは嬉しい(笑)」(田淵)。

 今後は何本かのライヴハウス・ツアーを経て、12月には初のホール・ツアー〈THE KEBABS 椅子〉がスタート。当初は〈期間限定?〉と思う向きもあったが、このバンドはそれ以上のものに育っていくかもしれない予感がする。ロック・バンドの楽しみと深みを体現しながら突き進む、THE KEBABSの動向に注目せよ。

 「ライヴにはちゃんと自信があるから、まだ観てない人がいるなら一回観てもらいたい気持ちはあるし、そこに関しては誰かのサイド・プロジェクトとか考えないで、一回ライヴ観てもらうためにやりたいことは結構あるなあ。もうちょっとでいいから広げていって、全国機材車で回っていろんなライヴハウスでできて、上手い酒が飲めれば本当に最高」(田淵)。

 「音楽的な経験、知識、技術を持ち合わせた中堅が集まって、バンド始めたてみたいなことをやっている。ふざけた曲も我々がやれば何だか説得力あるように聴こえてくるっていう、自画自賛。10年前の自分にこの説得力は出せなかったと思う。バンドをやることが目的だから、怖いものはなし。欲しいものもなし。4人で音楽できて幸せを感じられるTHE KEBABSって……もしや無敵?」(新井)。

THE KEBABSの2020年作『THE KEBABS』(インペリアル)