幅広いフィールドで活動してきた4人が経験と知識と技術を持ち寄り、音楽的な大喜利を繰り返したら……とんでもなく痛快な新作が完成したぞ!

音楽的大喜利の積み重ね

 目標なし、打算なし、コンセプトなし。代わりに、無邪気とやる気と、ロック・バンドを信じる気持ちはあり余るほどにある。THE KEBABSの2作目、その名も『セカンド』。それは佐々木亮介(ヴォーカル/ギター)、田淵智也(ベース/ヴォーカル)、新井弘毅(ギター)、鈴木浩之(ドラムス)が2021年の世に問う、〈ロック・バンドってこういうことじゃないの?〉という自然体のメッセージだ。

THE KEBABS 『セカンド』 インペリアル(2021)

 「THE KEBABSは、バンド始めたての〈バンド楽しい!〉〈音楽楽しい!〉って気持ちを取り戻させてくれる。今回も余計な打算なし、とにかく目の前の音楽に向き合って出来たアルバム。めっちゃ良いの出来た」(新井)。

 「のらりくらりと作っていって、たまに本気スイッチが入る分野だけ気合いを入れてとかやってたら、だいぶ今の時代に意義深い作品が出来たなと思ってます。気楽に作りはじめたつもりが個人的に勉強になることもすげえあって、達成感ある作品になりましたね」(田淵)。

 「THE KEBABSは仲が良いのはもちろん、それぞれの経験値が凄いので凄いアルバムが出来ました! いろんな人に聴いてほしい」(鈴木)。

 昨年2月の初アルバム『THE KEBABS』(ライヴ盤とスタジオ盤の2種類あり)は、初期衝動丸出しの一発録り。コロナ禍でスタジオワークの時間が増え、2作目は「音響的に凝る方向で制作した」(佐々木)作品になったが、その成り行きは吉と出た。前作の勢いを受け継ぐ“ロバート・デ・ニーロ”を筆頭に、ギミックなしのメロディアスなスピード・チューンあり、“ジャンケンはグー”などファンクに接近したダンス・ナンバーあり。楽曲のヴァラエティーもアレンジの豊かさも、前作を大きく上回る仕上がりだ。

 「誰かが閃いたアイデア=お題に対して、4人それぞれがバンドマン/ミュージシャン人生のなかで培ってきた反射神経を活用してベストと思う答えを見せ合っていく。そんな〈音楽的大喜利〉を楽しんでたらたまたまこんな作品になった、という感じじゃないかな。合理的な目標を持ってしまうと見逃してしまうような、非合理的な寄り道のなかにこそある輝きやおもしろさって絶対あると思うんで、それがこのアルバムには詰まってると思う」(佐々木)。

 さらに、田淵がリードを取って歌いまくる曲あり、新井が偏執狂的サウンドメイクを施した曲あり。お勧めポイントが多すぎて悩むほどだが、まずはメンバーのお気に入りソングを挙げてもらおう。

 「“てんとう虫の夏”は田淵さんのベース・リフがカッコイイのと、ピックで弾くのが大変らしくて、一生懸命弾いている姿が愛おしい。“チェンソーだ!”は浩之さんのドラム・ソロがキマってると思うし、ライヴではさらにアドリブを仕掛けまくってくるんで、この音源を聴いてからライヴを観てもらうと、彼の〈発想と表現の瞬発力〉の凄まじさがよくわかると思う。“ジャンケンはグー”は、新井さんのポップセンスと職人的なプロデュース力と、素晴らしく気持ち良いリズム・ギターが味わえます」(佐々木)。

 「“おねがいヘルプミー”は、歌詞も曲も歌も演奏もすべてが最高。クレイジー。混沌とした曲をめざし、他に比べて楽器の音量が大きめ。あれこれ歪ませて悪~い音になっている。“ジャンケンはグー”は、佐々木君が歌うファンクが聴きたくて作った。予想通り、それ以上にビタッとハマった。歌を聴いたら欲が出て、レイヤー・シンセなど含め20以上のトラックを追加してしまった。THE KEBABSらしからぬゴージャスなサウンドメイクで、仕上がりには大満足」(新井)。

 「“てんとう虫の夏”は、新井君にギター・リフを考えてもらうところからスタートしました。ダンサブルでファンキーなやつを頼むっつって(笑)。んで、届いた3パターンのリフを組み合わせて僕がサビを付けて、っていう感じで作っていきました。自分でゼロから作るのも楽しいけど、こうやって素材からメロ付けていくのは新鮮ですごい楽しかったな。Aメロはラップで考えようとしたんだけど、最終的に喋りが一番エッジ効いてたのでそれにしました(笑)」(田淵)。

 「“夢がいっぱい”は、アルバムでは最後のほうに出来た曲。佐々木君のデモ段階で8割ぐらい出来てたんじゃないかな? 楽曲・演奏内容的にはとてもストレートだけど、僕はこの曲を聴いたらまたリピートしたくなるんです。凄くハッピーな曲だけどなんか泣けてくるんですよね。〈夢がいっぱいだ、溢れろメロディー〉って最高」(鈴木)。