昨年の聖夜に“Cuz I”を配信して姿を現した〈詳細不明のシンガーソングクリエイター〉がアルバム完成に至った。野暮な詮索はさておき、顔出ししない今風の存在感が大仰なギミックで終わらないのは、単純に音楽そのものの力があるからだろう。エレクトロニクスを溶かし込んだホーリーで繊細なサウンドメイクと美しいハイトーンの歌声で描き出す謎めいた歌世界は、やりたいようにやっている自信に満ち溢れている。