複数の名義で長いキャリアを持つLAのシンガーが、ラナ・デル・レイなどに関わってきたプロデューサーのクリス・シーフリードに見い出され、名を一新して完成したデビュー作。ピアノとベースを中心としたクラッシーな楽曲がアルバムの基調で、ニーナ・シモン“Blackbird”を堂々とカヴァーするオープニング曲や、ビル・エヴァンスのピアノを引用したジャジーな“Fix It”など、ソウルフルなパフォーマンスとモーダルな旋律を乗りこなす器用さの両方を併せ持つ。ジャイルズ・ピーターソンが彼女を〈ジャズ界のグレイス・ジョーンズ〉と評しており、MVで見せる派手な白髪と衣装にその片鱗も窺えるが、エモーショナルさとブルーなヴァイブを巧みに行き来するテクニックこそ聴きどころだ。