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コラム

レディ・ブラックバード(Lady Blackbird)『Black Acid Soul (Deluxe Edition)』来日公演を控えた〈ジャズ界のグレイス・ジョーンズ〉の魅力

©Christine Solomon

驚くべきニュアンスの歌声とジャズ~ソウルの芳醇なヴァイブスで数多くのリスナーを魅了したレディ・ブラックバード。来日を前にその魅力に改めて触れてみよう!

 〈ブラックバード〉と聴けばビートルズの名曲も思い出されるところだが、その着想源とも思しきニーナ・シモンの“Blackbird”(63年)は公民権闘争の真っ只中に発表された曲として、さらに踏み込んだ意識を内包するものだろう。LA在住のマーリー・マンローがレディ・ブラックバードを名乗ってそのカヴァーに挑んだデビュー・シングルは2020年5月27日にリリースされた。もちろん録音時期は数か月前に遡るわけだが、リリースの2日前にジョージ・フロイド殺害事件が起こったことで、「ニーナ・シモンの曲でいちばん好きな曲のひとつ」だと語る彼女のヴァージョンにもタイムリーな意味を付与されることになった

 「最終的に私はエンターテインメントをするためにこの世界にいるのであって、何かの指導者になるためにいるのではない。でも、プラットフォームを持つこと、自分の音楽を聴いてくれる人がいること、それは責任であり、その機会を利用して自分の意見を伝えることでもある。そして残念なことに、2020年の春、この曲は本当に真実味を帯びていた」。

 プロテストの意志を語りつつBLM時代のニーナ・シモンのように扱われることについては慎重な彼女だが、ジャイルズ・ピーターソンに〈ジャズ界のグレイス・ジョーンズ〉と賞賛されたのもまた彼女だ。もともと5歳から教会で歌っていたマーリーは、10代前半から両親の望むクリスチャン音楽の道を歩んでいたものの、16歳でその世界に違和感を感じて、自身の音楽を追求しはじめたそうだ。LAリード時代のエピックと契約して“Boomerang”(2013年)を発表し、ルイス・ビアンカニエロ&サム・ワッターズとの仕事でアナスタシアの曲をコライトしてもいるが、やがて創造性の違いからレーベルを離れている。

 そんな彼女が時を経て翼を広げるに至ったのは、アンドラ・デイらを手掛けるクリス・シーフリードとの出会いがきっかけだったという。彼の書いたジャズ・バラード“Nobody’s Sweetheart”をマーリーは2テイクでものにし、彼女はレディ・ブラックバードになった。そして生まれたファースト・アルバム『Black Acid Soul』(2021年)ではクリスの持つジャズのフィーリングが歌い手の備えたソウルフルかつスピリチュアルなヴァイブスと深く結びついていて、エイミー・ワインハウスやセレステが引き合いに出されて頷く人もいるかもしれない。

 「私たちは私たちの音を表現するサブジャンルとして、〈#blackacidsoul〉というハッシュタグを付けていた。私たちがやっていることすべてを包含する、すべてのアイデアとジャンルを固めた言葉なの」。

 オープニングを飾る先述の“Blackbird”をはじめ、ルーベン・ベルの“It’s Not That Easy”(67年)やアーマ・トーマスの“Ruler Of My Heart”(62年)、さらにはサム・クックでも知られるルー・ロウルズの“Lost And Looking”(62年)などリズム&ブルースやジャズ古典の解釈がアルバムを濃く印象付ける。のみならず、ジョー・ウォルシュとジェイムス・ギャングによる“Collage”(69年)やティム・ハーディンのフォーク・ソング“It’ll Never Happen Again”(66年)といった楽曲のリメイクも含まれている。後者に関しては「最初は好きじゃなかった曲のひとつ。つまらなくはないんだけど、どうやってパワーや個性を出せばいいのかわからなかった。でも、やってみたらマジカルなサウンドになって、結果的にアルバムの中でもいちばん気に入っている」とのことだ。

LADY BLACKBIRD 『Black Acid Soul (Deluxe Edition)』 Foundation Music/BMG/Silent Trade(2022)

 そうやって高い評価を得た『Black Acid Soul』だが、このたび2枚組のデラックス・エディションが登場して日本でもふたたび入手しやすい状況になった。追加音源としては別ヴァージョンやシングル曲、そしてエマ・ジーン・サックレイらを起用したリミックスが収録されていて、UKのジャズ~クラブ・シーンでも支持を広げている状況が確認できるはずだ。2023年1月には来日公演も控えるタイミングということで、ここで改めて〈#blackacidsoul〉の世界を体験してみてはいかがだろう。

レディ・ブラックバードが参加した作品を一部紹介。
左から、トロンボーン・ショーティの2022年作『Lifted』(Blue Note)、ポーキー・ラファージの2021年作『In The Blossom Of Their Shade』(New West)、ジェイミー・カラムの2020年作の新装盤『The Pianoman At Christmas - The Complete Edition』(Island)

『Black Acid Soul』収録曲の関連作品を一部紹介。
左から、ニーナ・シモンの編集盤『The Colpix Singles』(Rhino)、サム・クックの63年作『Night Beat』(RCA Victor)、ティム・ハーディンの66年作『Tim Hardin 1』(Verve Folkways)、エマ・ジョーン・サックレイの2021年作『Yellow』(Movementt)

 


LIVE INFORMATION
Lady Blackbird Japan Tour 2023
2023年1月26日(木)大阪・ビルボードライブ大阪
2023年1月27日(金)東京・渋谷 WWW
https://smash-jpn.com/live/?id=3784

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