ポルノグラフィティのニューアルバム『暁』のリリースを記念して、タワーレコードでは〈TOWER PLUS+ ポルノグラフィティ特別号〉を発行! ここではその中面に掲載されたコラムを掲載いたします。TOWER PLUS+ ポルノグラフィティ特別号は、タワーレコード全店にて配布中です!
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ポルノグラフィティ 『暁』 SME(2022)

新始動の気概を投影した待望のアルバム『暁』が完成! 時代の転換点で夜明けの光景を期待したポルノグラフィティは、いま何を歌う?

 夜が明ける前の時分を意味する『暁』。そんな表題から直結したシンボリックなジャケットには大きな光の輪がデザインされている。そして、そんな光の輪を背にして立つ岡野昭仁と新藤晴一の佇まいは新たなステージへと歩を進める強い決意を身に纏っているかのようだ。ポルノグラフィティが待望のニューアルバム『暁』を完成させた。

 オリジナルアルバムという意味では、2017年10月の11thアルバム『BUTTERFLY EFFECT』以来およそ5年ぶり。もちろんその5年の間にも、2018年3月の「カメレオン・レンズ」を筆頭にシングルリリースは続いていたし、ツアーなどのライヴ活動もコンスタントに展開されていた。何より、記念すべきメジャーデビュー20周年を迎えた2019年の9月に東京ドームで2デイズ公演「20th Anniversary Special LIVE “NIPPONロマンスポルノ’19~神VS神~”」を行ったのは大きな出来事だったに違いない。また、コロナ禍に見舞われた2020年には初のハイブリッドライヴ「CYBERロマンスポルノ’20~REUNION~」を開催。その一方で、新藤晴一は多くのアーティストに詞や曲を提供してソングライターとしても活躍の場を広げ、岡野昭仁も多彩な顔ぶれとコラボするソロプロジェクトで歌い手としての表現を追求するなど、彼らはどんな状況であっても多様な形で音楽を届け続けてくれていた。

 そして、「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンスも話題になった2021年には、『ポルノグラフィティ 2021 “新始動”』と銘打って9月にシングル「テーマソング」をリリースすると、約2年半ぶりの全国ツアーとなる「17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”」を開催。同ツアーのファイナルとして12月22日に東京ガーデンシアターで行われた公演の模様は、ライヴ映像作品『17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”Live at TOKYO GARDEN THEATER 2021』としてリリースされた。そうした成果や経験から得た想いのすべてが今回の『暁』には込められているというわけだ。

 アルバムには先述の「カメレオン・レンズ」から「テーマソング」までの6つのシングル曲に、9つの新曲を加えた計15曲が収録。ライヴサポートも務めるtasukuをはじめ、篤志や立崎優介、田中ユウスケ、江口亮、トオミヨウ、宗本康兵といった馴染みの顔ぶれが楽曲ごとの共同アレンジャーとして作中に多様なバラエティをもたらしている。また、全曲の作詞を新藤が担当しているのも新たな試みだ。

 アルバムは壮大なイントロからスリリングに展開する表題曲「暁」でスタート。劇的なアレンジの激しさは、吐き出す言葉の強さにも直結している。そこからは妖美なポルノ節の真骨頂となる「カメレオン・レンズ」、伸びやかでアンセミックな「テーマソング」、さらに歪んだギターも激烈なラウドチューン「Zombies are standing out」(18年9月の配信シングル)といったお馴染みの既発曲が要所でキャッチーな存在感を発揮。生命力を注ぎ込むような「フラワー」(18年12月の配信シングル)、個々の在り方を肯定する「ブレス」(18年7月のシングル)といった人気曲も改めてアルバムの流れに溶け込むことでメッセージの強度を増しているかのようだ。

 それに負けじと新曲もそれぞれ野心的で、曲名からして興味を惹かれる物語調の「悪霊少女」、ストリングスをあしらったUKロック調の意匠と寓話的な詞世界が示唆的に絡む「ナンバー」、一転してデジタルなファンクビートで迫る「バトロワ・ゲームズ」、穏やかな曲調と相反して聴き手に理解を委ねた歌詞が広がる「メビウス」、無償の優しさをアコースティックに包んだ「You are my Queen」……といずれも表情豊か。アルバム後半のドラマ性をエモーショナルに深める「クラウド」では過ぎ去った日々を振り返り、ラグジュアリーな世界観を伸びやかに歌い上げた「ジルダ」、やるせない喪失感をウェットで壮大なメロディーに乗せた「証言」も聴き手の感情の奥底に触れてくる。ラストを飾るのは、過去を顧みつつも未来へ目を向けた劇的な「VS」(19年7月のシングル)。この配列にも深い意図が感じられるのは言うまでもないだろう。

 そのように新始動の気概を意欲的に反映し、タイトルに相応しい一枚となった『暁』。9月からは全国25箇所・29公演のツアー「18thライヴサーキット“暁”」も控えているが、まずは彼らの描いた夜明けの光景をアルバムから存分に体感してみよう。