Photo by Laura Lewis

2012年から2022年まで11年にわたり毎年開催されてきた野外フェス〈GLOBAL ARK〉が、約3年ぶりに復活を果たし、2025年8月29日(金)から8月31日(日)までの3日間、群馬・東吾妻のステキな村キャンプ場にて行われる。

今年は、電子音楽の飽くなき探究者であり、モジュラーシンセ使いの魔術師であるジェイムス・ホールデンがヘッドライナーとして登場。DJ、サウンドプロデューサーとしてボーダレスに活躍し、音楽シーンに影響を与え続けるジェイムスに、最近の活動や〈GLOBAL ARK〉に向けた現在の心境について話を聞いた。


 

屋外フェスに相応しい最新アルバムを引っ提げて来日

―今はどちらを拠点に活動していますか? また、最近のあなたの近況を教えてください。

「今はロンドンに住んでいるよ。幸運なことに、小さなスタジオを持つこともできている。ここ最近は僕のソフトウェア〈benny〉の開発に多くの時間を費やしていて、その操作を練習しているところ。それとアルバムの制作期間の狭間でもあるから、次に何をするのかを考えながら、新しいアイデアやアプローチを試行錯誤している最中でもある」

――前回の日本でのライブから約2年ぶり、そしてアルバム『Imagine This Is A High Dimensional Space Of All Possibilities』(2023年)をリリースしてからは初めての来日となります。今年の〈GLOBAL ARK〉ではアルバムの収録曲をプレイする予定でしょうか?

「イエス!  ついにアルバムの曲を日本へ持っていくことができて、本当に嬉しい。このアルバムは、ユートピア的なレイヴ精神、夢のような記憶をテーマにしているので、親密な空気を生み出せる屋外フェスで演奏するのにとても相応しいと思う。

自分のソロ作のライブを行うときは、少なくとも必ず1人はサポートミュージシャンを連れていくんだ。〈GLOBAL ARK〉では、僕と長年一緒に演奏をしてきているマーカス・ハンブルットがサポートしてくれる。彼は繊細なミュージシャンだけど、トリッピーなところもあるから、何が起きるか僕も今から楽しみだよ」

――今年はアルトクラリネット奏者のヴァツワフ・ジンペルとのアルバム『The Universe Will Take Care Of You』もリリースされましたが、ジンペルとのライブはどのような内容で行っていますか?

「ホールデン&ジンペルの作品は、ヴァツワフがいないと再現できない。彼は本当にユニークなプレイヤーなんだよ。彼とのライブセットは、僕たち個々のループシステムが相互作用する構成になっている。僕がライブを行うとき、例えばゲストがパーカッションを演奏する場合、僕は自分のことをやりながら相手のスペースを空け、音楽の方向性を変えられるようにしているんだ。それはメロディを演奏する人に対しても同じで、ライブを通じて互いに新しいインスピレーションを交換できるのは本当に素晴らしいことだと感じているよ」

――以前Ableton社のMax for Liveでモジュラーをコントロールするパッチ〈Group Humanizer〉を開発されていましたが、日本でも多くの音楽プロデューサーやサウンドクリエイターが活用しています。ミュージシャンによる微妙に揺れる生演奏のテンポに、モジュラーが追従・反応するソフトウェアですが、その後もさらなる進化を遂げているのでしょうか?

「〈人間のタイミング〉に関する研究は、僕自身の音楽の捉え方を変えた。僕が好んで使う、少し緩やかで浮遊感のある感覚を持つ電子音楽のシーケンスだけでなく、それ自体にも意味があることがわかったんだ。また〈人間のタイミング〉に関する論文で研究を行った科学者たちは、曲の中の特定のビートタイミングがその前に起こったすべてに依存することに言及した。だけど生演奏では、マイクロタイミングよりもはるかに興味深いことが起きるし、それがこのプラグインでも同じように当てはまる……曲(作品)の表現としてね。

Group Humanizerの開発を通じて、そうしたことについて深く考えることで僕は現在のポジションへと導かれたんだ。僕にとって最も重要なのは、音楽の生々しさだからね」

※編集部注 インストゥルメント、エフェクト、ツールなどライブパフォーマンスやビジュアル表現などで使用するデバイスを独自に作成できるプラットフォーム