ロンドンの女性シンガー・ソングライターによる待望のデビュー・アルバムはストイックな歌声の魅力もさることながら、自己破壊から希望の光に包まれた安全場所への旅を描いたという全11曲をさまざまに彩る曲ごとのアレンジも聴きどころだ。室内楽的なピアノと重厚なコーラスで荘厳さを醸し出したかと思えば、弾き語りに寄り添うバンドの演奏がグルーヴィーに躍動したり、トラッド・フォーク調の弾き語りにオルガンのドローン・サウンドを加えたりしてそれぞれの曲が持つ感情を際立たせる演出は、まさにドラマティック。圧巻は弾き語りに加えたコーラスがヒリヒリとした緊張感を生む“Fill”。そんなアレンジを主役自身と共に手掛けた新進プロデューサー、ステフ・アルチアーノの名前も記憶しておきたい。