星野沙織のバイオリンをフィーチャー、LIV MOONの世界を具現化したKAZSIN作“Never...”
――最初に届いた曲はどれだったんですか?
「KAZSINさんの“Never... ”です。歌詞も一番長い間、自分が何を書きたいか、じっくりと考えながら取り組むことができましたね。
ちょうどロシアとウクライナの戦争が始まるか始まらないかという時期でもあって、そんな思いも反映させた歌詞も書きたいなと思ってたんです。
私のバックグラウンドで言えば、父はポーランド出身のスウェーデン人であったり、母も韓国と日本のハーフだったり、どの国も戦争で辛い思いを経験しているんですよね。特にポーランドは地図上から自分の国が消えたり現れたり、それに関する父の思いも聞いていましたし。ただ、そういったことがもっと現実に近いものになってきていた。
そこでこの歌詞の世界観に関して、すごく情景が見えたんですよね、自分の中で。その意味でも、とても大切な1曲になりましたね」
――個人的に最初にアルバムを聴いて、最も印象深かったのがこの曲でしたね。特に歌詞には自分の思い、内から湧き出る力をすごく感じます。状況も見えつつ、歌い手の気持ちも投影されている。こういった歌詞はフィクションとして綴られるものも多いですが、あくまでもAKANE LIVの歌なのだ、言葉なのだと思わされます。
「ありがとうございます。時間をかけた甲斐がありました。やっぱり1曲目だったし、10年ぶりのフルアルバムだし、ちゃんと届ける歌詞を書きたいなというのはありましたね」
――KAZSINさんから届いた曲を聴いたときは、どう感じました?
「とにかくサビがよかったし、Aメロもドラマチックだなと思いました。それこそ私がLIV MOONを始めた当初から思い描いている、シアトリカル、シンフォニックな世界観をすべて具現化してくださってるなって。
キャッチーって言葉が簡単に使われてしまうし、私も簡単に言いがちなんですけど、KAZSINさんは素晴らしいメロディーメイカーなんですよね。“Kiss me Kill me”(2012年発表の『Symphonic Moon』収録)もそうですけど、一度聴いたらとても胸に突き刺さる。
映画音楽的な要素をすごく持ってる作曲家だなと思うんです。作られる世界観もとても広いなと思っていたので、それに合うような歌詞を書きたいなとも思いますし。
KAZSINさんからは〈また3拍子になっちゃいました〉って言われたんですけど(笑)、〈3拍子、大好物なんで大丈夫です〉って答えて(笑)」
――そこで名曲が生まれてくるんですよね。イントロにはハープのような音が流れていますね。
「そうですね。これはバンドサウンドを想定する前に発注したものだったので、他の楽曲と比べると打ち込み系が多いんですよ。でも、それはこの世界観を表すためには必要なものですからね。
この曲でのISAOさん(soLi)のギターも想像していたとおりにすごくよくて、この世界観に新たな強さとエネルギーを加えてくれて。参加してもらえてよかったなと思いますね」
――ISAOさんが弾く前の段階で、ヘヴィなギターの音は入っていたんですか?
「入ってました。でも、ISAOさんが弾いたことで、もっと血と肉が通った感じがしますね。
本当に参加してくださったみなさんが素晴らしくて、〈初めまして〉だったISAOさん、原澤秀樹さんとも個人的に今回のアルバム作りでコミュニケーションを取っていたんですけど、懐の深さと温かさを感じましたし、LIV MOONの久々のアルバムを、どうにかもっとよくしたいっていう思いで参加してくださってたのが、ホントに嬉しかったですね。ちょっと心が折れそうな、いろんなことがあった中でも支えてもらいました」
――“Never...”は間奏のボーカルとバイオリンの掛け合いも惹きつけますね。
「そうなんです。私の書いた物語では、バイオリン奏者の少女と元歌手であった母親が登場することもあって、KAZSINさんには〈沙織ちゃんのバイオリンをフィーチャーした楽曲にしたい〉と伝えてあったんですね。
だから、2人の掛け合いがあったり、本来だったら他の楽器のソロが来るところにバイオリンソロが来たり、楽曲としてもすごく面白みがありますね。バイオリンの音色って、すごく心に響くんですよね」