国際的に高く評価された傑作『アダンの風』(2020年)以来となるニューアルバム『Luminescent Creatures』を2025年2月28日(金)に発表する青葉市子。リリースに先駆けて新作を10名のバンドで再現する、という驚きのコンサート〈ICHIKO AOBA “Luminescent Creatures” World Premiere〉を開催し、大盛況のなか終えた。来年には〈ICHIKO AOBA 15th Anniversary Concert〉とその追加公演、そしてアジア・ヨーロッパ・北米を回る大規模ワールドツアーの開催も控えており、目が離せない活動を繰り広げている。今回は、そんな青葉の『Luminescent Creatures』世界初演コンサートの模様をお届けしよう。待望の新作の内容を少しでも伝えられたら幸いだ。 *Mikiki編集部
※本文は2024年10月26日の東京・昭和女子大学人見記念講堂公演についてのものですが、写真は10月19日の大阪・サンケイホールブリーゼ公演のものも使用しています
柔らかな歌と演奏が海を想起させる静的な1部
来年、2025年2月に新作『Luminescent Creatures』を発表する青葉市子。アルバムに収録される全曲を、ひと足先にコンサートで披露するという試みが10月26日に東京・昭和女子大学人見記念講堂で開催された。この日のメンバーは青葉を含む10人。2020年に発表した『アダンの風』で作編曲の共作者として大きな役割を果たした梅林太郎(ピアノ他)をはじめ、水谷浩章(コントラバス)、梶谷裕子(ヴァイオリン)、銘苅麻野(ヴァイオリン)、坂口昂平(ヴィオラ)、平山織絵(チェロ)、多久潤一朗(フルート)、朝川朋之(ハープ)、角銅真実(パーカッション)といった面々だ。
コンサートは2部構成になっていて、第1部は『アダンの風』収録曲やシングル曲が中心。舞台には珊瑚礁のようなセットが置かれていて、『アダンの風』の舞台になった南の海を思わせる。そこに現れた演奏者たちは白い衣装を身にまとい、まるで珊瑚のかけらのようだ。1曲目は2023年に発表したシングル曲“Space Orphans”。青葉の柔らかな歌声がホールの空間にゆっくりと溶けていく。
第1部は静かな曲が中心で、青葉は曲によってはギターを奏でながら歌い、仲間たちが様々な音を添える。歌とストリングスが中心となった“Asleep Among Endives”“Seabed Eden”を続けて聴いていると、深海をふわふわと漂うような心地よさ。“Dawn in the Adan”ではシンフォニックな演奏が生み出す海流のようなうねりがホールに満ち溢れていく。そして、最後に“アダンの島の誕生祭 / Luminescent Creatures”を披露。曲が終わると、青葉は「この10人で最後に演奏したのは2021年の夏至だったからもう3年も前なんですね」と感慨深けに振り返り、「3年の間にコツコツたくさんの準備をしてきました。2部では新作の楽曲をすべて演奏しますので、私たちの歩みを見届けていただけたら嬉しいです」と観客に声をかけた。
ここで休憩時間が20分はいるのだが、その間、ステージ上のセットが積み上げられて、それが大きな木の幹のようになる。それを見て頭に浮かんだのは、様々な神話に登場する天界と地上をつなぐ大木=世界樹。これから一体、どんな世界が展開するのかワクワクさせられる。