木根尚登

これまで計7冊とシリーズ化されている「電気じかけの予言者たち」。最新作では、小室哲哉衝撃の引退宣言から再起動後の40周年ツアーまで、激動の6年間が書かれている。それこそ、音楽アーティストが自身の活動をメンバーの会話や心情含め、ここまで赤裸々に記録することは世界的にみてもレアなケースだ。まさに、ユニット名の由来でもある〈タイムマシンネットワーク〉による時空を超えていく冒険の最新レポートである。そこからは友情の大切さ、チームマネージメントの秘訣など、長き制作活動やツアーを経て蓄積されたノウハウが読み取れる。木根尚登に執筆秘話を聞いてみた。

木根尚登 『電気じかけの予言者たち -再起動編-』 リットーミュージック(2025)

 

小室哲哉の引退宣言から始まる衝撃の「再起動編」

――「電気じかけの予言者たち -再起動編-」で、シリーズ7冊目となりました。

「こんなに続くとは思わなかったよね。あれ、そもそも、なんで書くことになったんだっけ?」

――1994年にTMNの終了があって(その後、1997年12月に再結成を発表)。TMって、1984年にメジャーデビューしましたけど、それ以前の結成秘話などを語ってこられなかったじゃないですか?

「そうそう。当時はTMをかっこよく見せるために、前身バンドのSPEEDWAYのことや、苦労ってワケじゃないけどデビュー前や、売れる前の話はしていなかったんだよね。SPEEDWAYは前のレコード会社さんがTMがブレイクした結果、突然過去作を再発したので知られることになったけどね。

そんなことがありながら、1994年に東京ドームでTMNの終了ライブ〈TMN 4001 DAYS GROOVE〉を2日間行って、満を持してというワケではなかったんだけど、当時のことを『電気じかけの予言者たち』として書き始めたんだよね。それからは再始動するたびに詳細に書き残してきました」

――今から考えると、あのときは7冊も続編を書くなんて思ってなかったですよね。

「ないない(笑)。だって、あれでTMNは終了だったんだから」

――7冊ってすごいことだと思います。1つのバンドでメンバー自身がドキュメンタリーを書き続けているって、世界的にも類を見ないんじゃないですかね。

「たしかに聞いたことないよね。ずっとバンドのことを書いてますから。個人が自分の自叙伝を書くっていうのはまだあるかもしれないけど、バンドについて何冊もというのは珍しいかもしれない」

――それこそ、読み進めていると、音楽のみならず組織運営やコミュニケーション論、マーケティング論にも結びついていきますし、実はいろんな方々に影響を与えられる本となっています。

「そうなっていたら嬉しいよね。僕は、そんな実感はないけど。それこそ、自分の視点で書き続けてきただけだから」

――今回、書き初めは2018年1月19日。小室さんの引退宣言のシーンから始まる衝撃のスタートとなりました。その後、復帰されましたが。

「そうなんだよね。ひさしぶりに書き始めたとき、どんな内容にしようかとプロットを打ち合わせした際に、再始動へつながるのは引退宣言からだって話になって。〈あ、そういえば引退していたんだっけ?〉って。時が流れていくのは早くて恐ろしいなって思いましたね。あれだけ話題になったけど、こっち側にいた人間でさえも〈そうだったっけ?〉って言ってるんだから、世間だってそうだもんね」

――あの日、僕はエイベックスの会議室で宗村直哉さん(スタッフ)と打ち合わせをしていて。小室さんが違う階で記者会見をやっていたんですよ。

「そっか。そういうのをふくりゅう君(インタビュアー)に事前に取材していたら織り込めたかもしれないね。あ、でも、そうすると本が上中下みたいに分厚くなっちゃうかな(笑)」