これまで計7冊とシリーズ化されている「電気じかけの予言者たち」。最新作では、小室哲哉衝撃の引退宣言から再起動後の40周年ツアーまで、激動の6年間が書かれている。それこそ、音楽アーティストが自身の活動をメンバーの会話や心情含め、ここまで赤裸々に記録することは世界的にみてもレアなケースだ。まさに、ユニット名の由来でもある〈タイムマシンネットワーク〉による時空を超えていく冒険の最新レポートである。そこからは友情の大切さ、チームマネージメントの秘訣など、長き制作活動やツアーを経て蓄積されたノウハウが読み取れる。木根尚登に執筆秘話を聞いてみた。

小室哲哉の引退宣言から始まる衝撃の「再起動編」
――「電気じかけの予言者たち -再起動編-」で、シリーズ7冊目となりました。
「こんなに続くとは思わなかったよね。あれ、そもそも、なんで書くことになったんだっけ?」
――1994年にTMNの終了があって(その後、1997年12月に再結成を発表)。TMって、1984年にメジャーデビューしましたけど、それ以前の結成秘話などを語ってこられなかったじゃないですか?
「そうそう。当時はTMをかっこよく見せるために、前身バンドのSPEEDWAYのことや、苦労ってワケじゃないけどデビュー前や、売れる前の話はしていなかったんだよね。SPEEDWAYは前のレコード会社さんがTMがブレイクした結果、突然過去作を再発したので知られることになったけどね。
そんなことがありながら、1994年に東京ドームでTMNの終了ライブ〈TMN 4001 DAYS GROOVE〉を2日間行って、満を持してというワケではなかったんだけど、当時のことを『電気じかけの予言者たち』として書き始めたんだよね。それからは再始動するたびに詳細に書き残してきました」
――今から考えると、あのときは7冊も続編を書くなんて思ってなかったですよね。
「ないない(笑)。だって、あれでTMNは終了だったんだから」
――7冊ってすごいことだと思います。1つのバンドでメンバー自身がドキュメンタリーを書き続けているって、世界的にも類を見ないんじゃないですかね。
「たしかに聞いたことないよね。ずっとバンドのことを書いてますから。個人が自分の自叙伝を書くっていうのはまだあるかもしれないけど、バンドについて何冊もというのは珍しいかもしれない」
――それこそ、読み進めていると、音楽のみならず組織運営やコミュニケーション論、マーケティング論にも結びついていきますし、実はいろんな方々に影響を与えられる本となっています。
「そうなっていたら嬉しいよね。僕は、そんな実感はないけど。それこそ、自分の視点で書き続けてきただけだから」
――今回、書き初めは2018年1月19日。小室さんの引退宣言のシーンから始まる衝撃のスタートとなりました。その後、復帰されましたが。
「そうなんだよね。ひさしぶりに書き始めたとき、どんな内容にしようかとプロットを打ち合わせした際に、再始動へつながるのは引退宣言からだって話になって。〈あ、そういえば引退していたんだっけ?〉って。時が流れていくのは早くて恐ろしいなって思いましたね。あれだけ話題になったけど、こっち側にいた人間でさえも〈そうだったっけ?〉って言ってるんだから、世間だってそうだもんね」
――あの日、僕はエイベックスの会議室で宗村直哉さん(スタッフ)と打ち合わせをしていて。小室さんが違う階で記者会見をやっていたんですよ。
「そっか。そういうのをふくりゅう君(インタビュアー)に事前に取材していたら織り込めたかもしれないね。あ、でも、そうすると本が上中下みたいに分厚くなっちゃうかな(笑)」
藤井徹貫との約束
――6年間ですもんね。「電気じかけの予言者たち」では、記録の視点が木根さん視点にフォーカスしているのが、TMらしいですよね。それこそ、物語には小室さん視点、宇都宮(隆)さん視点と、それぞれ見方があるなか、木根さん視点でのドキュメンタリーで、想像も含まれながら、読み物として軽快な語り口で書かれています。まるで木根さんがしゃべるのを聴いているような、木根さんと対話しているような感覚になるんです。TMNETWORKを後から好きになった方が後追いで読んでも詳細なヒストリーに追いつけるというか、コアファンへの入り口というか、まさにファンダムの教科書となっています。ある種、発明だと思いますね。
「それは嬉しいですね。でも、これまでは、ライターの藤井徹貫さんがずっとサポートしてくれていたから書けたんです。でも、2023年5月に旅立ってしまったから……。今回、出版のオファーが来たときに〈いやいや、無理でしょ〉と。曲は書けるけど、アレンジする人が……みたいな感覚で」
――うんうん。
「それくらい安心して書いてましたから。誤字脱字があろうが、言葉を間違えていようが、徹貫が全部チェックして直してくれて。物語がつまらないと思ったら〈このくだりいらなくない?〉みたいな提案もしてくれていたので。なので、今回は書き始めるときの気合というか、モードが全然違いました。自分では〈本当によく書けたな〉って感じです」
――それこそ、徹貫さんとの約束でもあった、フォークをテーマとした木根さんのソロコンサート〈中央線〉ツアーも無事にすべてやり終えた心境はいかがでしたか。素敵なトリビュート、追悼となりました。
「3回忌ということで、一昨年、訃報を聞いてからずっとアルバム『中央線』のツアーを中央線沿線のライブハウスでやりたいなと思っていて。これね、不思議なんだけど、徹貫と〈いつかやろうよ〉って約束をしてから、僕は一言も誰にも言ってなかったんだよね。そんななか、〈『中央線』をアナログ盤で出さない?〉って話があって、〈えっ!?〉って思って。それで、〈なるほど!〉って思ったんだよ。それこそ、徹貫が何かしてくれたのかなと思うくらいで」
1000%無理から始まった執筆活動
――徹貫さんの存在は、いつまでも共にあるのですね。TMNETWORKとしても40周年イヤーでの活動が詳細に書かれていました。木根さんもたくさんのチャレンジをされていました。
「チャレンジっていうと、1989年に最初に書いた小説『CAROL』のときからずっとそうだったね。僕としてはプレッシャーがあったというか、〈1000%無理〉から始まったから。
『CAROL』はアルバムのロンドンレコーディングのときに書き始めて、結局、それでは書ききれなくて、ツアーが始まっちゃったんだよ。ツアーの前に出版するはずだったのに、間に合わなかったんです。〈じゃあ、発売日をツアー後にしましょう〉となって、あのときは〈ツアー中に書くしかない!〉って、ライブ後にホテルに戻って、頭を切り替えてずっと書いていました。ギリギリのときは、開演5分くらい前までホールの畳の部屋を借りて書いていたりして。小説家の人たちみたいに、間違えたらくちゃくちゃって原稿用紙を捨てられたらいいのに、貧乏性だから消しゴムで消して」
――当時は、消しゴム片手に鉛筆を削って書いていたのですね。
「ワープロはあったけど、手書きで書いて。あれからスタートしたから、執筆は音楽と並行できるんだって思えたんだよ。今回も、それは苦じゃなかった。逆にみんなに〈あれどうだったっけ?〉ってリハーサル中に聞けたり、〈今ここ書いてるんだけど〉って話せば、〈いやいや、あれはこうだよ〉って教えてくれたり。それこそ、小室やウツのセリフも僕が書いてるわけですから、思い込みがあったり、完璧なノンフィクションではないんですよね。ある種フィクションがあって、そこはね、僕が唯一楽しめるところなんですよ。バカなこと、くだらないことを書いて、そういうところを楽しんでペンを走らせられたというか」
〈音と映像〉にいち早く取り組んだバンド
――思えば、TM初期の時代に監督とか脚本とかもクレジットされていましたよね。
「ああ、ラジオもやったね。『TM NETWORK物語』っていう東海ラジオ『SFロックステーション』の番組で僕が脚本を書いて。ウツと僕とマネージャーと、他のミュージシャンとか、今はB’zの松本(孝弘)とかが登場して。あれを見て、小室は僕に〈小説を書いて!〉って思ったんじゃないかな、今思えば。冒頭で局アナの人に情景描写とかのナレーションを入れてもらったり、そういうのをやってました。あれが本当に元祖かもしれない」
――あと、エピック・ソニーのビデオコンサート〈BEE〉で上映した「日本一のバンド男」とか。
「あ、それね(苦笑)。恥ずかしい。やったね。あれはエピック・ソニーの坂西伊作が〈木根ちゃん面白いから、なんかやろうよ!〉みたいなノリで発生して。懐かしいなあ」
――映像で表現するなど、今は音楽界隈もメディアミックスの時代になってきましたけど、TMは本当にその実験的な走りというか。
「それは、やっぱり小室さんがね、〈音と映像、音と映像〉って、ずーっと言い続けて。それで、TMはデビュー前にコンテストを受けたときに、レコード会社8社が全員手を挙げてくれたものだから選べたんですよ。エピック・ソニーはマイケル・ジャクソンをやっていたので、〈ミュージックビデオをやろうよ!〉みたいな流れから、〈音と映像〉っていうのをいち早くやってましたね、TMNETWORKは」
――それで言えば、今年(2025年)、TMはドキュメンタリー映画「TM NETWORK Carry on the Memories -3つの個性と一つの想い-」を上映しましたけど、それこそ、いつか「電気じかけの予言者たち」が原案となり映画化されてもおかしくないですもんね。
「映画ね……。最近、海外で流行ってますもんね。小室役は、誰がやるんだろ? そんなことがあったら、嬉しいかもしれないね」
TMの話し合いに〈青春ドラマ〉はない
――ちなみに、ツアーで口火を切った40周年イヤーに配信された無観客ライブ〈How Do You Crash It?〉では、初めて3人だけでステージに立つ選択をされました。その後、シリーズ化された〈FANKS intelligence Days〉ツアーも基本的にはステージに3人だけでした。その決断は本のなかでは事後報告的に「決まった」の一言くらいしか書かれていませんでしたが、「3人だけでやろう!」と会話された瞬間って、どんな感じだったんですか?
「これねえ、僕らは大体そうなんですよね。〈よし、やろうか!〉と決め込んでいく感じではなくって、気がついたら決まっているんですよ。……なんでしょう、この感じはね。1994年に終了するときも、〈みんなで一晩中話し合った結果、僕たちはこう決めました!〉なんていうことでは全然ないんです」
――それが、TMらしさですもんね。
「今回も、コンサートをやるとしたら、僕ら3人だけではないじゃないですか? やっぱりウツの事務所エム・トレスとか、小室の会社、僕は個人ですけど、周りの人もいるわけで、そのなかからなんとなくの一言が出てきたりするんです。で、全部をその通りに書いたとしても、ダラダラしてるんですよ(苦笑)。決して、かっこいい瞬間みたいなものはなくって。〈あのとき、そういえばみんなで海に行ったよね。そのとき、夕日を見ながら〈もう1回僕たちやらない?〉みたいに考えてたんだよ!〉みたいな、青春ドラマ的なことは一切なくって(苦笑)。本当にね、書けない、書かないんじゃなくて、思い当たらないというか、いつそうしたかっていうのが、わからないんです(苦笑)。
コロナ禍だったから無観客ライブで配信をやるってなって、当然、〈バンドはどうする?〉って話になったと思うけど、小室が〈とりあえず、3人がいいかな〉って言ったんだろうね」
――たしかに、環境や状況にもよりますよね。
「でも、実は3人だけでステージに立ちたいというのは、小室のTMデビューからの一貫してブレない部分なんですよ。サポートメンバー含めてバンドスタイルでやりたいというのはウツだったり、僕だったり、周りのスタッフだったり、バンド好きの人たちの意志のほうが強かったんじゃないかな。ウツなんか、歌っていてギターが歩み寄ってきて背中合わせで……みたいなアクションが好きだから、そっち側の熱がちょっと強い時代があったもので。でも、小室は、ずっと〈3人〉なんですよ。デビューしたときも、僕は〈ずっとバンドにしよう〉って言ってたのに、彼は〈いや、3人がいい〉って。で、いよいよ、ちょっと自我を通したのかなって」
――必然であり、いいタイミングだったのでしょうね。
「うん。その流れに僕もウツも乗っかって、2人とも反対はしないから。そうすると、〈デビュー当時に戻ったみたい〉って感じるんですよ。その反面、楽器の部分で僕はすごく不安を抱くわけで(苦笑)。ギターはどうすんの?って。でも、それも小室はわかっているから、〈じゃあ、ここは弾いてよ〉なんて指定してくれて、また新しいチャレンジが始まっていくという。それはそれで楽しかったりしますけどね」

〈ウーパールーパー〉を使おう
――小室さんがコンセプトを考えながらも、木根さんは木根さん、宇都宮さんは宇都宮さんのフィルターを通して、結果、独自のTMらしさが方程式のように生成されていくいい関係なんですよね。
「それは大きいですね。デビューから決まっていた関係性なので。そのときは、おぼろげというか、そんなに確信はなかったけども、今思えば、こうやって長い間やってきて、ずっとお互いのいいところを認め合っている3人というか。〈ここはウツだね〉とか〈ここは木根でしょ〉とかって、ずっと言い合っている。リスペクトとかは口には出さないけど、そんな暗黙の了解で40年間やってきた感じがあって。〈これは木根に任せておけば、木根のTMになるでしょ〉みたいにね」
――まさしく。この書籍「電気じかけの予言者たち -再起動編-」の存在もそういうことですね。それこそ、小室さんの引退宣言の流れで、ウツさんがソロツアーでTMの曲を演奏されたり、トリビュートライブもTM軸でなさったり。ウツさんがギアを上げたというか、引っ張った感じが印象的でした。
「それは2人で話し合ったことでもないし、ウツはそういうことを言わないから、そんな話を全然しないんだよね。それが、ある日ツアーを観に行ったときにソロでTMの曲をやっていて、僕も僕なりに感じることがあって。〈やるだけのことはやろうよ〉っていう思いが、なんとなくあったんだよね。話し合って熱く語ったりはしないんだけど。太陽系でいうところの惑星の配置の関係性のように、距離を置きながらもずっと続いているのが、この3人なんだよね」
――2000年頃、プログレ的な〈Major Turn-Round〉のツアーでは、メールでのやりとりをライブ映像に活用されたことがありましたけど、今回の書籍化でキーとなったのがメンバー間、それこそスタッフ間もですけど、LINEでの会話だったそうですね。それが残っていたことを、執筆するうえで活かされているとか。
「それが7作目にして、一番助かった。それこそ、LINEに残っていた〈何月何日に……〉っていうのが、ひとつの軸となりました。ライブのリハーサルとかをやっている間に、水面下で音源のやりとりがあったりね。それは、手帳にメモするだけでは残せないやりとりだったりするんですよ。本当にLINEさまさまでした」
――改めて、印象的だったLINEでのやりとりってありますか?
「嬉しかった、印象に残ってるのは……〈ウーパールーパー〉かな(苦笑)。ルーパーというサンプラーのような機材を使うことを小室から提案されたんだけど、よくわからないから本当にウーパールーパーだと思ったエピソード(笑)。
あと、ツアーのゲネだったかな、初日かな、ライブ音源を聴いて、すぐに小室さんからLINEが来て、〈木根さん、いろんなことをやってくれてるんだよね〉って言ってくれて(笑)。僕が勝手にやってるみたいな文面だったけど、小室に言われたことを全部一生懸命やってるだけなんだけど(笑)。〈助かるよ。本当にすごい。ありがとう〉って言うから、〈なんなんだろう、この人は〉と思ったな(笑)。でも、褒めてくれているから、嬉しかったよね」
TM流チーム論は距離感と平熱を保つこと
――バンド論にも通じるところだと思ったんですけど、マネージメントの立岡正樹さんを中心にコード譜や連絡先一覧、ツアー台本みたいなものを作っていらっしゃると本には書かれていて。それって、けっこう面白いことだなと。
「僕らはずっとバンドの中にいるものだから、それが当たり前になっているんだけど。たとえば、ウツのサポートに来たメンバーとか、〈30年この仕事してるけど、こんなことをしてもらったのは一度もないよ〉って言う人たちを見て、〈あ、うちだけの珍しいことなんだな〉って。僕らはそれに慣れちゃってるけど、そのことによって共通認識がブレなくなるワケで、工夫してくれていてありがたいなって」
――TMならではのツアーの巡り方のなかで、継承していきたいことや大事だと感じることってありますか?
「熱を上げずに距離を置いて楽しくやる。これで40年やってきたから。誰か1人の温度が上がりすぎちゃったりすると、誰かが冷めちゃったりとか。それは、スタッフも含めてね。だから、誰か1人が〈ワ〜〉ってなると〈ん?〉ってなったりとかする。熱を本当にいいところ、36.2℃くらいに抑えながら、常にいい距離感を保つこと。それが、長く音楽活動を続けていく秘訣というか。
よくね、ツアーが終わって、みんなで温泉旅行をしている人たちがいるんだよ。それって、あまり長続きしないような気がする。あ、わからないよ、僕がそう思うだけだから。僕たちはそれをやったら終わるだろうな(苦笑)。っていうか、ウツが〈なんで俺、小林(亮、マネージャー)と温泉行かなきゃなんないんだよ〉って言うだろうね(笑)。それぐらいが、本当にいい関係性なんだと思うんだよ。もちろん年齢や環境、人によるとは思いますけどね」
――企業のチームマネージメントや組織論で、採用やチーム作成のときの大事な要素にそんな側面があるそうですよ。今の時代、それは証明されているという。
「なるほど。僕らは計画的じゃなくて、結果。考えてみたら、そこかなっていう。〈よく3人の仲がいいのは、どうしてですか?〉って聞かれて、ウツが〈居心地がいいのかな。嫌だったら一緒にいないし〉みたいに言ってて。でも、それ以上でも以下でもないんだよね」
小室が僕をイメージして作った曲を歌うのは面白いなって
――今回の本は、この6年間のTMNETWORKの活動の歴史を一気に読める一冊となっておりますが、ひとつ大きな軸となったのが木根さんのソロコーナーの代わりに小室さんと歌い始めたツアーでの3部作“Show My Music Beat”、 “Good Morning Mr.Roadie”、“Carry on the Memories”です。それがツアー中に発展していって、結果的にウツさんが歌うことでTMのニューシングルになったという。
「なったね!」
――きっと最初は、そんなことを考えていなかったと思うんですけど。
「ほんと、すべてそうだよね。さっき話したことの最たるものだよね」
――フォーク調の歌詞も、これまでTMではやっていなかった表現スタイルで。でも、MCをしないTMでのコンサートでは、その代わりとなる機能性を持ったナンバーとなりました。
「そこも発端は僕ですよね。ルーパーを使ったり、ギターソロもいろいろやったり、ひとりでアカペラっぽく歌ったり、ソロコーナーでやることを、僕のなかですべてやりきって。僕が〈ソロなくていい?〉って聞いたら、小室が〈なんか歌えば〉って言って。でも、〈TMで自分が歌っている曲は2曲しかないし〉と返したら、〈じゃあ、作るよ〉って言い出して。自分で作った曲を歌うんじゃなくて、小室が僕をイメージして作った曲を歌うのは面白いなって思ったんだよね」
――“Show My Music Beat”、大好評でした。
「その後、小室に〈もっと一緒にやらない?〉って話して、〈じゃあ2人でやろうか〉って作ったのが“Good Morning Mr.Roadie”。それは、僕が〈あのコーナーでさ、もしまた2人でやるんだったら、ローディーの歌にしない?〉って言ったの。千秋楽のコンサートが終わった、翌朝にLINEしたんだよね。返ってきた言葉は〈すごいね、乗ってるね〉。
3作目“Carry on the Memories”も、前2作を踏まえて、このままいったらTMの大事な存在の曲のひとつになるかなって思って、小室は3曲目をちゃんと作ったんじゃないかな(笑)。イメージは、フォークだったんだよね」
――ヒューマンなナンバーですよね。そういえば本に書かれていましたけど、“Whatever Comes”のイントロのギターを木根さんに弾いてもらうために、小室さんがショッキング・ブルー“Venus”に例えて説明しているところも最高だなと思いました。
「だいたいそうです(苦笑)。僕のことを小室は全部知り尽くしてるから、〈これなら好きでしょ〉っていうのを、ちゃんとわかりやすい例えで説明してくれるんです。それで、〈あ〜、あれね〉っていう。しかも、プロデューサーとしてね、ありがたいことに毎回コンサートで見せ場を考えてくれるわけですよ。で、〈今回はギタリストが1人しかいないから、これだったら、かっこよく見せられるんじゃない?〉って、あんなにたくさん照明を僕に当てていただいて。ありがたいことですよ」
初めてファン以外にも読んでほしいと思った本
――木根さんは謙遜しますけど、ほんとにかっこいいシーンでした。そんな茶目っ気がある小室さんとのやりとりの小ネタも本ではたくさん書かれていましたね。TMってライブではMCをしない分、ウツさんが歌う歌詞や映像表現から伝わってくる人柄・キャラクターがもちろん大きいんですけど、オフやインタビューなどにおける会話でのやりとりの面白さや人間性、関係性が織りなす表現も魅力なんですよ。それが、今回の本では見事に表れていました。
「ありのままをただ言葉にしているだけなので。でも、それがいいのかもしれないね」
――小室さん、どんどん面白いことを言いますよね。
「ウツはウツで、ウツのキャラがあるんだけど、小室は本当に驚かせてくれるというか、想像できないことを言ってきたりもするから。だから、長く付き合えるんだなって。それは彼のすごさだよね。
それこそ、TMNETWORKっていうグループを知っていて、小室哲哉の存在を知っていて、でも、なんとなくテレビで観たり聴いたりしたことがあって、他はよく知らないっていう人たちにもぜひ読んでもらいたいなって。この本から僕らのことを知ってもらえたら嬉しいですよ、特に今回は。今まではFANKS(TMファン)へ向けた〈実はこうだったんだよ。今はこうだよ〉っていうお手紙みたいな小説だったかもしれないけど、今回はちょっとそうじゃないので。うん、初めてファン以外の方にも読んでほしいなって思いました」
――TMNETWORK向けの新曲は書いているんですか?
「曲は作ってます。ツアーでやるかはわからないけどね。あとは、新しい楽器を演奏するチャレンジをしていますよ。今年の春のツアー前にラジオへ出たとき、3部作の3曲目で〈木根さん、縦笛吹けない?〉って、小室に言われて(苦笑)。そのときは〈えっ、苦手なの、縦笛。ハーモニカは得意だけど〉って返したら、〈木根さん、何か新しい楽器にチャレンジするんですか?〉って質問が来て、〈もしかしたらやるかもね〉ってぽろっと言ってしまい。それが、結局なくなったんですよ。で、ツアーが終わったら〈新しい楽器にチャレンジするって言ったのに、やらなかったですね〉と言われて。なので、今回はたぶんやりますよ。リハーサルでやってクビにならない限り、やると思う(苦笑)。わからないけどね」
読んだ本より書いた本の方が多い
――楽しみにしています。では、今回書籍を発売されたということで、最近、何か読んだオススメの本などがありましたら教えていただけますか?
「基本的に活字を読むことは、小さいときから苦手なんですよ。これまで読んだ本より自分が書いた本の方が多いくらいで(苦笑)。性質としてせっかちだからかなあ。行を飛ばして読んじゃうもん、平気で。でも、本を書くとか関係なく、本くらい読まなきゃって思ったことがあって、年に何冊かは読んでいるかな。努力じゃないけど、読むことに慣れたいと思って読んでいます」
――本を書くとき、参考にするために読むこともありますよね?
「それこそ『CAROL』を書いたときはミヒャエル・エンデの作品を読みました。そんな意味では、わりといろんな本を読んでいますね。日本の歴史を描いた『永遠の都』(加賀乙彦)だったり、アルベール・カミュの『ペスト』は、それこそコロナ禍だったから読んで。今と全く同じ状況が昔も起きていて、読んで驚いたね。あとは、SPEEDWAYのディレクターだった大小説家の今野敏さんが本を送ってくれるんですよ。本屋大賞の作品も好きで、けっこう読んでます。はずれがないし、映画にもなっていたな。読んだ本のタイトルは忘れちゃったけど(苦笑)」
――ははは(笑)。
「というわけで、みなさん『電気じかけの予言者たち -再起動編-』をぜひ読んでみてください。よろしくお願いします!!!」
BOOK INFORMATION

発売日:2025年12月1日(月)
定価:3,080円(税込)
CONTENTS
第一章 突然の引退宣言
第二章 3人だけで臨んだFANKS intelligence Days
第三章 40周年に向けて1 DEVOTION
第四章 40周年に向けて2 STAND 3 FINAL
第五章 40周年に向けて3 YONMARU 07 カレンダー
PROFILE: 木根尚登
1957年、東京都生まれ。1983年に小室哲哉、宇都宮隆とTM NETWORKを結成し、翌年アルバム『RAINBOW RAINBOW』でデビュー。TM NETWORKは1987年のシングル“Self Control”“Get Wild”など多数のヒットを生み出した。一方、木根は1980年代から作曲家として活動し、渡辺美里、浅香唯、南野陽子、最近では氷川きよし、SKE48などに楽曲提供を行う。また作家としても1989年に「CAROL」を上梓。40万部を超すヒットとなる。ソロとしては1992年に1stアルバム『Roots of The Tree』を発表。以降、ソロアーティストとしての活動も続け、2025年9月12日はアルバム『中央線』のアナログレコード化を果たし、同日から〈木根尚登弾き語りツアー2025「中央線沿線物語~藤井徹貫に捧ぐ〜」〉を開催。