(左から)beja、米光椋、尾崎勇太、赤瀬楓雅

2020年5月に始動し、早々にFUJI ROCK FESTIVALの〈ROOKIE A GO-GO〉への出演も果たした4人組バンド、Khamai Leon。1stアルバム『hymn』(2022年)から丸2年を経て、2024年5月8日、2ndアルバム『IHATOV』をAPOLLO SOUNDSよりリリースした。

東京藝大・昭和音大卒のメンバーが集まったKhamai Leonには、演奏技術の高さやクレバーな発想に圧倒されるだけでなく、人間的な本能と、社会に対する違和感をなんとか打破して生きていこうとするパッションを記録した音に身体と心を突き動かされる。

憧れていたロックシーンに足を踏み入れて、〈理想郷〉を表す宮沢賢治の造語〈イーハトーヴ〉をタイトルに掲げた2ndアルバムを完成させるまでの2年間、Khamai Leonが抱いた困惑や闘志、そして悦びについて語り明かしてくれた。

Khamai Leon 『IHATOV』 APOLLO SOUNDS(2024)

 

ロックシーンでの疎外感・違和感・コンプレックス

――前作『hymn』がKhamai Leonにとってどんな作品であったか、その上で、2枚目はどんなアルバムを作ろうとしたのかを聞かせてもらえますか。

尾崎勇太(ボーカル/フルート)「そもそもKhamai Leonは、ミュージシャンとして生きていこうとしている人たちが、コロナ禍に入ってやることがなくて〈どうしよう〉となっていたときに、4人で心を支え合って動き始めたバンドで。

赤瀬はジャズ、他3人はクラシック出身なんですけれども、それぞれがいた世界で閉塞感や違和感を常に抱いていて、それに対して自分たちはどうするのかということを形にしたのが前作の『hymn』でした。

リリース以降、幸いにも思っていたより注目が集まって、フジロックにも出させていただいたり、予想以上に早く自分たちが望んでいたライブシーンに入っていくことができたんですね。

とはいえ、ロックシーンのバンドと音楽的に似通ったものを作っているわけではなかった。言うなれば、他のバンドと一緒にやったとき、〈ああ、自分たちの音楽って全然違うねんな〉っていう、ある種の疎外感みたいなものがありました。憧れていた世界に入っていくことができるようになったものの、思っていた以上に自分たちが持っているものはそもそも違うんだなと、コンプレックスを感じる期間でした。1作目を作ったときの疎外感や違和感とベクトルは違えど、結局、同じような感覚が自分たちの中に残ってしまっていたんですね」

――藝大・音大生として感じていた違和感から、バンドシーンや音楽業界の中に立って感じる違和感へと、表現の核となるものが変わっていったと。

尾崎「何かに対しての違和感や疑問、疎外感を原動力として音楽を作っていくという姿勢は、多分一生変わらないんだろうなと思います。ロックシーンはクラシックとかジャズに比べるとよっぽど多様性があって懐も深く、シーンを批判したいということは全くなくて、(批判は)どちらかというと自分たちに向けたもので。

〈違和感〉という言葉で片づけちゃうと世の中の皆さんには伝わらないから、どうやってそれを音楽で伝えていくのかということと、今自分たちができることは何かを考えながら作ったのが『IHATOV』です」

beja(キーボード/ギター)「自分たちができることとできないことが可視化されていく2年間だったなと思います。『hymn』を出したときはそれぞれの音楽を集約したら面白いものができるんじゃないかという感覚だったんですけど、自ずと4人で1つのものを作ろうという姿勢に切り替わっていった中で、それが一筋縄ではいかなくて。

他のバンドを見ていると音楽の作り方とかライブのやり方が全然違って、たとえばセッションから曲を作っているようなバンドと対バンすると、素直にかっこいいなと思うんですよね」

尾崎「僕たちは基本、楽譜ベースで曲を作っているんですよ。特にbejaの曲のスコアとか見ていただきたいです。オーケストラのスコアみたいに書き込まれてます(笑)」

beja「アカデミックな教育では得られなかった、バンドとしての感覚や信念に影響を受けて、色々トライしてみたんですけど……やっぱり上手くできなくて。今回収録されてないものも含めて色々実験して曲を作ったんですけど、Khamai Leonというブランドを最後に刻印して出すものには至らなかった。

4人がバンドになっていくためにはどうすればいいのだろう、もっと言えば、バンドになろうとすることが正しいのかどうかも含めて、すごく考え続けた2年間でした」