〈終活〉という言葉の響きやオバケのヴィジュアル・イメージから、取っつきにくい印象を抱くかもしれない。ただ、実際に彼らの楽曲を聴いてみると、ダークな旨みを持ち合わせつつも、ものすごくキャッチーでダンサブルなロックが鳴っている。歌詞も耳に残って離れない魅力が満載で、最初の思い込みがガラッと覆されるはずだ。

 「〈死にたいんか?〉とかよく訊かれるんですけど、むしろポジティヴな想いを込めたワードで、〈人生を最高に終わらせたい〉ってことなんです。というのも、それまで僕は音楽を真剣にやれてこなかった。地元・新潟のライヴハウスに趣味の範疇で出る程度だったんですね。このままじゃ、きっとめちゃくちゃ後悔する。そう気付いて始めたのがこのバンド。名前の候補に〈終活〉と〈日本語大好きクラブ〉があったから、くっつけていまの感じになりました」(少年あああああ:以下同)。

 少年あああああが中心となり、ギターの石栗以外は音楽経験を問わず、10数年来の友人を集めて結成された。ベースのイシダヒロキとキーボードの羽茂さんは、初心者からのスタートだったそう。「〈いつか一緒にバンドをやってみようぜ〉と昔から言っていたのに、いま誘わなかったら絶対に後悔するので」という理由も彼らしい。

 「初期はMCもしない無愛想なライヴをやってたんですけど、演奏が上手いわけでもないし、これじゃダメだよねって。本来の性格に合ったアプローチを探るうちに、自然体で喋るような、羽茂さんがマスコットみたいに踊るようなパフォーマンスになり、明るい曲も暗い曲も得意とする〈楽しくて変〉なバンドになった。そのギャップ、二面性が持ち味かな」。

 「ずっと聴いてくれてるファンがメジャー進出ということで感じているかもしれない不安を掻き消したかった」という、今回のメジャー・デビューEP『終活新布教盤』では、ブレない終活クラブらしさを清々しく打ち出している。

 「メジャー1曲目が“しょうもないなあ”かよ!ってツッコまれそうですけど、自分の愚かさを隠さずに書きたかったんです。そのうえで、〆に〈じゃ、始めますか〉といまの前向きな心境をちゃんと含めてたり。ギター・リフもインパクト抜群で、何かと僕ららしい曲ですね。普段考えてることが出ちゃうんですよ、棘のある言い回しとか(笑)。日常で使ったら怒られる表現も、歌詞にして曲に乗せたら共感してもらえるのが音楽の良さ。それはSNSでは得られない喜びです」。

終活クラブ 『終活新布教盤』 バップ(2024)

 “六畳にて”の〈2000年代のJ-Rockを脳内で再生して遊んでいるのさ〉という歌詞通り、その時代を象徴するバンドに、彼は多大な影響を受けたのだそう。

 「ELLEGARDEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、Base Ball Bear、藍坊主とかをよく聴いてました。語弊があるかもしれないですけど、当時はセンスが良ければOKな時代だった気がしていて。“六畳にて”でも使った4つ打ちオープン・ハイハット、符点8分ディレイといったサウンドがすごく流行りましたよね。この曲は以前にソロ名義で作ったんですが、インディー時のレーベル・オーナーで現在もマネージャーの小林さん(宏彰、新潟のライヴハウス・CLUB RIVERST/KIZUNA RECORDSを運営)に〈これはバンドでやりなよ〉と勧められて、終活クラブが始まった。僕らのきっかけになった曲なので、今回の盤に再録して入れたかったんです」。

 「コードを変えたラスサビの開ける感じが新鮮」と語るヒップホップ的な歌い回しで攻めた“詠唱”、「過去にあったのかなかったのかわからない、夢で見た美しい風景を描いた」というノスタルジックなミディアム曲“めぐる”と、一枚の中で幅広い表情を覗かせる終活クラブ。「とにかくバンドが、ライヴが楽しくて仕方ない!」と目を輝かせる少年あああああの姿はどこまでもピュアだ。素顔が気になる人は、ぜひリリース・ツアーへ!

 


終活クラブ
少年あああああ(ヴォーカル/ギター)、石栗(ギター)、イシダヒロキ(ベース)、羽茂さん(キーボード)、ファイヤー・バード(ドラムス)から成る5人組バンド。2020年に結成、新潟を拠点に活動している。2022年6月にファースト・アルバム『終活のススメ』をリリース。〈百万石音楽祭〉など全国のフェスやサーキット・イヴェントへの出演も増すなか、2024年1月にセカンド・アルバム『終活のてびき』を発表。このたびメジャー・ファーストEP『終活新布教盤』(バップ)をリリースしたばかり。