注目のピアニストが等身大の自分を投影して奏でる、リストのピアノ・ソナタ

 第86回日本音楽コンクールで最年少優勝を果たし注目を浴びたピアニストの吉見友貴は。以後、彼は2021年にエリザベート王妃国際音楽コンクールセミファイナリスト、2022年にはヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールクォーターファイナリストと、着実にキャリアを重ねてきた。現在はニューイングランド音楽院に奨学生として在学しながら演奏活動を展開している吉見。待望のデビュー・アルバムとなる『リスト:ピアノ・ソナタ』をリリースした。

 「リストのピアノ・ソナタは日本音楽コンクールで演奏してから弾き続けている曲です。〈大切〉という言葉では語りきれません。そしてこの曲は作曲者であるリストの人生というよりは、演奏者自身の経験や人生が反映されるものだと思うので、ぜひいまの自分の演奏で録りたいと思いました」

吉見友貴 『リスト:ピアノ・ソナタ』 コロムビア(2024)

 5月7日に24歳になったばかりの吉見。9月1日には王子ホールでのリサイタルが決定しているが、その際もこのソナタを演奏する予定である。

 「23歳でレコーディングしたときと、24歳になったいまの自分では演奏が大きく変わっているはずです。ぜひそれを聞き比べて頂きたいですね」

 リストと共に選ばれたのはバッハ=ブゾーニの“われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ”にベートーヴェンの“創作主題による6つの変奏曲 ヘ長調”、そしてブラームスの“パガニーニの主題による変奏曲 第1集”である。コンクールやリサイタルで常に練り上げられたプログラムが印象的な吉見。今回も何かしらの意図を感じる。

 「中心となるリストのピアノ・ソナタに連なるドイツ音楽の系譜のような意味合いを込めて選曲しました。またバッハは師であるアレクサンドル・コルサンティア先生の〈十八番〉で、先生へのオマージュの意味合いも込めました」

 そして最後にはガーシュウィン=ワイルドの“Embraceable You”も収められている。アメリカで学ぶ等身大の吉見を反映したもののようにも思えるが、こんな意図が込められていた。

 「ジャズが好きで、この曲はよくアンコールでも演奏しています。CDでも、アンコールのように置くことで、お聴き頂く方に“素敵だったな”という余韻を残すことができたら……と思っています」

 間もなくニューイングランド音楽院の修士課程への進学が決まっている吉見。アメリカと日本を拠点に活躍し続ける彼は室内楽への熱い想いも語ってくれた。今後の更なる活躍に期待が膨らむ。

 


LIVE INFORMATION
吉見友貴 ピアノ・リサイタル - CHOPIN / LISZT -

2024年8月29日(木)京都·青山音楽記念館 バロックザール
開演:19:00

2024年9月1日(日)東京・銀座 王子ホール
開演:14:00

■曲目
ショパン:バラード1番 op.23/ロンド op.16/ノクターン op.9-3/スケルツォ第3番 op.39/幻想ポロネーズ op.61
リスト:ピアノ・ソナタ

https://www.columbiaclassics.jp/20240901