精力的にリリースを重ねてきた注目のシティロックバンドが待望のアルバムを完成! 心の深部に響くカラフルな音楽性の魅力とは?

 〈シティロック〉なる独自のジャンル名を掲げて活動する横浜発のバンド、LUCY IN THE ROOM。もともと大学の音楽サークルで集まった顔ぶれを中心に2018年9月に結成され、 下北沢を中心にライヴ活動を行ってきた活きのいい5人組だ。メンバーはKohei(ヴォーカル)、mii(キーボード)、ROKU(ギター)、近藤翔太(ベース)、キワム(ドラムス)で、それぞれが多様なバックグラウンドから受けたさまざまな音楽の影響を融合したものこそが彼らならではの〈シティロック〉なのだ。

 コロナ禍に見舞われた2020年5月に自主制作で発表した“Candy”のMVが反響を呼び、翌年には蔵前レコーズに所属。そこから『Fermata』『Musicology』という2タイトルのEPをリリースしたのは2022年のことだ。さらに同年にはカラオケDAMがレコメンドする〈DAM HOT! アーティスト〉に選出されて脚光を浴び、その年の12月からハピネット・ミュージック所属となって現在に至っている。

 彼らの持ち味は、いわゆるシティ・ポップ・リヴァイヴァル以降のマイルドなグルーヴ感覚をあらかじめ保有しつつ、そこのセンス勝負に止まることなく個々のテイストを活かしてまっすぐなポップネスを獲得していることだろう。昨年は“Met”がアニメ「Call Star -ボクは本当にダメな星?-」のエンディング主題歌に起用されるなど徐々にステップアップし、1年にわたる楽曲制作集中期間に突入。その成果が今年4月からの7曲連続シングル配信であり、それらを集大成したのがこのたび完成したファースト・アルバム『ハートビートは眠らない』というわけだ。

LUCY IN THE ROOM 『ハートビートは眠らない』 Happinet Music(2024)

 導入部の誠実な歌声から軽やかに加速していく冒頭の“Alma”、疾走感のあるピアノ・ロックの“Raven”などはmiiによる楽曲で、ダンサブルな“ドレスコード”やスケールの大きい“飛行線”などは近藤が作曲。さらにKoheiによる温かい人生讃歌の“C’est la vie”や切ないバラード“ワンスモア”が醸す人間味もポイントで、各々の志向が巧みにバンドの色合いを織り成している。どの曲にも共通するのはキャッチーな親しみやすさで、このポテンシャルは相当なもの。ぜひ覚えておいてほしいバンドだ。

LUCY IN THE ROOMの作品を紹介。
左から、2022年のEP『Fermata』『Musicology』(共に蔵前レコーズ)、2023年のシングル“ものがたり”“Flowered”(共にHappinet Music)