日本の音楽体験の中で大きな割合を占める〈吹奏楽〉。あのアーティストや音楽関係者も吹奏楽部出身だった、という例も多いでしょう。経験者でなくても、学校の行事や夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)などスポーツの現場での応援でその音楽を耳にしたことがあるはず。吹奏楽部を舞台にしたアニメ「響け!ユーフォニアム」も今、人気を博しています。そんな大きな存在でありながらも、吹奏楽という音楽について語られる機会は少なくないでしょうか? もっと吹奏楽の話をしたい!という思いから、新連載〈もっと!吹奏楽〉をスタートさせました。第2回は、現在開催中の夏の甲子園の野球応援について。 *Mikiki編集部
今年も幕を開けた夏の甲子園。白熱する試合はもちろん楽しみだが、吹奏楽を愛するものとして、甲子園は野球だけじゃない、吹奏楽も楽しめる場なのだ、ということを声を大にしていいたい。応援を楽しむ視点も持てれば、試合を観る喜びもきっと倍になるはず。
この記事では筆者の友人である熱烈な野球応援狂に教えてもらった情報をもとに、野球応援的視点で第106回全国高等学校野球選手権大会の要注目校を紹介する。
木更津総合高校(千葉県代表)
野球応援ならではの用語の一つ、チャンステーマ(略称:チャンテ)とは、自チームの攻撃中にチャンスが訪れた際、選手別の応援曲や曲の演奏順などに関係なく、それらに代えて演奏する応援曲のこと。高校野球ではプロ野球のチャンステーマを使用する場合もあるが、近年は各校のオリジナル曲も増えている。また、習志野市立習志野高等学校の“レッツゴー習志野”や、拓殖大学紅陵高等学校“チャンス紅陵”などの人気曲は、そのまま別の学校が使用するケースも少なくない。
そんな中、木更津総合高校が2023年から使用しているチャンステーマ“ターゲット”は卒業生の作曲だという。今年の甲子園で流行る曲になるのだろうか? またこの曲は振り付けも話題で、同校の別のオリジナル曲“イナズマ”が演奏される際も応援席では生徒たちがみんな踊っていて、観ていてとても楽しい。
ただ、野球応援の楽曲としてはまだまだ発展途上だという印象があるため、木更津総合には〈ここぞ!〉というときに“ターゲット”を連発してもらって、定着してほしいところ。“イナズマ”もかっこいい曲だけど、数年前に演奏をやめてしまった“チャンス紅陵”はかなり盛り上がっていた気もするが……。さぁ、今年の甲子園で木更津総合はどう出るでしょう⁉
石橋高校(栃木県代表)
2023年の春の甲子園にも出場していた石橋高校は、演奏はもちろん、アルプス全体の雰囲気が素晴らしく、大きな盛り上がりを見せていた。1999年のアニメ「おジャ魔女どれみ」のオープニングテーマ“おジャ魔女カーニバル!!”を演奏したのが個人的に嬉しく、オフスプリングの“プリティフライ”を急に演奏したのにもびっくりした。
なぜびっくりしたのかというと、“プリティフライ”は高松商業高校のチャンステーマ/魔曲として有名な楽曲だからだ。〈魔曲〉とは、その曲を演奏すると、試合の流れが好転する……という一種のゲン担ぎ的なものが応援曲になったもの。ある種のチャンステーマでもあるといえるだろう。魔曲が会場に鳴った時のわくわくと緊張感といったら! 石橋高校の“プリティフライ”の演奏は、そんな本家・高松商に匹敵するくらいの好演だった。というわけで、今年の夏の甲子園でもぜひ聴きたい。