誰にでも好きな声があると思う。歌手、朗読する詩人、それに落語家。技巧ではなくて、その人の声の質に惹かれて歌、詩や噺に耳をそばだてることがある。楽器もそうだ。楽器の音色の違いというより奏者の個性がのった音色に惹かれてその演奏家を追いかけ始める。このトーマス・スタンコの軽快でいてどこか不安にひきづられるような重さを感じるトランペットの音色が好きだ。音色というよりもしかするとスタンコが一筆書きのようになぞる旋律の形の響きなのかもしれない。彼の死後リリースされた本作の一曲目の跳ねるようなリズムを感じながらピアノとベースの間で跳ねる彼のトランペットの音色が好きだ。