©Evelyn Freja

〈Vibe Provider〉の、マイケル・フンミ・オナオイエの人生を祝福したアルバム

 エメット・コーエン(ピアノ)は昨年11月末に、初めてリーダー・トリオを率いてブルーノート東京に出演。全日ソールドアウトの快挙を、成し遂げた。その東京公演の熱気をそのままに、2024年の年頭にスタジオで録音したニュー・アルバム『Vibe Provider』が届いた。エメットにニュー・アルバムに込めた想いを訊く。

EMMET COHEN 『Vibe Provider』 Mack Avenue/キングインターナショナル(2024)

 「昨年の超満員の日本でのギグは、本当に感激した。今まで多くのジャズ・ミュージシャンから、日本のオーディエンスは素晴らしいと聞いていたけど、まさにその通りだった。日本との新たな関係が始まったと感じたよ。その興奮のままに、ニューヨークに戻ると、長く闘病していた、かけがえのない友人のマイケル・フンミ・オナオイエが、逝ってしまった。フンミは、ハーレムのジャズ・コミュニティの中心人物で、多くのミュージシャンを励ましてくれる存在だった。私も10年ほど前から親しくしていた。パンデミックが始まり、最初はトリオで〈Live From Emmet’s Place〉をスタートした時も、よく私のアパートに来てくれて、唯一の観客だった時もあるが、1人でまるで満員のジャズ・クラブのように盛り上げて、私たちを鼓舞してくれた。フンミは、いつも素晴らしいヴァイヴレーションを発して、ミュージシャンの演奏のクオリティを高めてくれる、〈Vibe Provider〉(グッド・ヴァイヴレーションの提供者)といった稀有な存在だ。私のライヴ・ストリーミングも、彼からミュージシャンのセレクションや、その日のテーマなどさまざまなアドヴァイスをもらい、ご存じのとおり、大きく発展した」と、エメットは亡き親友を語った。

 「フンミがいない喪失感の中で、私はフンミを想う曲を2曲書いて、年明けにレコーディングした。今回のタイトル・チューンの“Vibe Provider”と、“Unblock Love”だ。“Vibe Provider”は、フンミも大好きだったレジェンド、フランク・レイシー(トロンボーン)を加えた3管に、フンミがよくプレイしていた、彼の故郷のナイジェリアのパーカッション、コシュカを加えて、多くのミュージシャンとともに、フンミの人生を祝福した」とエメットは、タイトル・チューンに感謝の気持ちを込めた。

 エメット・コーエンは、今年10月末に、ルーべン・ロジャース(ベース)、ジョー・ファーンズワース(ドラムス)のニュー・トリオを率いて来日する。さらにパワー・アップしたステージが、期待される。

 


LIVE INFORMATION
EMMET COHEN TRIO  エメット・コーエン・トリオ

2024年10月22日(火)、23日(水)、24日(木)ブルーノート東京
2024年10月26日(土)、27日(日)浜松ジャズウィーク
2024年10月28日(月)丸の内コットンクラブ
来日メンバー:エメット・コーエン(ピアノ)/ルーベン・ロジャース(ベース)/ジョー・ファンズワース(ドラムス)