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21世紀のハーレム・ルネッサンスの幕開けを告げるスマッシュ・ヒット

 エメット・コーエン(ピアノ)は、コロナ・パンデミック下の2020年の3月から、毎週月曜日の夜にハーレムの自宅リヴィング・ルームから〈Live From Emmet’s Place〉を開始した。レギュラー・トリオでスタートしたが、100回目に届く今、若手から大ヴェテランまで多彩なゲストを迎え、エメットを中心としたハーレム・コミュニティを形成していった。このストリーミングは今や、ジャズのレギュラー・ベースの配信としては、世界最高の再生回数を誇っている。そのエッセンスを凝縮して録音されたのが、本作『Uptown In Orbit』である。

EMMET COHEN 『Uptown In Orbit』 Mack Avenue/キングインターナショナル(2022)

 「ストリーミングからは、どのような状況下でもクリエイティヴになれるパワーを学んだよ。2020年の3月の最初の配信でも、40,000回を超える再生回数があった。人々は、自粛期間中にもライヴ・ミュージックを求めていたんだ」とエメットは語る。この2年、多くのアーティストが、エメットのリヴィング・ルームを訪れた。

 「同世代のトップのサックス・プレイヤーのパトリック・バートリーと、メンター世代のショーン・ジョーンズ(トランペット)が来てくれて、それぞれがプレイした日は、美しい瞬間だった。彼らによってトリオのクオリティは大きく引き上げられ、奇跡が起きた夜だった。この二人は共演したことがなかったので、今回レコーディングに来てもらって、初めて一緒に演奏したんだ。彼ら二人の相乗効果で、さらなる奇跡がおきた。“Uptown In Orbit-Reprise”では、彼らのライヴ・ストリーミングの時のコメントをミックスしたんだ」

 今回のレコーディングでは、カイル・プール(ドラムス)が前作以上の大きな役割を果たしてくれたという。

 「カイルは、もちろんドラミングで、私の音楽を支えてくれているが、今回はプロダクション・ワークでも大きく貢献してくれた、オープニングの“Finger Buster”や“Mosaic”に素晴らしいアイディアで、効果的なエフェクトを加えてくれた。私の住んでいるエリアは、かつてデューク・エリントン(ピアノ)が暮らしていて、1920年代のハーレム・ルネッサンスを謳歌していた。100年後の今、私たちが新たなハーレム・ルネッサンスを創造したい」

 ストリーミングを通じて、全世界から絶大な支持を獲得したエメット・コーエンが、新たな世界を切り拓く。