
邦ロックとオルタナ/ハードコアシーンが共存する福岡のおもしろさ
――奏人心からは、ARB、サンハウスやロッカーズ、ルースターズ、THE MODSといっためんたいロックの血筋も感じるのですが、影響はありますか?
あげは「バンドを始めるまではほとんど聴いたことがなかったんですけど、福岡のライブハウスに出ていると、今でもその頃の刺激的な話を聞くことが多くて、影響を受けるようになりました」
――福岡でやることに意味や楽しさは感じますか?
有斗夢「めちゃくちゃ楽しいですね。福岡のバンドシーンは、大きく言うとメジャーを意識したJ-ROCK、邦ロック的なバンドが集まる箱と、オルタナティブなロックやハードコアをやるバンドが集まる箱に二極化していて、オルタナやハードコアのほうは福岡独特の太い音、音楽の探求だけを目指したような爆音が鳴り響いているイメージ。それに対して前者の箱でライブを観ていると、お客さんがノリやすいサウンドやパフォーマンスを追求している印象が強い。双方が混ざり合う部分もあれば、相容れずにバチバチな部分もあるんですけど、そこにある熱がおもしろさになっているんじゃないかと思います。
その中で奏人心は、どちらのよさにも影響をうけた、混ざり合っているところにいるバンドですね」
あげは「私は奏人心を始める少し前に、福岡の地元の先輩、Cohakuというバンドに出会って、よくライブハウスに行くようになったんです。Cohakuも言ってしまえばオルタナ側のバンドで、入り口がそこだったので、個人としては客として観に行くライブも対バンしたいと思うバンドもそっちの方が多いですね。とんでもない爆音を浴びて〈うわっ!〉ってなった感覚のままスタジオに入るみたいな。そうやって感性が磨かれていく日々が楽しいです」
――拠点は福岡にこだわり続けたいですか?
有斗夢「今は福岡の大学の1年なので、少なくとも卒業するまでは福岡にいようと思っていて、その中で、今は特定のスタイルや界隈にこだわることなく、いろんなライブに出てどんなシーンでも通用するバンドになりたい。
と言うのも、今は僕らより下の世代、中学生や高校生にもいろんな音楽が好きな人、バンドが好きな人はたくさんいるのに、なかなかライブハウスには辿り着かないという現状があって。僕らは、そういう人たちの入り口になって引っ張っていきたいんです。
それに奏人心もまだ始まったばかりのバンドで、いろんなものに影響を受けて進化していることが楽しいから、小さくまとまっちゃって、自分たちで動ける幅を狭めてしまわないよう、意識的に柔軟でいたいんですよね」
若者の感受性とリンクする多様な〈缶ジュース〉
――今の話と『SEARCH感受YOUTH』というタイトルがリンクしました。これは若者の感受性と学生の生活感を感じる缶ジュースという言葉を掛け合わせたものだと思うんですけど。
有斗夢「そうですね。缶ジュースってさまざまな色があって、細かったり太かったりもしますし、その多様な感じが若者の感受性とリンクしました。そして自分たちもまだ新しい感受性を探し続けている道中で、いろんなことから影響を受けて可能性が広がっていってます。
今回のEPは、まだはっきりとしたかたちにはなっていないけど、そこに確かにうごめいている大きなエネルギーをぶつけた作品ですね」
――初期パンクやガレージロック、日本の青春パンク的な要素も感じますし、オルタナティブロックからの影響も感じる中で、私はまず、ザ・リバティーンズとアークティック・モンキーズが出てきた頃のことを思い出しました。サウンドが似ているといより、ザ・リバティーンズは彼らに抱いた圧倒的な憧れや愛おしい人間味という存在感、アークティック・モンキーズはルーツに根差しながらもチャレンジングで踊れるリズムやリフのインパクトという意味で。
あげは「わ!」
有斗夢「ザ・リバティーンズもアークティック・モンキーズも、めちゃくちゃ好きですね。僕らが好きな日本のロックバンドが影響を受けたバンドを辿っていく中でハマったバンドで、今回の4曲では、意識的に参考にしたわけではないんですけど、自然と出てくるものはあると思います」
――音がいいですよね。ライブをパッケージングしたような荒々さとともに、リズム隊がしっかり立っていて、観賞する作品としてもしっかり成立している。
有斗夢「UTEROというライブハウスの上の階にあるUSS(UNKNOWN SOUND STUDIO)というスタジオで録りました。エンジニアはPANICSMILE/IRIKOのギタリスト、中西伸暢さん。ボーカル以外は一発で録ったんですけど、いい音になったと思います。好きなスタジオで敬愛する方と作ることができて、本当に嬉しかったです」
あげは「作品のレコーディング自体が初めての経験で、最初は自分たちの曲が再生ボタンを押したら鳴るCDという媒体になった実感がなかったというか、とても不思議な気持ちだったんですけど、聴いていくうちに作った時の気持ちやレコーディングのシーンを思い出して、感動しました」
一翔「みんなで作った曲のことが今までよりもっと好きになりました」