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ルーツの日本を投影した1st、BBNGとの瞬間を切り取った2nd

――2020年にリリースされた初のLP『souvenir』は、あなたの名前を世界に知らしめたと思います。私もパンデミック初期の家から出られない時期に聴いていました。本作には15年ぶりに再会したお父様(タツヤ・ムラオカ)とのコラボ曲も収録されています。この作品を今振り返ってみると、どんなことを思いますか?

「自分の音楽性を形成してアイデンティティを発見していく過程だったと思う。将来どういう方向に向かうのかを見極めながら、いろんなことを試した。もしかしたら試しすぎちゃったかもしれないくらい、本当にいろんなことに取り組んだ。実験的な音をつくってみたり、コラボをしてみたり、自分がやってこなかった新しいことをやってみたり、方向性を考えあぐねるような感じの作品だったと思う。

だから『souvenir』は人生の中でも特に大事な時期の証だと思う。同じ時期に15年ぶりに日本に帰って父と再会して、僕の日本人としてのアイデンティティとも再びコネクトすることができた。そういう時期を象徴している個人的にも重要な作品だね」

――1st EP『Nervous』と『souvenir』に比べると、2ndアルバム『portrait of a dog』は生演奏の要素が強くなっています。

「『Nervous』と『souvenir』はいろんな人のプロデュースが入っていて、レコーディングした時期もバラバラだったんだ。でも『portrait of a dog』はたった8日間で、バッドバッドノットグッドという決まった人たちと生演奏がベースのものを作ろうっていう意識があった。だからアプローチが全く違う。

バッドバッドノットグッドとの制作は瞬間瞬間に全てをかけるような感じだった。なおかつほとんど編集をしないことで、本来は一瞬で終わってしまうことを永遠のものにすることに大きな衝撃を受けた。

だから今回の3rdアルバムも後先はあまり考えず、編集もあまりせず、その場その場の短い時間でのスナップショットをキャプチャーすることを意識した。それが前作から引き継いだスピリットだと思うよ」

 

人間は逃れがたい永遠のサイクルの中で生きている

――今作『Jonah Yano & The Heavy Loop』について、過去作との共通点と変わった点を教えてください。

「共通点はさっきも言ったように、ミュージシャンたちとの繋がりやありのままの瞬間を大事にすることだったと思う。進歩したのは、ポストロックとかフォーク、ジャズといった僕がいつもやっているジャンルの世界に残りながら、実験的なことも上手く取り込めたことかな。それが一番表れてるのが30分の曲“The Heavy Loop”だと思う」

――“The Heavy Loop(永劫回帰)”は何を表した曲なんでしょうか?

「ここ数年一緒にライブ活動をするようになったバンドメンバーへのラブレターのようなものなんだ。本当に何の計画もなくやるジャムセッションこそ、このバンドと音楽を作るうえで一番好きなことで、僕にとって音楽的に最高の瞬間はそこから生まれる。この曲ではメンバー同士に永遠の繋がりがあって、それが繰り返されることを表したかった。僕たちはそういうループの中で生きている。それを音楽として聴こえるようにしただけなんだ。

あと、歌詞については〈永劫回帰〉という言葉が捉えている重厚で巨大な感覚について書いた。つまり、人間のあらゆる営みは大小様々なループの中で成り立っているということ。例えば太陽が昇って沈んでまた昇る、髪を洗うとまた汚れる、食べるとまたお腹が空く、生まれて死ぬとか、そういう繰り返しの中で人生が行われていることを制作時によく考えていたから、それを形にしてみたいなと思った」

――〈永劫回帰〉という言葉自体はニーチェによる哲学用語ですよね。

「そうだね。モントリオールに住んでいる宮崎県出身の翻訳家の友達が邦題を全て考えてくれたときに〈永劫回帰〉という言葉が出てきた。それがニーチェの言葉だってそこで初めて知ったんだ。ニーチェが言っていたのは、人間は逃れられない永遠のサイクルの中で生きているっていうことだと思う。それが腑に落ちた。念のため邦題を付けてもらってから、それが正しいのかどうかニーチェを読んで確認もしたよ」

――即興とはいえ、メンバーと共有したモチーフはありますか?

「実は元となった曲は何度も違うスタイルで演奏してきた。コンサートでは長くてもせいぜい9分ぐらいの曲だったんだけどね。それを30分に伸ばしたのが今回。歌詞は事前に書いていて、ある程度頭にあったんだけど、それを歌うタイミングは決めていなかった。

あと、アルバムのクリエイティブディレクションを担当したビジュアルアーティスト(ニック・アーサー)に作ってもらった30分の映画をスタジオに持ってくるよう頼んだんだ。その映画をスタジオの壁に投影して、それを見ながら即興演奏をする方法を取ってみた」