〈Refraction〉とは〈屈折〉の意。それが複数形となることでアルバムという集合を示すとともに、個々の楽曲の事象の地平面でも実にさまざまな屈折が起こっていることを仄めかしている。
Cornelius=小山田圭吾の表現を前に私は深読みを禁じ得ない。1990年代初頭にまで遡るこの悪癖(?)を絶ちきるのは容易ではないが、2017年の『Mellow Waves』、その6年後の『夢中夢 -Dream In Dream-』(2023年)、編集盤ではあるが『Ethereal Essence』(2024年)と、近作における内省的なトーンは深読みを誘うよりも音楽家=小山田圭吾の滲み出す滋味を堪能するのを誘うかのごとき興趣があった。むろん世相や空気といったものとも無縁ではない。おそらく小山田はそれらに恬淡と向き合うことを選択した。
そして本文でも述べるとおり〈老成〉といえるかもしれない前作までの〈文脈〉から〈屈折〉の題名を冠した本作で小山田はあきらかに転調している。ジャズにブラジル、サーフィンにインド音楽、ファンクにはデジタライズを施しグルーヴはとぐろを巻くかのごとくである。他方、クレジットに目を落とせば、坂本慎太郎、アート・リンゼイ、ザ・モノクローム・セットのビドにショーン・レノンと、親交のあつい面々が集結し、他者なる壁としてCorneliusを囲繞している。
AIの使い方を指して壁打ちというのは投げたものが予測可能な軌道で戻るからだが、小山田の壁は角度があり、投げたものは屈折し、予想外の方向に向かうことをよしとする。
AIを用い、アートワークやMVの制作にもみずから携わったという小山田に、今回のインタビューではビジュアル方面の質問も数多く行っている。タワーレコードのキャンペーン関連という大人の事情も関係なくはない。とはいえいかなる入射角の質問であってもCorneliusの創作哲学へと屈折させる思考はあざやかである。
小山田圭吾の〈Mind Train〉に乗り込もう。
AIと肉体的な手作業を融合させる試行錯誤
――『Refractions』はフィジカルにも力が入っていますね。
「今回は自分のイメージを完全に具現化したアートワークを作りたくて、僕がAIで作った画像を、Corneliusのアートワークにずっとかかわってもらっているデザイナーの北山雅和さんにIllustratorで入稿データに起こしてもらいました。今回の作品では生成AIを結構使っていて、そこに肉体的な要素、手作業でスプレーを吹くなど人間の手が入るようなハイブリッドな方法をとっています。アルバムのDeluxe Edition(ワーナーミュージック・ストア限定販売)のアートワークもそことリンクするようなイメージですね」
――『夢中夢 -Dream In Dream-』から『Refractions』へ至る3年のあいだ、環境上の最大の変化といえばAIの社会実装ですよね。
「そうですね」
――AIでなんでもできるようになりました?
「いや、なんでもはできないんですよ、やっぱり(笑)。僕は音の部分と、アートワークやビデオ、歌詞にもAIを使うことがあります。主に言葉や考えを整理する作業に使っているんです。制作のあらゆる側面にAIは入ってきていて数年前に較べたらかなり高度、でも完全にいうことを聞いてくれるわけではないからね。今回、生成AIで映像も作ったけど、どんなにプロンプトを打ってもいうことを聞いてくれない(笑)。でもそのエラーを楽しんでいる部分もあります」
――“夢寝見”などのMVはどのように制作されたんですか。
「まず静止画を作りました。何百枚と作ったなかからいい感じの画像をとりだして、AIに学習させて動かすんです。動かすのもプロンプトです。その作業に去年、ハマってしまって。いま世の中に出ている映像のほとんどは去年制作したもので、最近はそこからさらに進歩していますが、やっぱりまだ完全にいうとおりにはなりませんね」
――ものすごくダイナミックな映像ですよね。
「撮影では絶対できないよね。指示して、それを聞いてくれたり、くれなかったり、ということの繰り返しです(笑)」
――まだまだ試行錯誤が必要というか、時間はかかるんですね。
「僕がAIで制作した一連の映像を実際に撮影しようとしたら、おそらく数千万円単位の制作費がかかると思うんですね。スタッフの人数も半端ではないと思うし、コンピューターグラフィックスの技術とかスタジオの使用料までふまえると、映画並の予算が必要だと思うんです。それを個人でまかなえるというのはすごいことだと思います」
――『Fantasma』から『Point』における変化が象徴的ですが、小山田さんのこれまでのキャリアはどうしても制作費がかさばるような着想をテクノロジーを援用しつつコンパクト化してきた歴史でもあるような気がします。
「ビジュアルでいえば、『Fantasma』のツアーで使用した映像も最初は自分で作っていたんです。当時はVHSの時代でしたから複数のビデオデッキを駆使して、映像を音に合わせながらダビングしていました。そこから辻川幸一郎くんとか、中村勇吾さんとか、今回お願いした大西景太さん、groovisionsもそうですね。いろんな方に映像を作っていただきました。もともとそういった作業は好きですし、今回はイメージする世界観に近いものが自分でもできることが楽しかった。映像を使い始めたころの感覚を思い出しました」
『ヘッド博士』のジャケットを引用した理由
――配信シングル“Twisting & Glistening”のアートワークも話題になりました。
「ああ、天井ね」
――なぜ『DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER -ヘッド博士の世界塔-』(フリッパーズ・ギターの3rdアルバム)のドットなんですか。
「MVにも出てきますが、今回のビジュアルでは幾何学的、抽象的なパターンがテーマなのでそのひとつということです。『ヘッド博士』のジャケットを読み込ませて、老朽化して荒れた部屋のイメージを作り、モノの配置などを決めていきました。『ヘッド博士』と急にいわれても、若い子はきっとわからないよね(笑)」
――特別な意味は込めていない?
「あえていうなら信藤三雄さんへのトリビュートかもしれません。あらためていいジャケットだと思いました」
――小山田さんはフリッパーズ・ギターの時代から信藤さんとはお仕事をされてきて、Corneliusのジャケットを担当されている北山雅和さんも、信藤さんが率いたデザイン事務所コンテムポラリーのご出身です。
「信藤さんが亡くなられたのは2023年だから、3年前ですか」
――ご自分の作品以外で、信藤さんが手がけたレコードジャケットでお好きなものといえば、なんですか。
「PIZZICATO FIVEの『ベリッシマ』かな。信藤さんを最初に知ったレコードでもあります。渋谷のすみやというサントラの専門店に飾ってあって、おしゃれだなと思いました」
――『ベリッシマ』のリリースは1988年です。
「渋谷系前夜だよね。当時、信藤さんの手法としてサンプリングというのは大きかったと思うんですよ」
――『ヘッド博士』のドットもダミアン・ハーストに由来するのではないかとか、そういったことですね。
「たどっていけば、草間彌生さんもそうだよね。もはやドットは誰のものでもないというか、オプアートのブリジット・ライリーの幾何学パターンみたいなものも、今回ビジュアルのテーマのひとつにあって、信藤さんの仕事もその流れで思い出したというのもあるかな」
――80年代末から90年代初頭は音楽もサンプリングの時代でした。
「サンプリング、コラージュに向ける意識が当時といまでまったく違うよね。権利保護や規制に対しても、当時なにもなかったとはいわないけど、いまのような感じではなかったと思うんですよ。ことに国内では。『ヘッド博士』はまさにその時代のレコードなので再発できないんです」
――著作権法とのいたちごっこはAIの分野でもしばしば耳にします。テクノロジーと表現の宿命のようなものかもしれません。生成AIのプロンプトでも特定の音楽家の名前はあげられないんですよね。
「ジャンルに変換されますね」
――〈Corneliusの~〉とはいえないけど、〈渋谷系の~〉といえばOKということですか。
「OKだけど、渋谷系といってもいろいろあるからね。いかにCorneliusによせるかはプロンプトの腕しだいじゃないかな(笑)」
――なぜかOriginal Loveみたいになったり(笑)。
「カジヒデキっぽくなっていたとか(笑)」
――知見がなければ、表層的なものにとどまりそうですね。
「それと文脈ですね」
井上陽水の催眠的な歌世界にハマって
――文脈とは言語的な意味のつながりのことですが、最近はその言葉自体がさまざまな文脈に置かれますよね。『Refractions』は文脈の束のようなアルバムでもあると思います。今回、アルバムのなかで最初にとりかかった楽曲はなんですか。
「“Bad Advice”と“Mind Train”の2曲が2年前にできた曲です。“Bad Advice”はアート(・リンゼイ)さんが歌っていて、“Mind Train”は長尺のモータリック系の楽曲ですね。一昨年に活動30周年を記念したライブがあって、そこで新曲をやりたいなと思って作りました。この楽曲を制作した時点ではアルバムの構想はまだなくて、これをきっかけに、去年あたりから本格的にアルバムを作ろうというモードに入り、残りの曲ができた感じです」
――井上陽水さんの“夢寝見”をとりあげた経緯について教えてください。
「単純に好きで、やってみたいと思ったんです。“夢寝見”は前のアルバム『夢中夢』の世界観に近いと思うんです。あのアルバムは2023年でコロナ末期ですが、それこそコロナ禍のちょっと前くらいに、この曲を思い出してサブスクで聴いてハマりました。
この曲、1990年前後に陽水さんが〈お元気ですか?〉という日産セフィーロのCMのBGMだったんですよ」
――1989年の昭和天皇の崩御に際して、キャッチコピーに不謹慎だとの指摘が入り、陽水さんの台詞が消されたんですよね。
「CM自体は第3弾までつづくくらい流行っていて、バージョンごとに何曲かかかったらしいんだけど、この曲が耳に残っていました。
サブスクに毎週、新しい音楽をAIが教えてくれるプレイリストがあるじゃないですか。ちょうどコロナ前に、この曲が入っている『ハンサムボーイ』の収録曲“Pi Po Pa”がプレイリストに上がってきました。そこからサブスクにあった陽水さんのバックカタログを漁るなかで、そういえばこの曲、憶えているなと気づいて、聴いてみたらすごかった。ちょうど『夢中夢』を作っていたときだったので、世界観の近さが影響したのかもしれません。ひたすら〈夢寝見、夢寝見〉と歌っていて催眠術のような、夢の中に誘うような構造が印象に残りました」
――『夢中夢』でとりあげる手はなかったんですか。
「ちょっとやってみたいとは思いましたが、そのときは聴くだけで十分だったのかもしれません」
――カバーは比較的オーソドックスなアプローチですね。
「原曲のアレンジに近いですよね。この曲、じつはアレンジが好きなんです。当時、陽水さんの編曲をよく担当されていた川島バナナさんというキーボディストの方のアレンジです。京都のEP-4のメンバーでもあります。サイケデリックですばらしいですよね」
――ヒプノティックですよね。川島バナナさんのそのようなアレンジを含めて再現したかったということですね。
「間奏をかなり長くとってディープでサイケな感じを目指しましたが、楽器を含めて80年代後半くらいの響きがあると思う」
振り返られない80年代後半の独特な音
――原曲のリリースは1990年ですが、サウンドは過渡的ですよね。
「1990年的ではあるけど90年代にいききってない(笑)。いわゆる80sというと、80年代前半のテクノポップやシンセポップのようなサウンドを想起するけど、80年代も後半にもなると楽器自体が変わってくる。ハウスやテクノといったダンスミュージックの影響が出てきたり、セカンド・サマー・オブ・ラブ的なサイケデリックな匂いも薄らあったり、同じ80年代でも前半とはまったく違いますよね。80年代といって主に振り返られるのは前半から中盤だけど、後半のサウンドは独特なわりにほとんど光があたらないんですよ」
――ザ・ミッションとか。
「ウェイン・ハッセイ、顧みられないね(笑)。ザ・シスターズ・オブ・マーシーならまだしも。たしかにザ・ミッション、一瞬ビッグだったもんね。ネオサイケからハードロックに移行するグラデーションみたいな──」
――あのニュアンスは置き去りになっている気がします。ただ、それを即座に理解していただけるのも小山田さんらしいと思います。
「それは当時を知っているからだよ。でもザ・ミッションの話、いま誰もしてないと思うよ(笑)。若い子なんかはとくに」
――細かいディテイルはいくらでもあると思うんですよ。
「ひたすらあるよね」
AI時代のヒプノシス的発想
――『Refractions』はその点にも意識的だと思いました。陽水さんのカバーもそうですが、アート・リンゼイ、ザ・モノクローム・セットのビド、ショーン・レノン、坂本慎太郎らとの共作を通して他者性と向き合おうとしているように感じました。サウンドもあえて記号的であることで外部をとりこもうとしていると思います。
「うん。まさに他者を媒介に自己を屈折させるようなコンセプトではあります。ここ2作がわりと内省的というか、シンガーソングライター的な内容だったので、ちょっと違う感じにしたいという思いがあり、ほかの人が作った言葉なり歌なりを歌い、ビドやアートさん、ショーンにも歌ってもらったというのもあります。
あとはAIですね。AIを、自己を屈折させる媒介として扱っているんです。そうして、なるべく自己完結しない方向で考えるということだよね」
――プロンプトの結果、意図した答えではなくとも、自己が屈折したものとして受容してみるということですね。
「受容したり受容しなかったり(笑)。AIは自己が拡張したもの、自分の延長と思う一方、AIを使えば、考えを外に出していくらでも分岐させられる。その一部をこちらに採用したり、あちらで取り込んだり、さらに外に出したり、それを編集したり、一時はそういうことをひたすら繰り返していました」
――可能世界の編集といった感じですね(笑)。個別の楽曲に話を映すと、ショーンさんとの“Aeons”のMVのモチーフはシド・バレットですか?
「よくわかりましたね」
――シド・バレットとピンク・フロイド『Ummagumma』の合わせ技だと思いました。
「『Ummagumma』はわからないけど、シド・バレットのつもりでした」
――『Ummagumma』のジャケットといったのは合わせ鏡という意味です。でもなぜシド・バレットなのでしょう。
「『The Madcap Laughs』のジャケットに映っている床の紺と黄色の縞模様が好きなんですよ(笑)。花が刺さっている花瓶があって、そこにクラウチングスタートみたいな格好でシド・バレットが蹲っている。今回は抽象的な幾何学模様がビジュアルのテーマなのでこれでいこうと。あれってヒプノシスだよね」
――ヒプノシスのアートディレクションについてはどう思われますか。
「好きなのがたくさんあります。今回、僕がやったのはデザインというよりは写真、イメージの生成なんですね。その考え方自体がヒプノシス的といえるかもしれない。なんらかのオブジェクトや世界を作り、それを撮影する。それをヒプノシスは数千万円かけて実写でやっていたわけですよね」
――工場の上空に豚のバルーンを飛ばすとか(笑)。
「砂漠に椅子のセットを作るとかね」
――ヒプノシスのストーム・トーガソンが手がけた、カナダ人の歌手、ブリンカー・ザ・スターの『August Everywhere』のカバーは荒野に白鳥の氷像を据えた写真ですが、白鳥の氷像は実物だったそうです。
「いまヒプノシスがいたらAIを使うと思う?」
――あえて使わないんじゃないですか。
「10代や20代ならやっているかもよ(笑)」
音楽と映像と陰謀論の結びつき
――AIネイティブのヒプノシスというのもすごいですね(笑)。そういえば“Twisting & Glistening”の配信ジャケの真ん中の捻れたオブジェ、レッド・ツェッペリンの『Presence』で家族が囲んでいる謎の物体と似ていませんか。あれもヒプノシスですが。
「(笑)。『Fantasma』のボーナストラックに “Typewrite Lesson”という曲があるんですけど、アルファベットの3文字をタイプライターで打つというようなコンセプトで、地味な曲なんだけど、サブスクでなぜかすごく再生されているんですね。なぜだろうと思って調べたら、TikTokとかYouTubeショートでバズったらしい。YouTubeにもいろんな人が音に映像をつけた解説動画があがっていて、それらが陰謀論と結びついているんです。3文字に〈洗脳〉〈監視社会〉〈アメリカ崩壊〉に関する暗号が散りばめられていると。すでに定説化しつつある(笑)」
――都市伝説ですね。“天国への階段”を逆再生すると悪魔のメッセージが聞こえるというような。
「〈ポール(・マッカートニー)は死んだ〉みたいなやつとか、あったよね」
――SNSの余波で思わぬものが思わぬところで、それまでとまったく異なる文脈で再生されることが頻発していますよね。ことにCorneliusはジングル的なものがミーム化していくにあたって適応しやすい気がします。瞬間的なポップさと強度が尋常ではないですし。
「VHSの時代からやっているくらいだから、画に合わせて使いやすいといえば使いやすいかもしれないよね(笑)」
還暦を控えるいま挑むダンサブルな音楽
――『Refractions』の話に戻ると、夢や眠りがあり、そこから覚醒していくような志向性といいますか、最後の“溶解線”で現実に戻っていくような流れを感じました。
「“溶解線”はどちらかといえば、現実と非現実の境界線がさらにわからなくなっていく感じに近いのかもしれない」
――『Sensuous』を思わせる風鈴の音が鳴っていたのにカーム(calm)な印象をおぼえたせいかもしれません。
「あの風鈴の音は『Sensuous』と同じ音源だね」
――なにか意図はありますか。
「特別な意味はないんだけど、日常に、ニュートラルな感じに戻るということに近いのかもしれない。アルバムが始まって、違う視点が現れてくるというか、没入した世界から出ていく。そのようなメタファーとして風鈴の音を使っています」
――それを私は目覚めとして受けとったのかもしれません。
「それはあるかもしれないね」
――全体的にダンサブルな仕上がりですが、その点にはこだわりをもって、ということですね。
「ここ2作、アンビエントな、インナー系の内省的なアルバムだったからね。……もうすぐ60なんですよ」
――60というのは?
「年齢(笑)。いま57なんですけど、あと何年かで60歳になる。そうすると、こういうビートがしっかり入った曲を演奏できる期間も、せいぜいあと10年か15年だと思うんです」
――年齢は関係ないですよ(笑)。ザ・ローリング・ストーンズだってまだ現役です。
「ストーンズは特殊な例じゃない。そういうことを考えると、ここらへんでダンサブルな曲をやっておいたほうがいいと思ったの。ライブでとりあげる曲でリズムが強いものが昔の曲ばっかりになってきたのもあります。なにより体が動くうちにそういうことをやっといたほうがいいなということですね(笑)」
――別に小山田さんが踊るわけじゃないじゃないですから。
「踊らなくても、演奏も大変だよ。ほら、バンドでガンガンやるうるさい曲とか、70になるとしんどいんじゃないかという予想ですよ(笑)」
――先ほどから70を念頭に置かれた発言がつづいておりますが(笑)。
「男性平均年齢が70何歳かじゃないですか※」
――寿命の話ですか。
「寿命の話です。信藤さんだって75で亡くなったし、坂本龍一さん、(高橋)幸宏さんも70代前半で亡くなられました。そういう出来事がひとつひとつ残るんです。自分が70のときはどうなのだろう、と考える機会が増えるんですよ」
――その結果、ダンサブルなサウンドは本作で取り組むべきだと判断されたわけですね。
「ダンサブルというよりは体が動くような、ということですね。こういう音楽が好きだというのも大前提です。この先どうなるかはわからないけど、40代で『Mellow Waves』や『夢中夢』は老成感としては早すぎたかもしれない(笑)」
――小山田さんの老成のはじまりは『Point』(2001年)なんじゃないですか。
「それはしょせん若造が想像する老成じゃないですか」
――もちろんそうです。翻って考えるに、いよいよ老成がリアリティを帯びつつあるということですか。
「いや、まだリアルになってなくて、でもこの先絶対そっち(老成)もありだし、そっちに興味をもつことも絶対出てくる、ただ早い段階でやるべきはこっち(体が動くほう)かな、ということです(笑)」
作風がかたまると壊したくなる
――妙に納得してしまいました(笑)。音作りに耳を向けるとシンベ(シンセベース)が効いていますよね。もうシンベとはいわないですか(笑)?
「シンベっていいますよ(笑)」
――ライブでは大野由美子さんがシンベを弾かれる場面もありますが、そこからのフィードバックもありそうな気がしました。
「ダンスではやはりベースが重要なんですよね」
――『夢中夢』に較べると音がたくさん鳴っています。
「そうですね。作風みたいなものがかたまってくると壊したくなるんです」
――ツアーがありますが、ダンサブルな楽曲は再現性の面では不安はないですか。
「難しいけど、ライブでやりたいと思って作った曲だし練習しているので大丈夫です(笑)」
――メンバーのみなさんもベテランの域ですものね。
「平均年齢はまだ50代だけど、もうすぐ……」
――小山田さんとはここ数年、年齢の話をしている気がします(笑)。
「気にしすぎかもしれませんが、日に日におじさんみも深まってきていますから。実際、初老じゃないですか(笑)」
――持続することとフレッシュであることの両立はとても難しいことだとは思います。
「ね。ストーンズのメンバーもポールも80代だけど、あれはもう伝統芸能だから。やってくれているだけでありがたい。あっ、でも、テリー(・ライリー)さんがいた。91歳だよ」
――“溶解線”のシタールはテリーさんへのオマージュではないですか。
「あれはテリーさんを意識したものではないけど、テリーさんはすごく好きだし、去年の90歳記念ライブもすばらしかった。先日野外フェス〈Festival de FRUE〉でも拝見しましたが、やっぱりすばらしかった。いまでも毎日、鍵盤を弾いたり、曲を作ったり、練習したりしているみたいだから。ロックミュージシャンはまだ80代だけど、ジャズなんかだと90代の現役という例もあるからね」
『Refractions』はピンク・フロイド『狂気』?
――小山田さんもあと30年はいけそうですね。そのころには音楽とテクノロジーの関係も、現在からはおよびもつかないほど変わっているかもしれません。ただ小山田さんは音楽がテクノロジーで変化することにからなずしも否定的ではないですよね。
「たとえばドラムマシーンやシンセが出てきて、テクノには魂がないとかドラムマシーンで失業者が出たとか、そういう意見もあったけど、AIをはじめとしたいまの変化はその次元を超えていると思うんです。クリエイティブの根幹が揺らぐというか。AIの出現により誰かが職を失うということでいえば、音楽だけじゃなくて、もう世の中がとんでもないことになると思う。もちろん問題もものすごくあるし、AIが本当に人間を超えた時点でどうなるかはまだ誰もわからない。そういう恐怖感はやっぱりありますよ」
――サンプラーやドラムマシーンに意図的にエラーを起こさせて表現にとりこむというような逆説的なアプローチはAIでも可能ですか。
「AIのエラーを拾うというやり方も当然あります。でも本当にAIが進化したら、あの時代のあの感じのエラーを起こして、とプロンプトするかもしれない(笑)」
――夢なのか悪夢なのか微妙ですよね。ただ、音楽のほかにもジャケットや映像表現に転用可能というところまで考えあわせると、快適なツールということになりましょうか。
「いまはすごくハマっていろいろやってみているけど、作業量は増えているんだよね(笑)。快適かといわれると……そんなことはない(笑)」
――最後に『Refractions』のジャケット中央に三角の白抜きのようなパートがありますが、これはなにを意味するのでしょう。
「なんだろう……ピンク・フロイドの『狂気』のジャケット? あれってプリズムで屈折(refract)させているじゃない」
――シド・バレットといいヒプノシスといい、ピンク・フロイドがお好きなんですか。
「シド・バレットが大好きなので、彼がいなくなってからは苦手なんですよね」
――それはピンク・フロイド好きとはいわないですね(笑)。でも『狂気』はビルボードチャートに世界で一番長くとどまりつづけたアルバムですから。『Refractions』もそうなるかもしれません。
「そういう感じで聴き継がれてほしいですね(笑)」
INFORMATION
Cornelius『Refractions』リリース記念〈タワラブ!〉キャンペーン

①〈タワラブ!〉B1ポスター掲出
タワーレコード限定の特別な写真を使用したCornelius〈タワラブ!〉B1ポスターを全国のタワーレコードで掲出します。
掲出期間:2026年8月18日(火)~2026年8月31日(月)
※終了日は店舗によって異なる場合がございます
掲出店舗:タワーレコードおよびTOWER RECORDS mini全店
②直筆サイン入り〈タワラブ!〉B1ポスター抽選プレゼント
Cornelius『Refractions』を対象店舗でご購入いただき、抽選へご応募された方の中から10名様に、直筆サイン入り〈タワラブ!〉B1ポスターをプレゼントします。店舗でご購入いただいた方は応募QRコード付きレシートより、タワーレコード オンラインでご購入いただいた方は特設ページ内の〈応募はこちらから〉より抽選にご応募いただけます。なお、応募にはタワーレコードメンバーズへの登録が必要となります。
応募期間:2026年8月18日(火)0:00~2026年8月31日(月)23:59
対象店舗:タワーレコード、TOWER RECORDS mini全店、およびタワーレコード オンライン
対象商品:Cornelius『Refractions』(WPCL-13774)
※サインは直筆のため、その過程においてポスターに一部汚れや折れ等が入る場合がございますが、返品・交換はできません
※賞品の第三者への転売やオークションでの出品・転売を固く禁止します
※当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます
③タワーレコード オリジナル特典

8thアルバム『REFRACTIONS』のタワーレコード オリジナル特典として、〈タワラブ! スマホサイズステッカー〉を先着でプレゼントします。メーカー特典〈ステッカー〉とのW特典となります。
※ご予約済みのお客様も対象となります
※特典の数には限りがございます。限定数満了次第、終了とさせていただきます
※タワーレコード店舗とオンラインでは特典の運用状況が異なる場合がございます
店舗でのご購入で特典ご希望のお客様は、各店舗に運用状況をご確認ください
④Mikikiインタビュー記事掲載
タワーレコードの音楽ガイドメディア〈Mikiki〉にて、小山田圭吾がアルバム『Refractions』の音楽とそのアートワークについて語ったロングインタビュー(当記事)を掲載します。
⑤「TOWER PLUS+ Cornelius 特別号」配布

「TOWER PLUS+」誌上初となる、表紙の「TOWER PLUS+」のロゴデザインを小山田圭吾が担当した、フリーマガジン「TOWER PLUS+」(B5変形)を無料配布します。中面には、タワーレコードの音楽ガイドメディア〈Mikiki〉のインタビュー記事を抜粋して掲載します。
サイズ:B5変型
ページ数:4P
配布期間:2026年8月19日(水) 開店~
配布店舗:タワーレコードおよびTOWER RECORDS mini全店
※「TOWER PLUS+」は、より多くの方に手に取っていただきたいため、お1人様各1部までのお持ち帰りとさせていただきます。無くなり次第配布終了となり、増刷の予定はございません。また、お取り置きはできません。ご了承ください
※配布開始時間は店舗により異なりますので、予めご了承ください。天候や交通事情により入荷が遅れる場合がございます
RELEASE INFORMATION
リリース日:2026年8月19日(水)
品番:WPCL-13774
価格:3,630円(税込)
TRACKLIST
1. Refractions
2. まざらない / Mazaranai
3. You Make me Cyborg Cornelius・Bid
4. Aeons Cornelius・Sean Ono Lennon
5. Mirrors
6. Bad Advice Cornelius・Arto Lindsay
7. 夢寝見 / Yumenemi
8. Mind Train
9. Twisting & Glistening
10. 溶解線 / Dissolving Line
LIVE INFORMATION
CORNELIUS REFRACTIONS TOUR 2026
2026年9月10日(木)神奈川・横浜 KT Zepp Yokohama
2026年9月12日(土)広島・広島 CLUB QUATTRO
2026年9月13日(日)福岡 Zepp Fukuoka
2026年9月19日(土)北海道・札幌 Zepp Sapporo
2026年9月22日(火・祝)愛知・名古屋 Zepp Nagoya
2026年9月23日(水・祝)大阪・難波 Zepp Namba (OSAKA)
2026年9月26日(土)宮城・仙台 PIT
2026年10月2日(金)東京・羽田 Zepp Haneda (TOKYO)
2026年10月3日(土)東京・羽田 Zepp Haneda (TOKYO)
2026年10月6日(火)東京・新宿 Zepp Shinjuku (TOKYO)
CORNELIUS REFRACTIONS TOUR 2027
2027年6月19日(土)イギリス・ロンドン バービカン・センター
PROFILE: Cornelius
1969年、東京生まれ。1989年、フリッパーズ・ギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後の1993年、Cornelius(コーネリアス)として活動開始。現在まで8枚のオリジナルアルバムをリリース。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、インスタレーションやプロデュースなど幅広く活動中。

