普段ファドって聴かないんだが、前情報無しで何気なく再生し、彼の歌声が耳に届いた瞬間何だかとてつもなく惹かれてしまい耳が離せなくなってしまった。本作はダンサー兼振付け師でもあり、〈ポルトガル音楽で最も興味深い歌声の一人〉とも評されている新星のデビュー作。すでに2021年に発表されていたらしく遅ればせながらのご紹介ではあるのだが、何だか自分だけの宝物を見つけてしまった気分だ。物悲しく切なく、哀愁に溢れた旋律は奥深い美しさがあり、不思議と湿り気は少ない。自作他作にかかわらずどの楽曲も、彼の心情に基づいて歌っているとしか想えない歌声の切実さがじわりと心に響く。