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J-POPと現代詩の融合を可能か?

小島「今回の『ちょりびゅーと』で、僕はプロデューサーの立場からポエトリーリーディング作品を音楽シーンに問うていきます。ミュージックラバーが見るMikikiさんにこの詩人の鼎談企画をあえて持ち込んだのは、例えばアイドルやロックバンドなど近年のJ-POP作品にポエトリーリーディングが取り入れられていて、消費されている面があるからなんです。その点はどう思いますか?」

望月「なるほど。自分は音楽もやっていますが、極論を言えば何をやってもいい、しかもタイミングもいつでもいいと思っています。なぜかというと、作曲家のエリック・サティの例を挙げますが、彼は対位法をちゃんと勉強しておらず、当初は批評家連中から〈素人のようだ〉と否定的な評価を受けていたんですね。それでパリのスコラ・カントルムで対位法などの楽典を勉強して、自信を持って新作を発表したら、〈何だこれは〉〈酷い〉とさらに否定されてしまったんです。さらにスコラ・カントルム入学前の作品を演奏する運動なんかも起こっちゃって。なので、何かを得ようと試みて得たものが実際に自分の身になるかどうかは運次第なのかなと思います。

音楽シーンでポエトリーリーディングが取り入れられていることも何かがうまくハマったら成功する可能性があると、サティのことを考えて思いますね」

文月「私は夫(坂東祐大)が現代音楽を中心に活動する作曲家なのですが、夫と親交のある米津玄師さんもライブで中原中也が訳したランボーの詩を朗読されたりしています。

小島さんが仰るアイドルは特にそうですが、J-POPは消費のスピードが早いので、消費が遅い文学や文学的なものへの憧れを感じます。そういったことを超えて、音楽と詩のリーディングを有機的に融合させた方だと近年感じているのが春ねむりさんです。ただポエトリーラップというジャンルも、現代詩とは距離があるのと、単独のアーティストの作品が聴かれる一方で、浸透して深まっていく時間がなかったように感じます。

私が夫とよく話しているのは、ポエトリーリーディングのアルバムを作りたいということなんですよね。私がテキストを作って、彼が音楽をつけて、という作品を作りたくて」

小島「マジですか!? ぜひやってください!」

文月「はい(笑)。ぜひ作りたいと思っています。リーディングの表現を取り入れたJ-POPをきっかけに、詩集を手にとってほしいですね。今広く受け入れられている推し活の文化は一つの対象をひたすら深掘りする印象なので、横に広がっていく受容のされ方がもっとあればいいなと思っています」

小島「アメリカにはビートニクがあって、ジャマイカには政治的な詩を詠むダブポエトリーがありますが、日本にはそういう文化がなかなかない。

僕が19歳の時にライブハウスで初めて詩の朗読をした時、目の前にギャルが2人おって爆笑されたんです。その経験が僕にとってすごく大きくて、〈こいつら、いつか絶対いわしたろ〉と思って、それを原動力に走ってきました(笑)。

つまり、自己満足の朗読をしているだけではかっこよくないと気がついたんです。お客さん、リスナーというものをもっと意識しないといけない。その点、音楽のオケがあると朗読の緊張感が中和されますよね」

文月「ただ、さっきも言ったように、音楽は消費のスピードやジャンルの更新が早い。良くも悪くもサウンドに時代感がのってしまうので、逆に音楽がない方が長く残る作品になる可能性もあります」

小島「僕はJ-POPに詩が取り入れられることには肯定的で、どんどんやって広まってほしいと思っています。ただ何をこんなに悩んでいるかというと……詩人として食べていくことがどうすれば可能になるんだろう、どうすればそのハードルが低くなるんだろう、ということを常に考えているんです。これは、choriもずっと抱えていたテーマですね。彼が詩人として食えていたら、おそらく39歳で亡くなることもなかった。

例えば川上未映子さんは当初音楽をやってはりましたが、詩のシーンに入って中也賞をとったんですよね。その後、小説家になって芥川賞をとりましたが、詩人としてだけ活動されていた時期は長くないんですね」

文月「昔、川上さんとお会いした時、〈私の文学的なヒエラルキーでは詩が最上位にある〉というようなことを仰っていて、感銘を受けた記憶があります。川上さんが責任編集をされた『早稲田文学増刊 女性号』でも、詩や短歌が多く掲載されました。2022年に芥川賞を取られた井戸川射子さんも、元々は詩人としてデビューされていますね。

最近は文芸誌の編集者と話しても現代詩のことを知らない方が多くて。その反応から、詩人側が詩の魅力を伝える努力を怠ってきたのでは……と私は反省したりもするのですが、そこから新しい企画に繋げていこうと頑張っています。文芸界でも現代詩と小説の世界を繋いでくれる存在がほとんどいない状況ですが、川上さんや井戸川さんは数少ないその一人です」

小島「なるほど。あと、今ヒップホップを聴いている若い人は言葉に対する感度が高まっている気がします。僕とchoriはTHA BLUE HERBがすごく好きで、BOSS THE MCのリリックはかなり深いですよね。そういうアーティストのファンに、活字の現代詩にも興味を持ってもらいたい。アーティストが現代詩に対する意識を持っていても、受け手が音楽のところで止まってしまってるのが現状なので。

choriはそこに橋を架ける場を作ることができた人間だったので、現代詩ともっと深く関わってほしかったという思いもあります」