本書の作品リストを確認すると、多いな! と驚く。生誕から晩年までを6つに分けて時系列で生涯を追う。すべての作品・交響曲改訂版やスケッチも時系列で扱う。例えば第1交響曲は通常なら番号順に第1稿続いて第2稿と出てくるが、ここでは第3章で1866年の第1稿を、間をおいて第6章で1890年の第2稿を紹介。覇気や成熟をより体験できる。彼の代名詞の「改訂」は外圧に四苦八苦する姿を想像してきたが、前述の第1交響曲に至ってはその逆で周囲の「修正しすぎないで、本当に」という声の中でブルックナーの意思で改訂。より高みを目指す素朴な芸術家像が浮かぶ。