当時、カラスのキャンセルを見事にカバーし、〈マリア・カラスの再来〉と騒がれながら30歳で引退してしまったイタリアのソプラノ、アニタ・チェルクェッティ。10年という短いキャリアのためセッション録音もごくわずか、しかしその濃密極まる期間の中で残された歌劇場でのライヴを、没後10年を機にヴェルディ音源で集成。50年代後半のモノラル・ライヴが中心だけに音質面では多くを望めないが、20代にして堂々たるヴェルディ・ソプラノとしての大器ぶりが確認できる。例えば“シチリアの晩鐘”(55年)や“ナブッコ”(60年)での恐れを知らぬ情熱とみずみずしさ! 往年の名だたる歌手たちの歌唱を同時に堪能できるのも大きなポイントだ。