話題の映画「ロボット・ドリームズ」を音楽監修の原見夕子が語る!!
昨年11月に日本公開されるやいなや、孤独なドッグとロボットの交流を描いたハートフルなストーリーが全国に感動の渦を巻き起こしているアニメーション映画「ロボット・ドリームズ」。スペイン人監督、パブロ・ベルヘルにとって初のアニメ作品である本作は全編セリフなしにもかかわらず、アース・ウィンド&ファイアの名曲“September”を筆頭に既発曲や劇伴が言葉以上のエモーションを物語に加えており、音楽も賛辞を集めています。そんな「ロボット・ドリームズ」のサントラが日本盤としてリリース。アルフォンソ・デ・ヴィラロンガの手掛けた劇伴に加えて、この日本盤だけのボーナス・トラックとして“September”も収録した特別仕様の一枚です。今回は、監督の公私にわたるパートナーで、「ロボット・ドリームズ」の音楽監修を担当した原見夕子さんにインタヴュー。ご自身の歩みから本作へのこだわりまで、たっぷりとお話いただきました。
80年代のNYをください!
――原見さんとパブロ監督はNYの映画学校で出会ったそうですね。
「はい。私は90年に写真学校に入るためにNYに行ったんですが、その学校を出たあと映画学校に入学したんです。もともと母親の影響で幼い頃から映画は生活の一部でした。パブロはその映画学校の教師だったんです。NYには10年くらい住んで、パブロの初めての長編映画を作るために渡西しました。それからはマドリードに住んでいます」
――パブロ監督の作品には「Torremolinos 73」(2003年)から関わっていますね。
「映画学校にいたときから、パブロは教師として私の作品に関わっていたわけで、一緒にものを作ることが私たちの核になっています。常に中心には映画がある感じ。パブロの長所はスタッフの意見によく耳を傾けることですね。いちばん大切なのは〈伝えたい話をセリフではなく映像でしっかり伝える〉ことで、そのためにスタッフ全員の頭脳をフル活用します」
――2017年の「アブラカダブラ」と今回の「ロボット・ドリームズ」ではミュージック・エディターとしてクレジットされていますが、その立場で特に気にしている点は?
「音楽は作り手の意図と登場人物の感情を正しく観客に伝えなければいけません。音楽によってシーンはドラマにもコメディーにもなるので。私がいちばん気を付けていることは、決して押し付けがましくならず、音楽が語りすぎないようにすることです」
――原見さんの音楽的なバックグラウンドを教えていただきたいです。
「幼い頃からピアノを弾いています。日本に住んでいた頃は、母がよく大阪フェスティバルホールのクラシック・コンサートに連れて行ってくれたものです。いま好んで聴いているのはクラシックとジャズですが、80年代はジュリアン・コープに熱狂していました」
――「ロボット・ドリームズ」の劇伴はジャズが基調になっていますよね。
「単純に、〈NYといえばジャズ〉という発想です。チック・コリア、ゲイリー・バートン、モダン・ジャズ・クァルテット、そしてブラッド・メルドーを参考にしました」
――作曲家のアルフォンソ・デ・ヴィラロンガはパブロ監督作の常連ですが、今回は彼にどうオファーしたんですか?
「〈80年代のNYをください!〉と頼みました。彼はあまりジャズを作らないのですが、NYに住んでいたこともあったので、求めてくれるものを理解してくれるだろうなと」


――劇伴のなかで原見さんの特にお気に入りの1曲は?
「あえて選ぶなら“The Card Players”でしょうか。メインテーマの4つのヴァリエーションのひとつですが、他のシーンより少し軽くするために楽器と音色を変えて、70~80年代のサウンドに近づけました。とても好きな場面なので音楽がぴったり合って満足です」
――“The Card Players”は、スキー場からの帰りの車中でドッグが窓にロボットの絵を描くシーンで使われていますね。私が特に愛聴しているのは、ドッグとロボットが公園を歩くシーンで流れるスティールパンが印象的な“Vivalding At The Park”です。
「スティールパンの音は、当時NYの公園や街中、地下鉄を満たしていました。このシーンでの演奏はちょっぴり素人っぽくて、本当にセントラル・パークで聴いているようです。この曲は大好きな映画『クレイマー クレイマー』へのオマージュでもあります。実は公園のシーンのなかに、ダスティン・ホフマンとジャスティン・ヘンリーがちらっと登場していますよ。木が開いて道が見える瞬間です」

〈Do you remember?〉がテーマ
――ちなみに“September”はどうやって思いついたんですか?
「初めから脚本に入っていた唯一の曲が“September”です。映画は9月に始まり9月に終わるので、単純にその理由からファンク好きのパブロが〈ふたりの歌〉として選曲しました。その後、冒頭の歌詞〈Do you remember?〉が映画のテーマそのものだということに気付き、さらに9月21日は私たちの一人娘の誕生日ということもあって、興奮しました」
――そのほかにもT・ラ・ロック、フィーリーズ、レーガン・ユースなど80年代中頃のNYでかかっていたであろう楽曲が劇中でたくさん使用されています。ラスカルが愛聴しているウィリアム・ベルの“Happy”も耳に残りました。
「ラスカルの年齢的に聴いていてもおかしくなく、彼のスタイルとキャラクターを象徴する歌を探していたところ、アート・ディレクターのホセ・ルイスが“Happy”を勧めてくれました。文字通りのハッピーな曲で彼の人柄にピッタリですよね」
――〈ハマった!〉とガッツポーズをしたような選曲はどれですか?
「ラスカルがロボットを再生させるシーンで使ったブッカーT & ザ・MG’s の“Hip Hug Her”です。出来上がった絵コンテ動画にこの曲を付けたときはテンションが上がりました。あとクライマックスの“Septermber”が上手くいき、アース・ウィンド&ファイアからOKが出たときにはガッツポーズが出ましたね。パブロのお気に入りは、ドッグとロボットが海水浴する場面の、ピーター・べンスによるピアノ版“Septermber”です。これを聴かせたとき、彼は涙していました(笑)」


――原見さんとパブロさんの「ロボット・ドリームズ」に続く新作はどんな作品になりそうですか?
「2023年5月のカンヌ映画祭から始まったプロモーション行脚の最終地が東京でした。それが去年の11月だったので、ようやくパブロが新作の脚本に取り掛かりはじめたところです。次は実写映画になりそうです」
――最後にタワレコのユーザーやサントラを手に取っている日本のリスナーにメッセージをお願いします。
「スペインにはタワーレコードがないので、とても懐かしいです。若い頃、大阪ミナミのお店に通いました。ぜひサントラでスペイン随一のメロディーメーカー、アルフォンソの心に響く音楽を堪能してください。“Septermber”が入っているのは日本盤だけですよ! 最高です!」
パブロ・ベルヘル監督の2012年の長編映画「ブランカニエベス」(松竹)
「ロボット・ドリームズ」に使用された楽曲が収録された作品を一部紹介。
左から、フィーリーズの86年作『The Good Earth』(Coyote)、ブッカーT&ザ・MG's の67年作『Hip Hug-Her』(Stax)、ウィリアム・ベルのベスト盤『The Man In The Street: The Complete Yellow Stax Solo Singles 1968-1974』(Ace)、T・ラ・ロックの87年作の日本独自編集盤『Lyrical King +7』(Fresh/OCTAVE)
アルフォンソ・デ・ヴィラロンガの作品。
左から、2020年のサントラ『Nieva En Benidorm』(Quartet)、2020年作『Hors De Saison』(Satelite K)
MOVIE INFORMATION
「ロボット・ドリームズ」

第96回アカデミー賞長編アニメーション映画賞ノミネートを果たし、アニー賞、ヨーロッパ映画賞、ゴヤ賞ほか名だたる映画賞を席巻。孤独なドッグと、その元へやってきたロボットとの友情を描き、世界中の批評家と観客から愛された本作。監督を務めたのはヨーロッパを代表する名匠パブロ・ベルヘル。アニメーション映画は初挑戦ながら、切ないながらも温かく、観るものの心を揺さぶる類まれな傑作として結実させた。
大都会NY。ひとりぼっちのドッグは、孤独感に押しつぶされそうになっていた。そんな物憂げな夜、ドッグはふと目にしたTVのCMに心を動かされる。
数日後、ドッグの元に届けられた大きな箱――それは友達ロボットだった。セントラル・パーク、エンパイア・ステート・ビル、クイーンズボロ橋……NYの名所を巡りながら、深い友情を育んでいくドッグとロボット。ふたりの世界はリズミカルに色づき、輝きを増していく。
しかし、夏の終わり、海水浴を楽しんだ帰りにロボットが錆びて動けなくなり、ビーチも翌夏まで閉鎖されてしまう。離れ離れになったドッグとロボットは、再会を心待ちにしながら、それぞれの時を過ごす。やがてまた巡りくる夏。ふたりを待ち受ける結末とは……。
監督・脚本:パブロ・ベルヘル
原作:サラ・バロン
音楽:アルフォンソ・デ・ヴィラロンガ
音楽監修:原見夕子
美術:ホセ・ルイス・アグレダ
配給:クロックワークス
(2023年/スペイン、フランス)
https://klockworx-v.com/robotdreams/
EVENT INFORMATION
「ロボット・ドリームズ」ファンミーティング
2025年1月31日(金)タワーレコード渋谷店 6F TOWER VINYL SHIBUYA
開始:19:00
出演者(予定):パブロ・ベルヘル監督/高橋芳朗
観覧自由
https://towershibuya.jp/2025/01/14/208781
