NOBODYがレコ―ドデビュー40周年を祝ってアルバム再発やレア曲集のリリースを2022~2024年におこない、タワーレコード限定発売したのは記憶に新しい。相沢行夫&木原敏雄監修、2人が音へのこだわりを貫いた肝いりの企画だった。しかしその矢先、2025年3月25日に木原が75歳で死去。多くのヒット曲や優れた作品を生んだ才能の死を惜しむ声が広がっている。
今回は木原への追悼の思いを込め、彼らが歌謡曲/J-POPに遺した功績を振り返る。再発プロジェクトについての記事ではカバーしきれなかったNOBODYの重要な提供曲の数々、またそれらの意義を音楽評論家・小川真一に論じてもらった。 *Mikiki編集部
HOUND DOGや吉川晃司、〈ミュージシャンが作りそうな曲〉でヒット連発
NOBODYの名前を意識したのは、1982年に発売されたHOUND DOG“浮気な、パレット・キャット”が最初だった。軽快でタイトなロックンロールナンバーで、聞いた当初はメンバーによるオリジナル曲だと思い込んでいた。それだけバンドのキャラクターに似合っていたのだが、この〈ミュージシャンが作りそうな曲〉というのが、NOBODYの大きなセールスポイントとなっていく。
当時のクレジットはNOBODYではなく、相沢行夫と木原敏雄の連名だったのだが、“浮気な…”がユニットとして初めての外部への提供楽曲となった。ご存知のように、彼らはもともと矢沢永吉のバッキングミュージシャンとしてスタートし、自分たちも歌いたいという気持ちからNOBODYを結成した。演奏してアルバムを出す音楽ユニットであると同時に、ソングライターチームであるという形態が独創的だ。このようなスタイルは、日本ではあまり例を見ない。
ソングライターとしては、森雪之丞、三浦徳子、売野雅勇といった作詞家たちと組むことが多く、NOBODY=相沢&木原の作曲家チームとしてクレジットされていた。“浮気な、パレット・キャット”で注目を集めたのち、彼らにソングライティングの依頼が舞い込むようになり、アン・ルイス“LUV-YA”、吉川晃司“モニカ”、浅香唯“C-Girl”といった大ヒットを連発していくこととなる。
歌謡曲を洋楽ロック/ポップスへ塗り替えた功績
NOBODYの作風の一番の特徴は、なんといってもロックやポップスへのこだわりだ。リバプールサウンドであったり、オールディーズポップスであったり、これらの要素が実に巧みに盛り込まれている。盛り込むと言っても、これは剽窃などとはまったく次元の違ったリスペクトであり、自分たちの音楽体験から自然と滲み出たものであるのだ。
このロッキンな要素が時代とマッチした。いや、時代をリードしていったと言ってもいい。80年代以降の歌謡曲がロックに塗り替わっていったのは、NOBODYの功績が大きかったといえる。例えば、浅香唯“恋のロックンロール・サーカス”、アン・ルイス“六本木心中”、荻野目洋子“フラミンゴ in パラダイス”などで、お茶の間にロックンロールをふりまいていった。それだけではなく、沢田研二“彼は眠れない”、中川勝彦“SALTY LADY”などのように、時代の先端を切り裂くようなニューウェイヴ感覚を持ち込んでいったのも、NOBODYの二人であったのだ。
これは楽曲提供というよりも、ミュージシャン同士の共同作業に近いのだが、山下久美子の1983年のアルバム『Sophia』における“Please Don’t Go”“Darlin’ Darlin’”が印象に残る。柳ジョージ“HURRY UP, BABY!”などもNOBODYらしい仕事だったといえるだろう。
さらに興味深いのは、提供した楽曲をNOBODYのバージョンとしてセルフカバーしていることだ。例えば、吉川晃司“モニカ”を“MONICA”のタイトルでカバーしているのだが、このパターンでいうと、沢田研二“月のギター”を“ALL ALONE”、HOUND DOG“浮気な、パレット・キャット”を“PARTY CAT”として英語の歌詞にして演奏している。これらは種明かしというか、より洋楽度が増し、彼らの音楽的なルーツを垣間見ることできるのだ。
RELEASE INFORMATION
NOBODY レコ―ド・デビュー40周年
NOBODY|レコ―ド・デビュー40周年! アルバム6作品が2022年/2023年最新リマスタリング、初出となるボーナス・トラックも収録しタワーレコード限定発売
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2022/11/02/0702
NOBODY|レコ―ド・デビュー40周年記念第3弾! EASTWORLD/ユニバーサル期の傑作が相沢行夫&木原敏雄監修のもと、2023年REMIX、初出を含むボーナス・トラックも追加収録し、タワーレコード限定CD発売!
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2023/03/08/0704
NOBODYレコ―ド・デビュー40周年記念第4弾! HUMMING BIRD/ワーナー期の2タイトルが相沢行夫&木原敏雄監修のもと、2023年最新リマスター仕様、ボーナス・トラックも追加収録し、タワーレコード限定CD発売!
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2023/05/18/0701
NOBODY|レコ―ド・デビュー40周年記念第5弾! 相沢行夫&木原敏雄監修のもと、90年代初期の2作品が初メディア化となる貴重音源やライヴ映像をふんだんに追加した拡大版としてタワーレコード限定発売!
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2023/08/30/0702
NOBODY|レコ―ド・デビュー40周年記念第6弾! 相沢行夫&木原敏雄監修のもと『LIVE 2 (+7)』、『FUZZ FUZZ FUZZ (+8)』の2作品が初商品化となる貴重音源をボーナストラックとして追加して11月22日タワーレコード限定発売
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2023/10/25/0701
NOBODY|レコ―ド・デビュー40周年記念第7弾! 相沢行夫&木原敏雄監修のもと、完全未発表スタジオ音源、発掘音源、初音盤化音源、別名義で発表された作品などを含むレア音源集『RARE NOBODY』を2枚組として3月13日タワーレコード限定発売!
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2024/02/15/0701