矢沢永吉バンドを経た相沢行夫(ボーカル/ギター)と木原敏雄(ボーカル/ギター)が81年に結成したグループ、NOBODY。吉川晃司、アン・ルイス、HOUND DOG、小泉今日子、浅香唯といったアーティストへの楽曲提供やサウンドプロデュースを行い、80年代のシーンを席巻したソングライターユニット/プロデューサーチームだ。そんなNOBODYが当時発表した傑作群が、2人の監修のもと最新リマスタリングされ、初出のボーナストラックを多数追加、最新インタビューの掲載もしたCDがタワーレコード限定でリリースされた。さらに6月28日(水)には、『HALF A BOY HALF A MAN (2023 Remix) (+4)』と『ON! (2023 Remaster) (+5)』も新たにリイシューされる。今回は、レコ―ドデビュー40周年を迎えたNOBODYの音楽と既発の8作に、ロック漫筆家・安田謙一が迫る。 *Mikiki編集部

 

ロックンロールのうたごころ。バンドの名前はNOBODY。

NOBODYは相沢行夫と木原敏雄のふたりからなるロックンロールバンドである。相
沢は矢沢永吉の“アイ・ラヴ・ユー、OK”(75年)の作詞をてがけ、木原はCAROLより前に矢沢が組んでいたYAMATOのメンバーでもあった。ふたりそろってCAROL解散後の矢沢がソロ活動をスタートさせた時期に彼のサウンドを支えるギタリストとして活躍、ふたりとも歌詞を提供している。

そんなふたりが81年に自身が歌うバンド、NOBODYを結成する。レコードデビューより先にグループとしての提供曲であるHOUND DOG“浮気な、パレット・キャット”(82年)のヒットを飛ばす。その後も、ソングライターとして、後述するバンド活動と並行して、アン・ルイス“六本木心中”(84年)、吉川晃司“モニカ” (84年)、“サヨナラは八月のララバイ”(84年)、“You Gotta Chance ~ダンスで夏を抱きしめて~”(85年)、“にくまれそうなNEWフェイス”(85年)、浅香唯“C-Girl”(88年)など数多くの作品を残している。

浅香唯の88年作『Candid Girl』収録曲“C-Girl”

ビートルズが来日した頃に高校生だったふたりは当たり前のように彼らからの影響を受けた。ここで紹介する80年代の作品は、時代とともにアルバムごとにサウンドは変化するが、その核となるのは〈ロックンロールのうたごころ〉だ。付け加えるなら、ジョン・レノン成分多め、である。

このたびのレコードデビュー40年を記念しての再発は相沢と木原ふたりの監修によるもの。多数のボーナストラックにも注目が集まる。

 

『NOBODY』(82年)

NOBODY 『NOBODY (2011 REMIX) (+10)』 Tower to the People/ワーナー(2022)

デビューシングル『MY ROAD SHOW/NEVER SAY NO』を収録、同じ82年6月21日に発売されたファーストアルバム。全曲、英語詞によるオリジナル曲で構成されている。演奏は相沢と木原のふたりが多重録音、ドラムサウンドにはリンドラムLM-1が使用されている。今回のリイシューでは2011年のリミックス音源が採用されており、ふたりが本来目論んだ、60年代のマージービートサウンドとして違和感のないミックスがほどこされている。ツボを押さえたアンサンブルによって、ドラマーの不在をまったく感じさせることなどない。活きのいいバンドサウンドが炸裂している。収録曲すべてのデモ音源も10曲ボーナス追加されている。

 

『POP GEAR』(83年)

NOBODY 『POP GEAR (2011 REMIX) (+14)』 Tower to the People/ワーナー(2022)

83年4月に発売されたセカンド。ストイックなまでにマージービートの質感を追求したファーストの世界を継承しつつ、よりポップの鮮度を高めている。アン・ルイスに提供した“LUV-YA”、山本達彦への“MARILYN”(“MY MARINE MARILYN”)のオリジナルを収録。全10曲のうち5曲は日本語詞で歌われている。“SHAKE SHAKE SHAKE”ではニューウェーブ感覚も表現している。アルバム10曲のデモ音源に加えて、シングル『リバプールより愛をこめて/MAD DREAMER』と、それぞれのデモ音源もボーナス収録。