幼少期から霊的な感性を持ち、その感覚を活かした表現や創作活動を繰り広げている歌手/作曲家の總水とおま(読み:そうすとおま)。彼女による〈音楽ギルド〉、超次元トリッパー☆イシュタールの3rdアルバム『響新共命』(読み:きょうしんきょうめい)がリリースされた。〈メディテーションロック〉という未知の音楽を提示した本作は、周波数432Hzを基準に制作された異色のロックアルバムで、メッセージを伝えつつ聴き手に共鳴を促す。總水とおまとはどのような表現者なのか? 超次元トリッパー☆イシュタールとはどんなプロジェクトなのか? インタビューで深掘りした。

超次元トリッパー☆イシュタール 『響新共命』 原宿voiceBeat-oz Label(2025)

 

クラシックピアノに映画音楽、總水とおまのルーツ

――初インタビューなので遡って質問させてください。〈覚醒体験映画〉シリーズについての対談記事で「幼少期は体が弱くピアノばかり弾いていた」とおっしゃっていましたが、その辺りが音楽の原体験でしょうか?

「そうですね」

――弾いていたのはクラシックですか?

「そうです。ポップスやロックを聴くようになったのは本当にここ数年ですね」

――ピアノを始めたきっかけを教えてください。

「うろ覚えですが、母がピアノ教室の体験に連れて行ってくれたら楽しくなっちゃって、親にお願いして続けていました。中学時代に一度やめたのですが、高校3年の時に〈やっぱり音楽の道に進みたい〉と思い、ピアノをちゃんと勉強するために先生を見つけて音楽学校に行く選択をしました」

――音楽の道に進もうと思ったきっかけは何だったのでしょう?

「高校では野球部でマネージャーを務めていたのですが、入部した年に甲子園へ行ったんですね。その道筋を全部見せてもらい、〈自分もやりたいことをちゃんとやらなきゃ〉と思ったんです。それで音楽を選びました。元々、自分の気持ちを他人に話すのが得意じゃなかったので、音で気持ちや思いを表現する方が合っていましたね」

――その頃も取り組んでいたのはクラシックですか?

「勉強はクラシックが中心でしたが、映画音楽が大好きで耳コピしていました。いま思い出したのですが、子どもの頃は戦隊シリーズが大好きで、戦隊ものの主題歌や音楽を耳コピして弾いていたんですよ。そういった世界観を表現する音は魅力的でしたね。それも映画音楽が好きなことに繋がっていると思います」

――映画音楽というとどの辺りですか?

「何でも好きで、『雨に唄えば』から『ジュラシック・パーク』まで年代問わず古い映画も映画館で見ていましたね。ハンス・ジマーの音楽も大好きですし、エンニオ・モリコーネも感動しながら聴いていました。コピーしたのは邦画の方が多かったかもしれません」

――總水さんの音楽は映像的ですが、そのルーツは映画音楽だったんですね。

「おっしゃる通りです。空間を彩る音楽が好きなんだと思います」

――ポップスやロックに触れたのはいつ頃ですか?

「制作会社に声をかけていただいて音楽を作りはじめたのですが、〈いま音楽ってどんな形態で作られているんだろう?〉と思って色々と聴いていきました。ロックをやろうと思った時も、ピアノしか知らないのでギターとドラムを習いに行ったんです。音の構成も見える景色も自分が知っていた音楽と違ったので、ギターへの気持ちの乗せ方などに興味があって勉強しました。

先生がおすすめしてくれる音楽も色々と聴きましたね。私が作る曲は北欧っぽいと言われて北欧のロックを聴いたり、〈これはブリティッシュっぽいね〉と言われたらブリティッシュロックを聴いたり」

――クラシックピアノをやっていた方にとって、コードやリズムが中心のポップスやロックの作曲、演奏はまったく異なる世界ですよね。

「そうですね。ピアノで表現したい世界がバンド形式になった途端まったく変わってしまうので、その2つの共通言語をずっと探しています。〈こういうことを表現したい〉という思いがあるのに、バンドメンバーと同じ言語で話せていないことに最初はショックを受けました。でも何年も伝えてきたことで、最近は〈とおまちゃんはこれがやりたいんだね〉と理解し合えるようになれたと思います。3枚目にして、やっと思い描いている音に近づけました」