2026年5月30日、L’Arc-en-Cielが結成35周年を迎えた。8月には初出演となる〈SUMMER SONIC 2026〉でヘッドライナーを務め、10月からは全国各地のアリーナを巡る〈35th L’Anniversary TOUR〉の開催も控えている。
Mikikiでは、そんなL’Arc-en-Cielの歴史を全12枚のオリジナルアルバムとともに振り返っていく。第1弾、第2弾に続く第3弾では、9thアルバム『SMILE』から12thアルバム『BUTTERFLY』までのレビューをお届けする。 *Mikiki編集部
『SMILE』
by 天野龍太郎
90年代というJ-POPの黎明期にして黄金期のひとつであるディケイドを駆け抜けたL’Arc-en-Cielは、2000年の『REAL』でひとつの極点に達した、行くところまで行った、と言っていいだろう。多忙で多作な活動期を経て、メンバーはソロ活動に向かい、2002年にはhyde脱退の危機を迎える。そんな経緯もあり、本作はアルバムとして3年7か月ぶりのリリ-スになった。
だからこそシングル“READY STEADY GO”で本格的な復活を果たしたときは、いちファンとして心の底から嬉しかった。歌詞もファンに語りかけているように聞こえたし、発売日にCDを買いに行った思い出がよみがえる。活動していない期間があったにもかかわらず、あの頃、ラルクは教室内の共通言語だった。
この9thアルバム『SMILE』は、ずいぶんソリッドに削ぎ落された、こう言ってよければ派手さのないロックアンサンブルがベースになっている。メジャーデビュー以降、ポップな曲作りに挑んだり、編曲面ではエレクトロニックミュージックの要素を取り入れたり、ストリングスやホーンセクションを組み入れたりしてきた彼らだが、〈4人で演奏を楽しむ〉という原点に立ち戻ったことが刻まれているように思えてならない。だからこそ、ほかのアルバムよりも統一感が感じられる。彼らのディスコグラフィにおいて、もっとも〈ロック〉なアルバムと言ってもいいかもしれない。2001年発表の“Spirit dreams inside”が少々浮いてしまっていることは否めないが、『REAL』までのラルクと『SMILE』以降のバンドを繋ぐ重要なピースとしてラストに収まっている。
hydeの歌も、美しく耽美的で伸びやかというより、どこかやさぐれた感覚、刺々しいクールさを感じさせ、深みを増した低音が本作の特徴だと感じる。kenのギターもクランチを効かせた音でジャキジャキとコードストロークする場面が目立つ。特に彼が作曲した“接吻”、hyde作曲の“永遠”、yukihiro作曲の“REVELATION”あたりが顕著で、グランジやメタルに通じるヘビーな合奏が光っているし、tetsuya作曲の“READY STEADY GO”に至っては、元はプリンスを意識した曲だったにもかかわらず、グッド・シャーロットのようなアメリカのポップパンクバンドのアレンジに寄せていったのだという。ちょうど私もそういったパンクにハマっていた時期だったし、本作は同時代のロックシーンの影響をリアルタイムで反映したアルバムだと言える。
ken作の“Feeling Fine”は実に伸びやかでポップなメロディだが、編曲はロックコンボを中心にしたシンプルなもの。tetsuyaらしい“Time goes on”にはティンパニーが加えられているなど、ウォール・オブ・サウンドっぽいポップなアレンジがなされているとはいえ、シンセサイザーの音などは控えめなミックスでアコースティックギターをベースにした演奏が前面に出ている。これが90年代だったら、もっと手の込んだアレンジが施されていたのではないだろうか。
本作は、アニメ「鋼の錬金術師」とのタイアップの始まりになった“READY STEADY GO”(オープニングテーマ曲)が収録されていることから、バンドの人気をアジアなど海外へさらに広げていった転機作としても重要だ(ラルクのキャリアを語るうえで、アニメタイアップの話題は避けて通れない)。それだけでなく、『ray』の退廃的な世界、〈未来も何もない〉というアポカリプティックで刹那的なヒリヒリした感覚がいまもってモストフェイバリットである私としては、この『SMILE』のエッジの効いたロック感は否定しようがない。しかし『SMILE』は、タイトルどおり『ray』よりも開放感に満ちている。この表情もまた、ラルクというバンドが持つひとつの面なのである。
