Page 2 / 3 1ページ目から読む

息苦しい都会がどんなに嫌いでも、私たちにはここで音楽をやる理由がある

――そして音楽としっかり向き合い、この新しいEP『風がゆく若色の街』を完成させたわけですね。まず、背景は白黒、人物だけがカラーのジャケットが凄く印象的でした。楽しそうなんですけど、どこか物悲しくて。

山路「有斗夢からタイトルの提案があったときに、ここ2、3年、バンド活動を通じて見てきた風景を思い出したんです。バンドをやるために通っている福岡市は、九州の中では大きな都会で、私は田舎の出身だからかもしれないですけど、歩いているだけで苦しくなることがあるんです。ビルとビルの間に押しつぶされそうな気持になったり、喧騒が耳障りで逃げ出したくなったりするんですよね。

でも、どんなに嫌いだと思っても、私たちにはここで音楽をやる理由がある。それってこの街に魅力を感じているということでもあるから、あまり悲観しなくてもいいんだなって、そういう気持ちで描きました」

――作品のコンセプトも福岡の街だったのですか?

山路「いえ、最初から作品のコンセプトを話し合っていたわけではなく、私と有斗夢が、それぞれ思っていることをリアルに曲にしたら、福岡の街のことやそこに集まる少年少女たちが思っていることを描いた作品としていい感じにまとまった、みたいな感じですね」

――音、曲、メロディ、アレンジ、あらゆる面で強度や表現力が増していると感じたのですが、いかがですか?

永松「前作の『SEARCH感受YOUTH』は、すごく衝動的で、最初にギターのフレーズがあって、スタジオでほかの音を合わせてメロディを乗せてバッと録る、みたいな感じでした。

それに対して今作は、 “ユース・キャンドル”は僕、“それがすべて”と“フィールドアンドサンセット”はあげは、4曲のうち3曲はそれぞれ弾き語りで作ったものがベースになっています。最初にメロディがあって、歌を響かせることにフォーカスしたことが、〈表現力が増した〉とおっしゃっていただいた要因な気がします」

 

普段は言えないことを歌にしているから、腹から声を出さないと

――1曲目の“それがすべて”は、ラウドなギターサウンドとレトロな和を感じるメロディのマッチングが強烈ですね。このメロディのルーツはどこにあるんですか?

山路「自分でもわからないんですよね(笑)。カラオケに行ったら中島みゆきさんや山本リンダさんの曲をよく歌うんですけど、歌謡曲を意識した感覚はまったくなくて。

自分でいちばん納得できたのは、小学生の時に習っていたコーラスで歌っていた童謡や合唱曲ですね。歌うことが好きになったきっかけがコーラスだったと、幼少期のことを思い出しながら書いた曲でもあったので」

――ボーカルのパワーがすごいですよね。

山路「変な話なんですけど、私、高校1年生くらいまで無自覚に裏声で話してたんですよ(笑)」

――人と話すときも?

山路「はい。だから話す声が小さかった。まあそれは今もなんですけど。でも歌うときは、せっかく普段は恥ずかしくて言えないようなことを言葉にしているんだから、腹から思いっきり大きい声を出さないとなって、そこは意識しています」

今橋「歌の持つ力をぞんぶんに感じられる曲だと思います。若い人から親世代まで、ライブでの反響がめちゃくちゃいいんですよね」

――ハチロクのどっしりしたドラムも歌とともに響きます。

今橋「メロディがすごくよくて、曲のイメージもはっきりしているので合わせやすかったので、一発一発の音に気持を込めて叩きました」

 

うまく大人になれない、でも知らないうちに大切な何かをなくしている

――“ユース・キャンドル”は永松さんが書いた曲ですね。

永松「〈大人にならなきゃいけないな〉って思うんですけど、今でも自分は5歳の頃の、小学生の頃のままのような気がするんです。でも、野球部で坊主だった髪が今は伸びっぱなしになっていて、そういうところで年齢を実感するっていう、うまく大人になれていない自分に気づいたことに端を発する曲ですね。

そこにはバンドのことも含まれていて、やっぱりちょっと焦ってる。それによって、曖昧な言い方になりますけど、知らないうちに大切な何かをなくしていってる気がしていて、もうその前には戻れないのかもなって、切ない気持ちにもなっている。そんな曲ですね」

――今橋さんが刻むドラムの個性も奏人心の特徴だと思っていて、この曲はキックの抜き方によって生まれる独特の間しかり、そのことを象徴する曲だと思いました。

今橋「全体的な話になりますけど、前作はライブを意識した、自分のプレイでどれだけお客さんを楽しませられるかという感覚で、今回は有斗夢やあげはの作ったメロディと2人のボーカルを際立たせることを意識しながら、自分の感覚をプラスしていきました」