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僕らが再び来るかどうかは、君たち次第だ

『In Color』の隠れた名曲、“Oh Caroline”にも仰天した。MCでリックがコードの少なさを指摘して笑わせたが、ロビンのボーカルにフィットしたやるせないメロディが抜群。リックが愛するヤードバー“Heart Full Of Soul”のイントロで締めるアレンジは、彼らと同じく武道館のステージに何度も立ったジェフ・ベックを思い出させた。

“The Flame”では観客が次々とスマホのライトを点灯、白い光に囲まれてロビンが切々と歌う。作家の曲を押し付けられたことにリックが愚痴り続けたいわくつきのヒット曲でもあるが、もはやそんな過去も遠い昔。〈渾身の〉という形容が大げさでない、ロビンの情感豊かな歌唱にただただ圧倒された。この曲を苦手に思っていた人でも、心を揺さぶられるハイライトになったはず、と思う。

日本で彼らの人気を決定づけたヒットシングル“I Want You to Want Me”と“Surrender”は、『At Budokan』に欠かせない名演中の名演でもある。再びチープ・トリックが武道館に戻ってくる日を誰より楽しみにしていた初代担当ディレクター、故・野中規雄氏の顔を思い浮かべながら、本編ラストの2曲を見届けた。今さら言うまでもなく、日本での大ブレイクなくして現在のチープ・トリックは無い。思わずシングアロングを誘うメロディのマジックを広く世界に伝えた『At Budokan』の偉大さを、改めて感じずにはいられなかった。

アンコールは、チープ・トリックのハードネスを凝縮した名曲中の名曲、“Auf Wiedersehen”でスタート。ニルヴァーナなどグランジ/オルタナティヴ勢から、この曲をカバーしたアンスラックスに至るまで、〈その後のロック〉の源流に位置する狂おしい演奏、のどをつぶさんばかりのロビンの激唱が壮絶だ。これが本当にフェアウェルツアー中のバンドなのか?と目を疑わずにはいられなかった。

続く“Dream Police”での張り切りっぷりを見ても、リックはまだまだ元気。冗談なのかマジなのか、弦を押さえる指が痛そうな素振りをする場面もあったが、4年前のオンライン取材時に彼が言った「絶対に引退しないぞ!」という言葉を信じたい気分、というのが正直なところ。長いツアーが無理になっても、ステージで倒れる瞬間までギターを手放さない男のはず……と思いながら、この曲でお馴染みのピックばらまき儀式を眺めていた。

ラストは当然、“Goodnight”で全力疾走して終了。ロビンはMCで惜別の言葉でも言うのかと思ったら、「僕らが再び来るかどうかは……君たち次第だ!」と、少しだけ希望を残してくれた。熱烈なファンの声が届いたら、もう一度奇跡が起こる可能性があるのではないか。

振り返ってみると、リックの5ネックギターや、ド派手ギターへの持ち替えも、“Surrender”でのピック付きレコードぶん投げも無し。スクリーンの演出も必要最小限で、本当に4人の演奏のみで駆け抜けた一夜だった。ギミック抜きで、一切手抜きなく真剣勝負を見せてくれた正真正銘のリヴィングレジェンド。彼らのファンでいられたことを、これほど誇りに思った夜はない。これぞチープ・トリック!と言い切れる最高のショウを作り上げてくれた4人とクルーに、惜しみなく拍手を送りたい。

 


SETLIST
1. Hello There
2. Come On, Come On
3. Lookout
4. Big Eyes
5. Need Your Love
6. Clock Strikes Ten
7. Ain’t That A Shame
8. Elo Kiddies
9. High Roller
10. The Ballad Of TV Violence (I’m Not The Only Boy)
11. California Man
12. Twelve Gates
13. I Know What I Want
14. On Top Of The World
15. Oh Caroline
16. The Flame
17. I Want You to Want Me
18. Surrender
ENCORE
19. Auf Wiedersehen
20. Dream Police
21. Goodnight

チープ・トリック日本公式サイト:https://www.sonymusic.co.jp/artist/CheapTrick/
『ライヴ1979』特設サイト:https://www.110107.com/CT_LIVE1979
来日公演特設ページ:https://udo.jp/concert/CheapTrick25