“Saturday”で歌われる主人公は全く〈動かない〉
Mr.Childrenのニューアルバム『産声』のリリースが迫ってきたが、どうしても触れておきたい曲がある。“Again”に続き、アルバムの全体像を掴むための新たなヒントとして配信リリースされた“Saturday”だ。バンドのこれまでの在り方を象徴する楽曲であるとともに、Mr.Childrenの強いこだわりが感じ取れるブラスロックなナンバーでもある。
まず先に触れておきたいのが、“Saturday”がシカゴの代表曲“Saturday In The Park”を大々的にオマージュしているということ。これは一聴した誰もが感じたことだと思うし、ブラスやピアノをフィーチャーしている点や、〈自由の匂いでも嗅ごうか〉と歌われた直後から3拍子に移行する展開まで、意図して“Saturday In The Park”の旨味と言える要素を入れ込んでいるのだろう。
ただ、“Saturday”はそうした影響源を明確にすることでMr.Childrenのオリジナリティの部分が際立つ構造にもなっている。イントロからAメロにかけてのコード進行、前述した可変拍子の箇所などは特に“Saturday In The Park”を彷彿させるが、一方で〈汗水流しながら〉のフレーズを皮切りに音数がぐっと絞られ、〈風の歌 聴きながら〉で再びブラスやピアノが合流する流れは実にJ-POP的な展開だと言える。こうしたオリジナルな部分を浮かび上がらせる意味でも、この機会に“Saturday In The Park”をしっかりと聴き返してみるのもいいだろう。
また、歌詞においても非常にMr.Childrenらしさが溢れている。〈土曜の午後は ひとり部屋に座り〉から〈快晴の空に〉までの1コーラス目はすべて部屋の中での話、もっと言えば部屋の中にいる主人公の頭の中の独り言のようにも聞こえる。その後は〈締め切ってた窓を/全部開け放って/自由の匂いでも嗅ごうか〉と続くが、あくまで意向を述べているだけでやはり部屋からは出ていない。開放感のあるサウンドの“Saturday”だが、そこで歌われている人物は全くその場を動いていないのである。
そして曲は〈僕らの世界はこんなにも複雑で/簡単だ〉と締め括られるのだが、ここが最もミスチルらしい部分。次の休みには着るものを整理しようか、公園でも散歩しようか。そんなありふれたことを部屋で1人考えながらも、最後には〈僕らの世界〉のような誰かとのつながりを意識した視点がもたらされる。それはどこか“彩り”や“HANABI”あたりにも通じるもので、精神的な意味合いでの〈世界〉が曲の進行とともに物理的に我々が生きる〈世界〉へとすり替わっていくのだ。