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〈描く人〉の尽きぬ熱量をその手に。目と耳で味わう、名クリエイターの軌跡

 「機動戦士ガンダム」という名作の世界に足を踏み入れたきっかけは、同作のキャラクターデザイナー兼アニメーションディレクターだった安彦良和による漫画「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」を読んだことだった。シャア・アズナブルの貴種流離譚と、それゆえの反骨精神に一瞬で魅了され、すべてを赤く塗りつぶしたい衝動に駆られたのをよく覚えている。

 北海道の開拓民3世として生まれ、大学では学生運動に参加したという安彦良和。その来歴は、彼の作品にどんな影響を与えたのか――。それを紐解く回顧展「描く人、安彦良和」が今、全国の美術館を巡回している。本展は安彦の少年期、青年期の歩みも振り返りながら、上京してアニメ制作に加わり、漫画家へと転身する激動の半生を振り返るもの。「機動戦士ガンダム」「クラッシャージョウ」「巨神ゴーグ」といったアニメーションから、漫画「ナムジ」「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」まで多彩な分野の作品をすべて取り上げ、そこに共通するテーマに迫っている。

 そんな回顧展にふさわしい、特別なアルバムがリリースされた。『安彦良和 アニメーション作品 音楽集』は、安彦作品の中でも高い人気を誇るアニメーションの主題歌、劇中曲、印象的な劇伴音楽など40トラックを2枚組で収録。各レーベルのオリジナル音源が、展示の流れを意識した選曲と構成で集約されている。たとえば「宇宙戦艦ヤマト」では、安彦の絵コンテが絶賛されたシーンの曲を厳選。「機動戦士ガンダム」では、映画第1作と第2作の主題歌の間にエモーショナルな劇伴を挿入するなど、細部へのこだわりもたまらない。

VARIOUS ARTISTS 『安彦良和 アニメーション作品 音楽集』 SUNRISE Music Label(2025)

 ブックレットには、安彦が原盤制作時に描き下ろしたジャケットイラストを図録風に掲載。目と耳で、安彦作品の世界に没入できる仕組みだ。今回のスリーブケースもまた、安彦良和が3日で仕上げたという描き下ろしイラストが飾る。〈描く人〉の尽きることのない熱量を、ぜひその手で感じてほしい。

 


EXHIBITION INFORMATION
描く人、安彦良和
YASUHIKO Yoshikazu: Divine Animator and Draftsman

2025年11月18日(火)~2026年2月1日(日)松涛美術館
前期:2025年11月18日(火)~2025年12月21日(日)
後期:2025年12月24日(水)~2026年2月1日(日)
※会期中、展示替えあり
https://shoto-museum.jp/exhibitions/210yasuhiko/