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まさに、今の時代の弦楽四重奏が初来日! デビュー盤について、作曲家のマティアス・ヴェステルゴーとともに語る

 2023年ジュネーヴ国際音楽コンクールの弦楽四重奏部門で第1位と4つの特別賞を受賞したNOVO(新しい)カルテットは、デンマーク王立音楽院の仲間4人で結成。このコンクール以外にもいくつもの国際コンクールで優勝や上位入賞を果たし、いまやヨーロッパ各地で演奏し、高い評価を得ている。

 メンバーは第1ヴァイオリンの加藤ミュラー香耶、第2ヴァイオリンのニコライ・ヴァシリ・ネデルガード、ヴィオラのダニエル・シュレジンスキ、チェロのシーネ・エブストラップ・ビッチェ。そんな彼らがデビューCDをリリースした。題して『Track 1』。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番、カール・ニールセンの弦楽四重奏曲第1番の間に、デンマークで人気を博している作曲家マティアス・ヴェステルゴー(1989~)の“Hjerteblad”(世界初演・心葉―種子の最初の葉の意味)が挟まれるという構成だ。

NOVO QUARTET 『Track 1』 Aparté(2025)

 2025年10月に初来日したNOVOカルテットに、グルーブ結成について、コンクールについて、新譜についてなど、さまざまなことを聞くことができた。当日はヴェステルゴーも参加し、ひとつの質問に対して我先にと話し出す賑やかなインタヴューとなった。

 「私たちはデンマーク王立音楽院で一緒に学んだ仲間で、当時から自然にメンバーが集まった感じ。実際にカルテットを結成したのは、香耶が室内楽の試験があり、それじゃ集まろうと始めたのがきっかけ。ジュネーヴ・コンクールを受けたのは、レパートリーが私たちの得意なものばかりだったから。それにこのコンコールは何かプロジェクトを実践していることが条件にあり、私たちは若手奏者を指導し、一緒に演奏する音楽祭を行っているため、それが決め手となりました」

 初来日公演でもショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番を演奏したが、これは4人にとって特別な作品だという。

 「7年前に初めて取り組んだもので、以来ずっと私たちの代名詞的な作品となっています。強烈な音響や謎めいた内容、作曲家の内面を吐露するような旋律、過酷な運命に抵抗し、嘆き、苦悩し、空虚感もある。すべてが私たちの演奏の性格に合っているのです。今回の録音でもこれを収録していますが、けっしてたやすい曲ではないため、1回テイクが終わると全員が汗びっしょりになってしまい、疲労困憊しました。あたかもマラソンを終えたように…。でも、達成感はあります」

 そして、ニールセンに関して話は続く。

 「ニールセンは交響曲の作曲家としては有名ですが、弦楽四重奏曲はあまり知られていません。私たちは全4曲を録音したいと考えています。実は、私たちがデンマーク王立音楽院で4年間師事したティム・フレデリクセンはニールセンの友人であり、自然に即した作曲内容、ユーモアたっぷりの素顔など直接のつながりを伝授してくれました」

 作曲家のヴェステルゴーが続ける。

 「今回の作品は弦楽四重奏曲第3番にあたります。曲の依頼を受けたときは本当にうれしかった。でも、最初は難易度が高いかと思いましたが、最初のテイクで完璧な演奏を聴かせてくれ、驚きました。私の曲を演奏してもらう場合、50回もテイクを繰り返すことも多いので……。彼らは本当に才能豊かで練習熱心、チームワークもよく、アンサンブルが緊密で自由で、また曲を書きたいと思ってしまいます。私は自然を曲に託すことが多く、今回の日本での旅は自然や歌舞伎、能などの古典芸術に触れ、土からできた物にも触発された。すべてが作曲に反映されます」

 ニコライとダニエルは、「ある先生が私たちをワインに例え、第1ヴァイオリンはラベル(エチケット)、チェロがボトル、第2ヴァイオリンとヴィオラが中身のワインといってくれた。ふたりで大喜びさ。いつも内声は地味だといわれているけど、ワインなんだよー」と大笑い。本当に和気あいあいの親密なカルテットである。

 


NOVOカルテット(Novo Quartet)
2023年ジュネーヴ国際音楽コンクール弦楽四重奏部門で第1位及び4つの特別賞を受賞、続くハイデルベルクのアイリーン・スティールズ・ヴィルシング国際弦楽四重奏コンクールやカール・ニールセン国際室内楽コンクール、トロンハイム国際室内楽コンクールで第1位と上位入賞を果たしている。デンマーク芸術財団の〈ヤング・アーティスティック・エリートプログラム2024-26〉に選ばれ今後ワールドワイドな活動が約束されており、今年1月に行われたウィグモア・ホールでのコンサートはチケット完売、スタンディングオベーションを受けての大成功に終わった。彼らはデンマーク王立音楽院のティム・フレデリクセンに4年間師事後、ウィーン国立音楽大学に留学。さらに、パリ高等音楽院でアルフレッド・コルトーのエリートプログラムに参加し研鑽を積んだ。デンマークの現代作曲家の作品にも取り組んでおり、2025年秋にCDをリリースした。