東京・江古田発のロック・バンド、時速36kmは同じ大学のサークルに所属していた仲川慎之介、オギノテツ、松本ヒデアキで2016年に結成。スタッフを務めていた石井開が2018年に加入して以降は、4ピースで活動している。
「4人全員がDr.DOWNER、ハヌマーン、ゆれる、bloodthirsty butchers、eastern youthのような日本のオルタナティヴ・ロックが好きだったんです。ギターが歪んでいてドラムの音が大きくて、ヴォーカルは聴き取りづらいんだけど、俺たち一人一人に歌ってくれているような優しさを感じられる。僕らもそういうバンドがしたいと思いました」(オギノ)。
「仲川の声がどストライクだったんですよね。バンドのアンサンブルと馴染むし、歪みがありながらちゃんと遠くまで綺麗に抜けてくる。かっこいい形でバンドをまとめ上げられる声だと思います」(石井)。
自分たちの理想の音楽を追求し続け、2024年2月にZepp Shinjukuで開催したツアー・ファイナルのワンマンはソールドアウトを記録する。インディーズでこれだけの快挙を達成したことは、 バンドをおのずと次の目標へ向かわせた。
「僕はZepp Shinjukuをピークに、それ以降は淡々と活動を続けるんだろうなと思っていたんです。そんなときにオギノが〈俺たちはまだ上に行ける〉と言ってくれて、救いと自信になりましたね」(松本)。
新たな目標を掲げた4人は環境を変え、このたびニューEP『Around us』を完成させた。仲川がメインのソングライターを担った本作には、ドラマ主題歌に起用された“Around i”などの新曲や“Happy”“Gazer”の配信シングル曲に加え、“tiny spark”のリアレンジ版など計8曲を収録。バンドの躍動感や生々しさを活かしつつ、より幅広い層に届くポップスの要素も取り入れたサウンドをめざし、エンジニアに高山徹と兼重哲哉を迎えた。
「自分たちの強みがちゃんと届く曲を作りたかったんです。いままでは自分からナチュラルに出てきたものを曲にしていたけど、今回は全曲で〈本当にこれで俺が思っていることが聴き手にちゃんと伝わるのか?〉と自問自答しながら何度も書き直しました。だから良くも悪くもイノセントではない。だけど、そういうものが作れたことが誇らしいし、手塩にかけたぶん可愛くもあるので、頼むからこれまで以上に届いてくれ!という気持ちもありますね」(仲川)。
「ヴォーカルを立てつつも、ギタリストとしてどんな音やフレーズを入れるべきかを考える。そのせめぎ合いを今後も守っていきたいですね。“ゴースト”は仲川の強い思いだけでなく、ちゃんと全員の思いが乗ったからこそ力強い曲になったと思います」(石井)。
ヴォーカルと拮抗する華やかなギター、支えに徹しながらも多彩なドラム、プレイヤーとしての矜持を詰め込んだベース――これまでに育んだ各々のカラーと4人の結束がフレッシュに響く。『Around us』には、心に疼く痛みと焦燥をソリッドでヘヴィーな演奏に落とし込んだ“デイドランカー”、爽快でパンキッシュな“新式弐型”など、さまざまな切り口の楽曲を収録している。そんな新しい1歩を踏み出したバンドが見据えるのはさらなる高みだ。
「100%の力は出せたけど、欲を言えば120%まで出したかった。次回作こそは新鮮な驚きを与えたいですね」(松本)。
「いい1歩目になったぶん、次こそ120%を出さなきゃいけないという意味では厄介なものを作ったなと(笑)。マジでここから前に進まないとしょうがねえなと気合いが入りましたね」(仲川)。
「“ハロー”が注目されたのが2020年、そろそろ今後の時速36kmを担う金字塔的なヒットソングを出す必要があると思っています。僕らが影響を受けた先人のように、一時代を作るという目標を達成したいですね」(オギノ)。
時速36km
仲川慎之介(ヴォーカル/ギター)、石井開(ギター)、オギノテツ(ベース)、松本ヒデアキ(ドラムス)から成る4人組バンド。2016年に東京・江古田で結成され、2018年にファースト・ミニ・アルバム『まだ俺になる前の俺に。』を発表。2021年にファースト・アルバム『輝きの中に立っている』、2023年にセカンド・ミニ・アルバム『狂おしいほど透明な日々に』をリリースし、支持を拡大していくなか、このたびニューEP『Around us』(時速36km)を発表したばかり。
