パンデミック後のニューヨーク・ジャズ・シーンに登場した、新たな才能
毎年秋に開催される、サラ・ヴォーン・インターナショナル・ジャズ・ヴォーカル・コンペティション。今年14回目を迎えるこのコンペは、サマラ・ジョイら、現代ジャズ・ヴォーカル・シーンを彩る才能を輩出している。このコンペの2023年度の優勝者が、タイリーク・マクドールである。現在25歳の、このライジング・スターが初来日を果たした。マクドールに、その歩みとデビュー・アルバム『Open Your Senses』について訊く。

フロリダ州出身のマクドールは、中高生の時にトランペット、パーカッションの演奏を学校の音楽活動で始めた。転機は、高校生のとき訪れる。「学校のミュージカルで、パーカッションを担当していたのだが、キャストの1人が出られなくなり、ディレクターから〈君は声がいいから、代わりに歌ってみて〉と言われた。それが歌い始めたきっかけさ。それから高校のビッグ・バンドのシンガーとして、エッセンシャリー・エリントン・コンペティションにエントリー。優秀ヴォーカリスト賞を受賞して、ジャズの世界への扉が開いたんだ」。
そして夏のジャズ・キャンプで、ロドニー・ウィティカーに見出されてツアーに参加、マクドールは、プロ・キャリアを踏み出した。大学は、シオ・クローカーに憧れて、彼の母校のオハイオ州のオバーリン・コンサーヴァトリーに進学。サリヴァン・フォートナーらに学び、卒業後ニューヨークへ進出する。マクドールは、2024年のサラ・ヴォーン・コンペを勝ち取り、今年アルバム・デビューを飾った。「ファースト・アルバムは、これまで私が興味を持ってきたジャズ、今私が表現できること、プレイしたいことのショー・ケースにしようと思ったから、ヴァラエティに富んだ作品となった。私と同世代のバンドをコアにしながら、ロドニーやサリヴァンら、私のメンターにもゲスト参加していただいた。タイトル・チューンのホレス・シルヴァー の“Won't You Open Up Your Senses”や、ファラオ・サンダースの“The Creator Has a Master Plan”は、大学生の頃知った。これらの曲に出逢った感動を伝えたくて、アルバムに収録した。ディジー・ガレスピーからニコラス・ペイトンと、幅広くカヴァーした。全てアフリカ系のアーティストの、曲とアレンジにこだわった」。
コロナ・パンデミック後のジャズ・シーンへの、新たな才能の登場である。