成り上がる戦国兄弟の光と影を描き尽くす、ゴージャスなサウンドトラック

 NHKの大河ドラマについては昨年の「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」、一昨年の「光る君へ」と、素晴らしく精巧かつ大胆なつくりの「文芸大河」が続き、どちらも心から堪能した。それだけに今年の「豊臣兄弟!」には正直なところ〈また戦国の三英傑か……〉〈タイトルの最後についている!が軽いよなあ……〉と先入観丸出しで不安を抱いていた。ベタなバディもの立身出世譚は勘弁してくれ……的な。

 が、蓋を開けてみれば想像以上に面白い。八津弘幸の脚本は〈兄弟〉を主人公とした設定を生かし、豊臣秀吉という光も闇も深いキャラクターが、〈優れた常識人〉である弟・秀長によって客体化される。まだ数回だが、コミカルな描写多めとはいえ、得体の知れないサイコパス的秀吉像も散見される。泥臭く手段を選ばぬ成り上がり志向の秀吉と、巻き込まれ型の秀才秀長が乱世に何を見出してゆくか。恐ろしさの奥に懊悩を抱えた織田信長、食えない狸ぶりを既に発揮している松平元康(徳川家康)ら周辺人物たちもクセ強だし、期待が高まる。女性陣の活躍も楽しみだ。

木村秀彬 『大河ドラマ 豊臣兄弟! オリジナル・サウンドトラック Vol.1』 ソニー(2026)

 木村秀彬の音楽も前2回の大河の洗練系とは対照的で、テーマ曲は沼尻竜典指揮NHK交響楽団と鳥山雄司のギターががっつり組み合い、打楽器が乱打されストンプも鳴り響き盛大に賑やかだ。〈疾走系〉のテーマ曲というと「鎌倉殿の13人」を思い出すが、あちらが騎馬の疾走なら、こちらは兄弟の出自を連想させる農民たちの足取りとお囃子か。兄弟の主題が堂々と示され、大河ドラマ伝統の三部形式で書かれているが、再現部はさらにゴージャスになり、映像共々二人が出世してゆく様を暗示している。

 各場面の音楽はバークリー音楽院で研鑽を積んできた劇伴の名手・木村の腕が冴え、オーケストラを贅沢に使いつつギターや民族楽器を巧みに織り込み、打楽器群も活躍する。女声ヴォーカルも入るし、男声合唱の野太い歌声は大河ドラマ音楽の伝統を意識か。そして兄弟の主題が効果的に展開され、音楽だけでもジョン・ウィリアムス直系の豪華なスコアによる交響組曲の趣だ。一方で兄弟の主題をはじめ日本的な音階も随所に聴こえ、どこか伊福部昭や小山清茂ら民俗系の日本人作曲家のテイストも感じられる。さらにはワールド・ミュージックやロック的香辛料も効いているという、欲張りなサウンドトラックなのだ。秀吉的欲望がたぎっている? 締めくくりは〈大河紀行〉の音楽。マテウス・アサトのギターがしっとり主題を奏でる。