小田和正がホストを務めた音楽番組「クリスマスの約束」の2005年、2006年、2007年の放送回が、当時テレビでは未放送のパフォーマンスも含めてBlu-rayとしてリリースされた。ここでは各作品の見どころを解説していこう。


 

ツアーへの思いと番組の理念が結実した5回目の「クリスマスの約束」

「クリスマスの約束」は〈これまでにない音楽番組を作る〉という高い志のもとスタートした音楽番組である。同じ時代を生きて音楽を創ってきた人たちへのリスペクト、音楽への情熱、予定調和とは一線を画したリアルな番組作りの姿勢などが、視聴者から支持され続けてきた。

5回目の放送となった「クリスマスの約束2005~大好きな君に~」は、小田和正の全国ツアー〈KAZUMASA ODA TOUR 2005 “大好きな君に”〉の一環として、2005年11月29日のさいたまスーパーアリーナ公演の模様を収録したスペシャル番組である。この日のコンサートは、ツアーの1公演であると同時に、「クリスマスの約束」の公開収録でもあるという2つの要素を兼ね備えていた点が特徴的だ。〈もっとみんなの近くに行きたい〉〈足を運べなかった街に届けたい〉という小田のツアーへの思いと、〈アーティスト同士がお互いを認め、称え合う〉という番組の理念が融合・結実した内容となった。

小田和正 『クリスマスの約束2005~大好きな君に~』 ARIOLA JAPAN(2026)

それらを象徴するシーンは、2曲目の“ラブ・ストーリーは突然に”で、まさに突然訪れた。小田が「お待たせしました!」と叫び、ステージから放射状に張り巡らされた花道や階段を走りながら歌ったのだ。小田が飛び跳ね、手拍子し、マイクを客席に差し出している姿を、大量のカメラが克明に捉えている。息を切らしながら歌う小田、その姿に驚きながら笑顔で迎える観客。コンサートスタッフと番組制作スタッフの総力を結集することで、〈みんなの近くへ〉という小田の思いが感動的な映像として収められている。Blu-rayで観ていると、まるで小田が自分の部屋に向かってくるような気分になるのではないだろうか。歌うサンタクロースは、煙突からではなく、テレビやモニターの画面からやってくるのだ。

Blu-rayには、“the flag”“風のようにうたが流れていた”“またたく星に願いを”をはじめ、テレビ放映時には時間の関係でカットされた楽曲も数多く収録されている。また、本ツアーで演奏された曲に加えて、「クリスマスの約束」ならではの選曲もなされていて、“LET IT BE”“銀座カンカン娘”“黄昏のビギン”などのカバーも演奏された。特にクリスマスの季節にぴったりだったのは賛美歌の“O COME ALL YE FAITHFUL”だ。小田のアコースティックギターとオルガンの音色のキーボードのみというシンプルな編成だからこそ、小田の透明感あふれる歌声が胸に染みてきた。

 

ジローズの名曲を次世代へと繋ぐ

「ロマンティックな気分に浸るクリスマスとはまったく反対の風景があります。地球上から争いはなくなりません」との言葉に続いて、ジローズの“戦争を知らない子供たち”が演奏された。もともとは70年代初頭の代表的なフォークソングだが、ザ・ポリスの“Every Breath You Take”に通じるソウルフルなポップソング的解釈を加えることによって、この曲を次世代へと繋いでいく意思も感じた。キーボードを弾く小田を4人の少年少女が囲むようにしてコーラスで参加した“生まれ来る子供たちのために”では、祈りや願いの詰まった歌声に胸が熱くなった。

コンサート終盤の“明日”では、20人の少年少女がコーラスで参加。未来へとバトンを渡すような歌と演奏だ。二胡の演奏のもとでの“僕ら”、「きっとみんなのことかな」というMCに続いて、小田のピアノの弾き語りによる“大好きな君に”、台湾公演の映像が映し出される中での、北京語も交えての“君住む街へ”など、見どころは尽きない。

「クリスマスの約束~大好きな君に~」は前述したとおり、ツアーの一環としてライブ収録された作品だが、その内容は2026年の現在もリアルかつ切実に響いてくる。大切な人の幸せを願うこと、笑顔を見たいと思うことのかけがえのなさと尊さが伝わってくるヒューマンなステージなのだ。小田が全力で走る姿が多く映し出された酸欠ライブの側面もある。だが、酸素が少なくなった分だけ、愛がたっぷりと詰まった作品となった。

 

小田和正を元気付けた斉藤哲夫の“グッド・タイム・ミュージック”

「クリスマスの約束2006」は、有明コロシアムで収録された。ゲストは、いきものがかり、斉藤哲夫、スキマスイッチ、松たか子という4組。いきものがかりが小田と共演した曲は、彼らの2006年3月リリースのデビューシングル“SAKURA”だ。吉岡聖恵が堂々とした歌いっぷりで、情感あふれる歌声を披露し、小田が優しく見守るように、丁寧にコーラスをつけた。新たなる始まりのエネルギーが詰まった歌声と、36年以上にわたって、日々更新し続けながら深みを増している歌声との世代を超えたハーモニーが麗しく響きわたった。

小田和正 『クリスマスの約束2006』 ARIOLA JAPAN(2026)

松たか子との共演は“みんなひとり”と“to U”の2曲。“みんなひとり”は竹内まりやが作詞・作曲した楽曲だ。“to U”はMr.Childrenの櫻井和寿が作詞し、小林武史が作曲したBank Bandの曲で、〈ap bank fes〉のコンセプトソングでもある。「クリスマスの約束2006」のテーマである〈message〉を象徴する曲でもあるだろう。空に向かって羽ばたく鳥のような、みずみずしさと潔さを備えた松の歌声と、大地に降り注ぐ甘雨のような、深みと柔らかさを備えた小田の歌声とが溶け合い、優しく美しい歌の世界が出現した。小田が作詞・作曲した“ほんとの気持ち”でも、2人の歌声の相性の良さを実感した。

小田が「摩訶不思議」と表現したのは、斉藤哲夫との共演だ。斉藤が19歳の頃に書いた“悩み多き者よ”を、長い歳月を経て、56歳の斉藤と59歳の小田が歌っている。それぞれの声のニュアンスを活かしたコーラスアレンジも絶妙だ。名曲は時が過ぎても色褪せない、ということだけではない。いぶし銀のような深みのある輝きを放っていく。「素晴らしいね。いやあ、まいった」と、小田が斉藤に称賛の言葉をかけた時、画面越しに大きくうなずきたくなった。

「(『クリスマスの約束』の準備で)くじけそうになった時、この曲から元気をもらいました」という小田の紹介で演奏された“グッド・タイム・ミュージック”は、小田と斉藤とバンドのメンバーによるアカペラのコーラスが始まった瞬間に、音楽の魔法が全開になった。これこそまさしく、〈グッド・タイム・ミュージック〉だ。

小田とスキマスイッチが「クリスマスの約束」のために共作した“僕らなら”は、3人での制作風景の映像が流されたのちに演奏された。3人での初共作、そして初披露という初めてづくしとなったステージで、彼らは緊張感を見事に集中力に変換していた。丹念な歌声、コーラス、演奏に、客席全体が耳を澄まして聴き入っている空気までもが画面から伝わってくるようだった。スキマスイッチの代表曲“全力少年”では、還暦間近の小田も含めて、少年のようなひたむきさで、全力で音楽を奏でる姿に胸を揺さぶられた。歌で描かれたメッセージをそのまま3人が体現していた。

後半は小田のみでのステージとなり、〈message〉というテーマに沿った“伝えたいことがあるんだ”、KAT-TUNへの提供曲“僕らの街で”、未放送曲の竹内まりやのカバー“元気を出して”などが演奏された。音楽に込められたメッセージは、作り手、演奏者、聴き手、それぞれの中で咀嚼されて、共有・共鳴されながら広がっていく。「クリスマスの約束2006」は、音楽の持っている懐の深さを堪能できる作品だ。

 

音楽の魔法が起こった、さだまさしとの共演

「クリスマスの約束2007」は、幕張メッセ(一部はTBSのスタジオ)で収録された。くるり、さだまさし、佐野元春、宮沢和史、矢井田 瞳という5組のゲストに加えて、小田の母校である聖光学院の弦楽オーケストラ部、早稲田大学のグリークラブも参加した。“こころ”では、聖光学院の弦楽オーケストラ部が演奏に加わり、世代を超えた共演となった。途中で小田と学生たちとのリハーサル映像も映し出され、先輩と後輩というよりも、先生と生徒のように見える瞬間もあり、微笑ましい気分にさせられた。

小田和正 『クリスマスの約束2007』 ARIOLA JAPAN(2026)

宮沢和史との共演では、THE BOOMの“中央線”“風になりたい”“島唄”が演奏された。“中央線”では、宮沢の伸びやかな歌声に小田の抒情性の漂うコーラスが加わることによって、沿線の風景が立体的に浮かび上がり、深い余韻が残った。宮沢が好きだという“YES-YES-YES”を小田が披露し、宮沢が客席で耳を澄ます場面もあった。年齢やキャリアは違うが、互いのリスペクトが伝わってくる共演となった。

小田とさだまさしとの共演も「クリスマスの約束2007」の見どころの1つだ。小田がピアノの弾き語りで山口百恵の“秋桜”のカバーを〈渾身〉と形容したくなるような歌声で披露し、作者であるさだを呼び込んだ。「改めていい曲だなと思いました」と、さだが小田の歌を称える場面もあった。オフコースとグレープのメンバーとして、70年代の音楽シーンを牽引してきた者同士ということもあり、軽妙な本音トークがしばらく続いた。トークすらも見どころにしてしまうところはさすがだ。

小田の“woh woh”では、さだがメインボーカル、小田がコーラスを担当。両者の歌声が混ざり合った瞬間に、音楽の魔法が起こった。声質の似た成分が共鳴し合い、異なる成分が互いを引き立て合った。続いて、2人による共作曲の制作風景の映像が流れた。意見の相違があった際の、「老いては君に従おう」との小田の言葉が印象的だ。その共作曲“たとえば”は、さだの歌で始まり、小田の歌で終わる構成。この2人だからこその味わい深い歌の世界は格別だった。演奏が終わった瞬間に、互いに拍手し合う光景は清々しく、そして温かかった。

世代も音楽のタイプも異なる者同士の顔合わせとなったのは、くるりとの共演だ。“Jubilee”と“ばらの花”というくるりの代表曲2曲が披露された。“Jubilee”にはストリングスが加わり、“ばらの花”ではソプラノサックスをフィーチャー。小田がアコースティックギター、岸田繁がエレキギター、佐藤征史がベースを手にして、3人並んでのパフォーマンスだ。名曲とは、アレンジの仕方によって、曲の輝きはそのままに、新鮮な表情が見えてくるものである。2組の共演は、それを証明するような演奏だった。

未放送だった“ばらの花”は小田の歌で始まったのだが、小田の声という唯一無二の楽器が加わることによって、新鮮な彩りが加わった。楽曲へのリスペクトとクリエイティビティのバランスが絶妙で、音楽表現の可能性の大きさを感じる共演となった。

 

世代毎の〈いつかきっと〉が歌われた佐野元春との“SOMEDAY”

歌が始まった瞬間、とびっきりのクリスマスプレゼントを手渡された気分になったのは、小田と矢井田 瞳の共作曲“恋バス”だ。クリスマスの夜に、好きな人に会いに行くためにバスに乗った女性の視点で描かれた歌で、相手に少しずつ近づいていく高揚感や期待感がビビッドに表現されている。赤や緑の照明とともに、ミラーボールの光が輝く中、センターステージで矢井田がハンドマイクで歌い、小田がアコースティックギターを弾きながらハモっていく特別なシチュエーションと、歌で描かれた光景とがシンクロしていくようだった。

佐野元春との共演も、「クリスマスの約束」ならではのスペシャルなものとなった。しかも2人が一緒に歌ったのは名曲“SOMEDAY”である。センターステージにアコースティックギターを持った小田と佐野が立っている。「〈いつかきっと〉と思う心を歌にしました。20代には20代の、30代には30代の、40代には40代の〈いつかきっと〉があると思います。一緒に歌いましょう」という佐野の言葉に続いて、佐野が歌い、小田がコーラスし、さらに矢井田、バンドのメンバー、観客がともにシンガロングした。「クリスマスの約束」には、“SOMEDAY”のような希望の歌がふさわしい。

早稲田大学グリークラブの創立100周年を記念した愛唱歌として、小田が作詞・作曲した合唱曲“この道を行く”は、小田の指揮のもと、グリークラブのメンバーのアカペラの合唱によって披露された。2006年4月の打ち合わせから合唱の練習風景、小田が指導する様子まで、1年半以上に及んだ準備のドキュメント映像も紹介された。おそらくこの曲は、小田から後輩たちへエールの思いを込めたものでもあるのだろう。

小田の指導と学生たちの日々の練習の成果は「クリスマスの約束2007」のステージにはっきり現れていた。それぞれの人間性が融合した歌声が真っ直ぐ届いてきたからだ。歌うことは、歌に込められた思いを各自の胸の中に刻むことでもあるだろう。「クリスマスの約束2007」は、音楽を通して、世代を超えた繋がりのかけがえのなさを実感できる作品になった。

 


RELEASE INFORMATION

小田和正 『クリスマスの約束2005~大好きな君に~』 ARIOLA JAPAN(2026)

リリース日:2026年4月22日(水)
品番:BVXL-156
価格:6,600円(税込)
※一部放送とは異なる内容になっています

TRACKLIST
1. まっ白
2. ラブ・ストーリーは突然に
3. the flag(未放送)
4. 忘れてた 思い出のように(未放送)
5. たそがれ(未放送)
6. さよなら
7. LET IT BE
8. 銀座カンカン娘(未放送)
9. 眠れぬ夜
10. 黄昏のビギン(未放送)
11. O COME ALL YE FAITHFUL
12. 戦争を知らない子供たち
13. 生まれ来る子供たちのために
14. 風のようにうたが流れていた(未放送)
15. たしかなこと
16. Re(未放送)
17. 正義は勝つ(未放送)
18. Yes-No
19. キラキラ
20. YES-YES-YES
21. 明日
22. 僕ら(未放送)
23. 言葉にできない
24. 愛を止めないで(未放送)
25. またたく星に願いを(未放送)
26. 大好きな君に
27. 君住む街へ(未放送)
28. たしかなこと

©TBS「クリスマスの約束2005~大好きな君に~」

 

小田和正 『クリスマスの約束2006』 ARIOLA JAPAN(2026)

リリース日:2026年4月22日(水)
品番:BVXL-157
価格:6,600円(税込)

ゲスト:いきものがかり、斉藤哲夫、スキマスイッチ、松たか子

TRACKLIST
1. 言葉にできない
2. 粉雪
3. I LOVE YOU
4. SAKURA
5. 忘れてた 思い出のように(未放送)
6. みんなひとり
7. to U
8. ほんとの気持ち(未放送)
9. いまのキミはピカピカに光って
10. 悩み多き者よ
11. グッド・タイム・ミュージック
12. 僕らなら
13. 全力少年
14. my home town
15. 伝えたいことがあるんだ
16. 僕らの街で
17. 東京の空
18. 元気を出して(未放送)
19. 君住む街へ(未放送)

©TBS / FAR EAST CLUB INC.「クリスマスの約束2006」

 

小田和正 『クリスマスの約束2007』 ARIOLA JAPAN(2026)

リリース日:2026年4月22日(水)
品番:BVXL-158
価格:6,600円(税込)

ゲスト:くるり、さだまさし、佐野元春、宮沢和史、矢井田 瞳

TRACKLIST
1. たしかなこと
2. こころ
3. 中央線
4. YES-YES-YES(未放送)
5. 風になりたい
6. 島唄(未放送)
7. 秋桜(コスモス)
8. woh woh
9. たとえば
10. 案山子(未放送)
11. Jubilee
12. ばらの花(未放送)
13. 千の風になって(未放送)
14. I dream(未放送)
15. my sweet darlin’(未放送)
16. 恋バス
17. SOMEDAY
18. この道を行く
19. 時に愛は(未放送)
20. ダイジョウブ

©TBS / FAR EAST CLUB INC.「クリスマスの約束2007」

■タワレコ購入特典
オリジナルステッカー
詳細ページ:https://tower.jp/article/feature_item/2026/03/13/0702

 


PROFILE: 小田和正
1947年9月20日生まれ、神奈川県横浜市出身。東北大学工学部、早稲田大学理工学部建築科修士課程卒業。

1969年にオフコースを結成。翌年プロとして音楽活動を開始し、“愛を止めないで”“さよなら”“言葉にできない”などのヒット曲を発表。1982年には日本武道館連続10日間公演を開催するなど日本の音楽シーンに様々な記録を残すも、1989年2月の東京ドーム公演を最後にバンドは解散した。その後、プロデュース活動を経てソロとしてアーティスト活動を再開する。

2024年、TBS系日曜劇場「ブラックペアン シーズン2」の主題歌として“その先にあるもの”を書き下ろし、配信でリリースする。同年9月には小田にとって初のアナログレコードBOX『Kazumasa Oda Original Album Analog Complete Box』と、明治安田企業CM曲“すべて去りがたき日々”(配信限定)をリリースした。さらに11月にはベストアルバム『自己ベスト-3』を発売し、オリコン週間アルバムランキングで初登場2位(2024年12月9日付け)にランクインした。77歳3カ月で同チャートのTOP3入りを果たし、〈アルバムTOP3入り最年長アーティスト〉の記録において歴代1位となった。

そして2025年5月より静岡エコパアリーナを皮切りに全国13カ所28公演、31万人を動員した全国アリーナツアー〈明治安田 Presents Kazumasa Oda Tour 2025 みんなで自己ベスト!!〉を開催。同ツアーは10月1日の横浜アリーナ公演をもって終幕を迎えた。

2025年12月24日、TBSで長年レギュラーを務めてきた「クリスマスの約束」シリーズのBlu-ray第1弾が発売された。

■関連リンク
小田和正 公式Webサイト:https://kazumasaoda.site/
小田和正 オフィシャルHP:http://www.fareastcafe.co.jp/index.html
小田和正 オフィシャルX:https://x.com/ODACHFEC
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