©Jeton Bakalli

 ファッカーズは、2022年にNYで結成されたエレクトロニック・バンド。メンバーはヴォーカルのシャニー・ワイズと、ベース/キーボードのジャクソン・ウォーカー・ルイスだ。2023年のファースト・シングル“Mothers”、2024年のEP『Baggy$$』と作品を発表するごとに注目度を高めてきた。その才能は多くの同業者から高く評価されている。LCDサウンドシステムはコラボの相手に選び、テーム・インパラはツアーのオープニング・アクトに迎え入れた。さらにベックは、ファッカーズのライヴに出演するほど2人の音楽に惚れ込んでいる。そんな二人が待望のファースト・アルバム『Ö』を完成させた。アイドルズやギースなど多くの作品を手掛けるケニー・ビーツことケネス・ブルームがプロデュースした本作は、2週間という短期間で制作したそうだ。

 「あんなに早く出来上がるなんて、かなりクレイジーで予想外だった(笑)。ある時、私たちはNYで曲を作っていたんだけど、そのときにケニーがインスタで〈もしLAに来るなら声をかけて〉みたいなメッセージをくれた。それが1年前くらいなんだけど、結局その時は実現できずに終わった。それで、去年の〈コーチェラ〉に出たとき、マネージャーが〈ケニーに挨拶しに行ったら?〉って言うから会いに行った。曲作りする予定じゃなかったけど、一緒に過ごすうちに流れで2曲も出来ちゃって(笑)。その出来がすごく良くて気に入ったから、そのまま作業を続けることにした。ケニーが〈もし君たちがやりたいなら、来週の予定を空けるよ〉って言ってくれたから、コーチェラの後もLAに残って作業をした」(シャニー)。

FCUKERS 『Ö』 Ninja Tune/BEAT(2026)

 NYのクラブ・カルチャーから多大な影響を受けた本作のサウンドは、ハウスやドラムンベースといったさまざまなダンス・ミュージックの要素が目立つ。一方で、ベースが強調された“TTYGF”はダブ/レゲエの要素が色濃く、ダンス・ビートだけではない二人の多様な音楽的引き出しを感じさせる曲だ。この多様さはどこから生まれるのか。

 「多様性は、僕たち二人がそれぞれ好きなものから来ているんだと思う。シャニーはダブやレゲエ、R&Bが大好きだし、僕はハウスやドラムンベースが大好き。ファッカーズの良さは、シャニーと僕がどの曲も異なる視点からアプローチしているところにある。僕はダンス・ミュージックからアプローチすることが多いんだけど、シャニーはダンスとは関係ない要素、例えばダブやレゲエ、R&B、ワールド・ミュージック、ボリウッドのサウンドトラックみたいな要素を持ち込んでくる。その結果、すごくクールな組み合わせが生まれるんだ。僕がハウス・ビートのことを考えながら曲を作っていても、シャニーは〈これハウスに合うかな?〉なんて考えずに曲作りをしていたりするからね」(ジャクソン)。

 本作において特に際立った側面のひとつがライヴ感だ。呪術的なヴォーカルとメロディーが映える“Beatback”、躍動感溢れるUKガラージのビートを強調した“Butterflies”など、瞬く間に観客を踊らせるビートや性急なグルーヴが多い。いわば即興的な勢いも大事にする姿勢について、二人はこう語る。

 「私たちは、まだリリースしていない曲をライヴで演奏する。未発表曲に対するオーディエンスの反応を見るのはすごくおもしろい。どの曲が一瞬で観客の心に響くかとか、この曲はもう少し時間が必要だとか、そういうのを観察できるのもクールだし。反応がセットリストの曲順に影響することもある」(シャニー)。

 「オーディエンスと繋がっている感覚を保つことは、僕らが焦点を置いていることのひとつ。だからライヴで曲を演奏して、それが心地良く感じられなかったり、オーディエンスと繋がっていないと感じたら、ライヴ・アレンジを考え直すんだ。そのエネルギーは、バンドの構成そのものから自然と生まれるんだと思う。基本的に毎セット即興で演奏しているドラマーとスクラッチDJがいるからね」(ジャクソン)。

 


ファッカーズ
シャニー・ワイズ(ヴォーカル)、ジャクソン・ウォーカー・ルイス(ベース/キーボード)から成るユニット。スパッド・キャノンを脱退したルイスとベン・シャーフが元シャックスのワイズと出会って2022年にNYで結成される。2023年3月に初音源の“Mothers”を発表。2024年にテクニカラーと契約し、EP『Baggy$$』発表後に現在の編成となる。フェス出演やテーム・インパラのツアー参加などで注目を集め、3月27日にファースト・アルバム『Ö』(Ninja Tune/BEAT)をリリースする。