ノーフューチャーな過去の自分を救済するために音楽をやってる
――そもそも、どういった幼少期を過ごしていたんですか?
「非常にありきたりなストーリーですが、家庭環境が非常に悪かったんですよね」
――はい。
「そのわりには明るい奴で。学校でも、親から受けたひどいことをヘラヘラ話すような子だった。なんか妙にこう……曲を作ったり作詞したりに役立ってるのかは不明ですけど、やたらと大人の顔色をうかがうことが得意だった。親の顔色をうかがって育ったので、察する力がすごい。親にかまってもらう手段として、わざと嫌われるような行動をするとか……そういうのもすごくあった。冷めてるようだけど、寂しいので、すぐ人を好きになったりして。うーん、あんまり希望がない感じの、ノーフューチャー系な感じでしたね」
――愛情への渇望感があった。
「そうですね。最近それに気づいて非常に楽になりました。何かが足りない人間なんだ、という自覚だけが子どもの頃からあったわけです。他の人と比べてなんか家が変やな、でもその〈なんか〉が分からんかったんで。なんか分かんないけど、なんだろうこの寂しさは? なんだろう、この生きていくことを許されてない感じは?って。
私は中卒なんですけど、めっちゃ悪い大人にほいほい騙されたりもしました。寂しさから必要とされたいと思ってるし、〈何でもやります〉みたいな。なんで好かれたいのか分からんし、何も一生解決しない感じ。愛情不足な子どもだったんだなということが最近分かった。自分は父親という存在を非常に欲していたから、当時、年上の男性に魅力を感じていたんだな、とか」
――そういう家庭環境だったり子ども時代を過ごしたりといったことが、今の創作活動にも影響を与えているわけですね。
「もう、とっても。私は、過去の自分を救済するためだけに音楽をやってる。昔の自分に会いたい!と思うもん、本当に」
――昔の自分に会いたい。
「うん、会いたかった!って抱きしめたい。本当に。めっちゃかわいそうなガキだね、って。訳の分からない大人から搾取をされて、自分の居場所を探して、男性と交際して家庭の寂しさを埋めようって時期に、自分で曲を作って人前で歌ったことで最高の感動体験があった」
自分にはフォークの風が吹いてない
――ちなみにフォークシンガーや弾き語りを選んだというのは、何か理由があるんですか?
「家庭環境の話からちょっと繋がるのかな。弾き語りなんで、フォークシンガーっていうふうには思われる。そうやって自分の私生活の部分を歌うのはフォークなのかもしれないけど、私、それで結構悩んだ時期があって。
フォークと思われてライブに出るから、対バンが全員フォークの人たちになるじゃないですか。でも、どうもハマらない感じがあった。フォーク好きな人にも刺さらないし、自分もしっくりきてない。それで、私これ全然才能がないなと思ったんですね。誰にも共感されないし、寄り添う力のない曲なんじゃないかと思って」
――なるほど。
「それで、フォークをひたすら聴いてみるというちょっとした勉強のようなことをして。昔のフォークとかも調べたり。でも、結局あまりフォークにはハマらなかったんですよ。有名どころからマイナーなものまで聴いたけど、あまりハマるものがなかった。
それはなぜかと言うと、自分の子ども時代に、フォークで歌われている体験に近いような出来事がなかったからということに気づいた。ちょっと言い方は変かもしれないけど、フォークってすでにある程度何かを持っている人間のためのものなんじゃないかと思った」
――育った環境がフォーク的じゃなかった。
「私の曲を聴いても、みんな〈何にキレとんやろか〉っていう感じだから。〈落ち着いてください〉みたいな。
でも、フォークに出てくる景色って……まず、家はあるんですよね。うまくいってないけど父親がいたりとか、うまくいってないけど恋人がいたりとかして、うまくいってないけどとりあえず飯があるし、タバコ吸ったり酒飲んどったりする。だから、非常に嫉妬して。私、こんな贅沢じゃねぇわ……って。そういうのはお嬢様のため息でした。自分はもう、幼少期からフォークの風が吹いてないんだなって思いました」