救われぬ孤独を抱きしめて

 3年前に灰野敬二とのツーマン・ライヴで観てからずっと気になっていたシンガー・ソングライターの2作目。生ギター1本を手にステージに登場した彼女はカザフスタンのお姫様のようにフォトジェニック&キュートであり、一瞬アイドル・シンガーか?と思ったのだが、ヤサグレぎみのノイジー・ヴォイスでロールする歌には荒々しい激情と凍えるような哀しみが入り混じっており、外見とのギャップに驚かされたのだった。曲調としては70年代のダークな内省フォークに近いものが目立ち、それは時に山崎ハコを想起させたりもするが、あの呪いの藁人形みたいなドロドロした怨念はここにはなく、また、聴き手に共感をいざなうこともない。そこにあるのは、ただ寂しさだけだ。この巨大な孤独感、ひとりぼっち感が、生まれついての資質や人生経験など個人的なものなのかどうかは知らないが、今の時代のある局面の写し鏡のように感じてしまうのも事実。

魚住英里奈 『永遠なんて』 魚住造船(2026)

 といったことをライヴの時に思ったわけだが、このスタジオ録音アルバムでは強烈なヴォーカル・リヴァーブやエレクトロニク・サウンドの多用も相まって、孤独感、寂寥感が一段とぐいぐい押し寄せてくる。生のガット・ギターの弾き語りに精妙なエレクトロニク・サウンドを絡めながらささやくように歌われる曲などはたぶん青葉市子と比較されそうだが、どんなにガーリー(あるいはチャイルディッシュ)な歌いまわしの場合でも魚住の歌のひだには細かいキズが無数に刻まれており、スムースに流れてゆくことを良しとしない。スタイルこそフォーク/フォークトロニカだが、内実はパンクやブルースと言い換えてもいいかもしれない。私が一番近いと感じるのはパティ・ウォーターズかな。そして、どこまでいっても救済されない巨大な孤独感に対峙する姿の清冽さは、コーンウォールの無人の原野で銀河に向かってひたすら音を放射するエイフェックス・トゥインを彷彿とさせたりもする。あと、〈ヤクルトレディと知らない街にいる……〉とか〈私の為に休んでくれよ/君の事なんて考えてない私の為に……〉とか書ける彼女にはいつか詩集も出してほしいと、今思っている。

 


LIVE INFORMATION
「心臓にジャンプ」

2026年5月15日(金)東京・池袋 手刀
開場/開演:18:45/19:15
出演:マチダ地蔵尊/魚住英里奈
https://tiget.net/events/473132

ワンマンライヴ
2026年6月21日(日)東京・神保町 試聴室
開場/開演:18:30/19:00
http://shicho.org/category/events/s1events/